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おジャ魔女シリーズ小説
むつみのお菓子大作戦(どっかーん・長谷部×むつみ、オジャ魔女)

「それにしてもよかったよね。むっちゃんジムに通えることになってさ。」

ビーズメーカーをカタカタと回していたどれみが一旦手を止めて言う。

女性プロレスラーキャンディ伊藤が引退を宣言した事がきっかけで、どれみ達のクラスメイトのプロレス大好き少女、

工藤むつみもプロレスを引退しかけ、結局ジムに通いプロレスを続ける事に決めたのは、まだ記憶に新しい出来事だった。

「一時はどうなるかおもたけど、ほんまよかったよなぁ。」

「ジムなら女の子とも戦えるし、もっとうまくなりそうね。」

向かいで座っているあいこ、おんぷもうなずく。

「むつみちゃんはやっぱりプロレスをしている時が一番輝いているものね。」

二階の小物入れのところから降りてきながらはづきも言う。


がちゃ

お店の扉が開いた。

「いらっしゃいませー。」

扉の一番近くにいたももこが振り向いて会釈をする。

「あ、むつみちゃん!いらっしゃい。」

お店に訪れたのは丁度話の話題に上がっていた人物、その人だった。

「こんにちは〜。あ、あの・・・ちょっといいかな?」

むつみはいつもの元気な雰囲気とは少し違い、つま先をくるくると軽く回し、腕を後ろに組んで、少し照れたふうに聞いた。

「むっちゃん、どうしたの?」

どれみが代表して聞く。

「あ、あのね、どれみちゃんたち去年お菓子のお店してたじゃない?

 それで、お菓子作り、教えてもらえない・・・かな?」

むつみは一度そこで言葉を区切り、下を向いて小さな声で言った。

「・・・・・お菓子、つくりたいなって・・・思って。・・・・長谷部君に・・・。」


そう言って、手伝ってもらえるかな?と前を向き、物凄くキラキラとした瞳をした五つの瞳が目に入り、驚いた。

「そうゆう事なら全然おっけーだよ!ね、皆!?」

にこっと笑って後ろを振り向くどれみ。

うんっと四人がうなずく。


もともと団結力はある五人だということは百も承知だが、

この盛り上がり方はどうゆう事だろう、とはなちゃんは一人首をかしげるのだった。


    〜むつみのお菓子大作戦〜



次の日、六人とむつみははずきの家に集まっていた。

もうMAHO堂はお菓子作りが出来るお店ではなくなってしまったので、

今回は一番大きく設備のいい調理室のあるはづきの家を貸してもらえることになったのだ。

「で、何つくるん?」

あいこが青色のバンダナを三角巾代わりに頭に巻きながら聞いた。

「私が女の子らしい事に向いてないって事はこの前にMAHO堂に行った時に嫌ってほど分かっちゃったし・・・簡単な物が・・・」

いいかなと、言い切る前におんぷが割って入る。

「でも、女の子らしいところ見せたくなっちゃったんでしょ?」

ふふっと笑ってむつみを見る五人にむつみは爆発的に赤くなり、顔の前でぶんぶんと手を振った。

「ちっ違うのっ!そうゆう意味じゃなくって・・・!!」

必死に否定をするものの、顔を真っ赤にしていては本末転倒で、五人とも仏のような微笑みを浮かべてむつみを見ている。

その様子を首をひねりながら見ていたはなちゃんがぽんっと手を打ち、納得したようにうなずいた。

「なるほど〜!長谷部君はむつみちゃんにっとてはづきの矢田君と同じなんだね!!」


数秒の間の後、

「ん〜・・・確かにあながち間違ってないような。」

どれみとももこが頷き、

「でもその覚え方はどうやねん・・・。」

あいこが力ない突っ込みを入れる。

はづきとむつみは顔を見合わせて空笑いをするしかできなかった。



落ちがついたところでももこが言う。

「クッキーなんてどうかな?手作りの王道だよ!」

「クッキーいいじゃん!やってみる?」

どれみがのってむつみに聞く。

「よろしくお願いしますっ!」

むつみが答えて、クッキー作りが始まった。



「まずは計量ね。お菓子作りは必要な材料の計量をきちんとする事が大切なの。

 少し間違えただけで出来上がりに影響しちゃうから。」

ももこはそう言って、むつみに小麦粉を渡す。

スプーンで掬って慎重に計っていく。

「次にバターの計量ね。バターは少し常温で置いておいてやわらかくしておいた方がおいしくなるの。」

おんぷがそう言ってまな板の上にあるバターを示した。

むつみはだいたい三分の一のあたりでバターを切り、ばきばきっと言う効果音と共にまな板まで切ってしまった。

「えっ・・・!」

六人の凄く驚いた声が響く。

「やっちゃった・・・。」

むつみは申し訳なさそうに振り向いて言う。

「ごめんなさいっ!はづきちゃんの家のまな板なのに!!!」

勢いよくあやまる。

「そういえばむっちゃん、力が強すぎて台所での手伝いを禁止されたって言ってたっけ・・・。」

どれみが言う。

「そうなの・・・。本当にごめんなさい。」

しゅんとしてしまったむつみにはづきが新しいまな板をさっと出して言う。

「全然気にしないで、まな板はたくさんあるからっ!頑張りましょ?」

にっこりと微笑んで言う。

「失敗と成功は紙一重〜〜!!」

「ももちゃん、それ違う。」

けらけらと言うももこに対し、どれみ、あいこ、おんぷが同時に突っ込みを入れる。

そしてがんばろっというようにむつみを見る。

「むっちゃん、お菓子作りは真心だよ。」

「せやで〜!ええか、むつみちゃん食べてもらいたいんやって気持ちが、一番の調味料やねんで。」

「その時点でむつみちゃんは大丈夫よね。」

そう言ってにっこりと笑う。

「あ、ありがとうっ!」

むつみも微笑んで気持ちを立て直し、包丁を持ちなおした。

「よしっ!それじゃあがんばるぞ〜っ!!」

どれみががっつポーズを上に突き上げ、

「お〜っ!!」

皆の腕が上がった。

   ・
   ・
 
「むつみちゃん、卵を割る時は心を込めて、優しくね。」

はづきが一年前の自分を思い出しながら言う。

「うんっ!優しく、ね。」

むつみが慎重に卵をボールに当てる。

   ・
   ・

「生地を作る時は混ぜすぎないで粉が少し残ってるくらいでOKよ。」

ももこがノリノリで楽しそうに言う。

「やっぱりももちゃんはお菓子作り似合ってるわよね。」

おんぷが手伝いながら言った。

「こんな感じかな?」

むつみはさっくりと混ぜた生地を二人に見せる。

   ・
   ・

「生地は三十分間冷蔵庫で寝かすねん。」

あいこが冷蔵庫の方をさして言う。

「その間に出来る分の片付けしよっか。」

むつみが冷蔵庫を開けながら言う。

   ・
   ・  

「そうそうその調子!上手じゃん。」

どれみがむつみの覗き込んで声をかける。

   ・  
   ・ 
   ・
   ・
チンッ

オーブンが完成の合図を奏でる。

むつみがオーブンを開き、キラキラとした目をする。

「でっできた〜〜〜〜!!!!」

七人がわっと歓声を上げた。

オーブンからトレイを出し、乾燥させるためにクッキーを金網に乗せながらむつみが言う。

「でも、ちょっといびつだね・・・。」

どれみが手伝いながら言う。

「でも絶対おいしいって!」

「そうそうっ少し形がいびつになってしまうのは手作りの基本!!」

ももこが言い、

「どれみちゃんのなんか売られへんようなんいっぱいあったしなぁ。」

思い出したようにあいこがちゃちゃを入れる。

「ちょっとあいちゃんそれどうゆう意味!!?」

どれみが突っ込んで、全員が思い出したようにうんうんとうなずいた。

「っ・・・ちょっと〜!皆してっ!!はなちゃんは知らないでしょ〜!!」

「え〜、簡単に想像つくもん。」

そう言って、はあっと肩を下げるはなちゃんに、

「肩を下げたいのはあたしの方だよぉ。ホントあたしって世界一不幸な美少女だ〜〜〜!!!」

どれみの絶叫と皆の笑い声が響いた。


   ・・・    ・・・


ラッピングをしながらむつみが不安そうに言う。

「長谷部君・・・ちゃんともらってくれる、かな?」

長谷部君がいつもむつみを見る時の優しい顔を知っているどれみ達は長谷部君が貰わないわけはないと思うのだが、

さすがにそれを言うわけにもいかないので何と言うか少し考えた。

おんぷがくすっと笑ってまた思い出したように言う。

「どれみちゃんのお菓子って確かにいびつだけど、心が篭ってるからすごくおいしいのよね。」

言葉の展開を汲み取ったはづきが思ったことをそのまま口にする。

「そうそう。一番大切なものがお菓子に篭ってるから。

 だからむつみちゃんのも絶対おいしいわ。これをもらえる長谷部君が少し羨ましいもの。」

にっこりと微笑んでどれみがどんっと手で胸をたたいて言う。

「うん、むっちゃんのお菓子にこめた気持ちは、一緒に作ったあたしたちが保障するよ。」


「これ見たら絶対食べたくなるよなぁ。長谷部君。」

「むつみちゃんの真心、クッキーにぎっしり詰まってるもの!長谷部君これ食べたら絶対ハッピーね。」

「はなちゃんが食べちゃいたい位だもん、絶対長谷部君喜ぶよ。」

あいこ、ももこ、はなちゃんも順に思った事を言っていく。

少し動きを止めてむつみはどれみ達を見る。

少しだけ涙ぐみながら言う。

「皆・・・本当に、ありがとう。私、がんばるねっ!!」


   ・・・      ・・・


「おはようっ!!長谷部君」

通学路、カンカンカンと踏み切りが落ち、踏み切りの前で長谷部が振り向く。

「はよ。」

長谷部はむつみがいつもと少し雰囲気が違うことにすぐに気がついた。

「・・・どうした?」

少しかがむように、むつみの方を見る。

むつみは下を向き、すっと長谷部の前に紙袋を突き出した。

「・・・クッキー焼いたの。どれみちゃんたちに手伝ってもらって。もらって、くれる?」

そう言ってむつみはおそるおそる上を向いた。

「・・・俺に?」

「うん・・・。」

長谷部はほんのりと顔を赤めていき、さんきゅ、と言って受け取った。

むつみはにこっと爆発的にいい笑顔をして頬を赤色に染めると、丁度あがっていた踏み切りの方を向き、

「それじゃ、先行くね。」

そう言って、走りだした。

長谷部は貰った袋を開け、一つクッキーを取り出した。

さくっとおいしそうな音が鳴る。

「うめ・・・。」

そう言うと残りを大切そうに鞄にしまうと、歩きだした。




電柱の影に隠れていたどれみ達は小さくガッツポーズをして微笑みあっていた。









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございます。

長谷部君とむっちゃんの話、書いちゃいました。

めちゃめちゃ難しかったです。でも楽しかったです。この二人が可愛すぎて大好きなので愛をたっぷり込めました。

文章的におかしいと思うところとかあったらすみません。

凄くヘタで自己満な世界でしたけど、もしも楽しんでくれた人がいたなら幸せです。



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