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雪景色(フルバ・夾×透・由希×真知)
完璧でありなさい

他の子と同じじゃ駄目よ

何においても、どんな事も完璧に

ーそうね、育て方を間違えたのかもしれないわね。




違う

そんな言ってほしくない

『間違い』って何?

間違って育った私って何?

ー『間違い』の私はどうすればいいの・・・?





      ガバッ

「はぁ、はぁ。」

真知は目を覚ました。
額に浮いた汗をそっと拭う。
「久しぶりに見た・・・。嫌な夢・・・。」
こんな日はきっとろくな事がない。

カーテンを閉め切っている部屋な為、いつも時間間隔が狂ってしまうのだが、
それにしたって外はまだほろ暗い。
夜中に起きてしまったのかな、と
時計を見てみるともう朝の8時40分だった。


 プルルル プルルル

電話のベルがなっている事に気がついてハッとした。
慌てて受話器を取る。
「はい、もしもし。」
「真知、出るのが遅かったわね。」
電話の向こうに母親の声がして胸が締め付けられるのを感じた。
とっさにぎゅっと胸に手を押さえつけながら搾り出すように声を出した。
「・・・寝てた。」
「あなたねぇ、いくら休みの日だからってそんなのんびりしてていいの?
 今日みたいなきれいな日くらい、お友達と外に出て遊ぶとかしたらどうなの。
 そんなんだからみんなつまらながってあなたから離れていくのよ。」
「・・・・・。」
「真知、聞いてるの?」
「・・・聞いてる。」
「じゃあ返事くらいしなさい。まったく。」
そう言ってため息を付く母の声が受話器から聞こえた。
「それじゃあね。今度はちゃんと話してよ。」
       プツッ


「・・・また、だ。」

一方的にまくし立てて勝手に切れた電話の受話器を力なく握って目をつぶる。


また物を壊したくなる。ぐちゃぐちゃにしたくなる。
せっかくきれいにしてくれたのに・・・。
翔と・・・会長が・・・。

由希の事を思い出すと、少し心がやわらしだ。
そして、母が言っていた、『きれいな日』を思い出した。
「・・・きれいな日?」
よく意味が分からなくて、窓を開けてみた。





「わぁ!綺麗です!!見てください、紫呉さん!!」
縁側に出た透は歓声を上げた。
庭に積もる、真っ白な雪。雪はふんわりと世界を覆い、一面雪景色が広がっていた。
雲の切れ間からちらちらとのぞく太陽の光が雪をいっそう美しく光らせていた。
「本当だねぇ、透君。」
紫呉は外を見てうなずいた。
「由希君と夾君にもみてほしいです。」
「でも、ほら、夾君はコタツで丸くなるんじゃないかな。」
「ならねぇよ」
夾が上から降りてきた。
「あ、夾君!おはようございます。お外、綺麗ですね。」
「・・・おう、そうだな。」
「少し辛そうですが、大丈夫ですか?」
透が心配そうに夾の顔を覗く。
その気持ちが嬉しくて、夾はふっと微笑むと透の頭をぽんぽんと軽く叩いて返した。
「ああ、大丈夫だ。」
そして二階の方を仰いで聞く。
「それより、由希の野郎はまだ寝てやがるのか?」
「いや、由希君なら前に出て行ったよ」
紫呉が答える。
「え!そうなのですか?どちらにおでかになられたのでしょうか?」
「うーん、それは聞いてないけど・・・あ、透君に『悪いけどお昼は外で食べるから』って伝えてって言われてたんだった。」
「そうなのですか。分かりました。・・・それにしてもきれいです。」
うっとりと雪を眺める透を見て、紫呉が提案した。
「そうだ、二人でどっか行ってきなよ。」
「え、ですが夾君は・・・。 」
「・・・よし、行くぞ、透。」
雪の日に夾が外出に賛成するとは思っていなかった透は驚いた。
「体は大丈夫なのですか?」
「ああ、平気だ。・・・透は嫌か?」
少しだけ不安そうに聞く夾に、透はふわりと微笑んで。
「いえっ。でしたら是非っ!お出かけしたいのです!!」










窓を開けてみると
あたり一面真っ白な雪景色が広がっていた。

その雪があまりに輝いていたから
その街があまりに美しく見えたから
目をつぶってしまいたくなった。
窓を閉じようとカーテンに勢いよく手をかけた時、


ふと、アパートの入り口で立っている由希の姿が目に入った。

「会長っ」
つい呼んでしまい、その後自分の行動に驚いて慌ててカーテンの影に隠れた。



真知の声を聞き、はっとして顔を上げると、慌ててカーテンに隠れる真知の姿が目に入った。
由希は窓に近づいて声をかけた。
「おはよう、真知。今日はなぜか早起きできたんだ。本当によかった。」
なんだか本当に嬉しそうに言う。
真知は意を決し、カーテン越しの由希にたずめてみた。
「会長、こんなところで・・・何をやってるんですか?」
由希は笑顔で答えた。
「雪が積もったから、来たんだよ。」


 
・・・覚えてて・・・くれてた。

顔に赤みが射し、体が震える。

涙がこぼれそうになった。



「真知・・・もしかして、わすれちゃってた?」
「忘れるわけ・・・ありません」
「よかった。俺だけ覚えてて、真知は忘れてたらどうしようかと思ったよ。」

忘れる分けない・・・。
あの日からずっと、積もればいいのにって思ってたから・・・。

「今、外に出れる?」
由希にそう聞かれて自分が寝起きである事を思い出した。
「あ、あの、すぐに準備しますから・・・待ってて・・くれますか?」
『待っていてほしい』そう言う事もそう思う事もずうっと昔からなかった事だったので、



真知は不安に思いながらおそるおそる聞いた。
「うん、もちろん待ってるよ。
 俺、ずっと積もればいいなって思ってたんだ。真知と一緒に足跡つけたかったから。」




   !! ・・・・・////
由希の優しく暖かい言葉に、真知はカーテンに隠れてゆっくりほんのり微笑んだ。








「どこにいきましょうか、夾君。」
透が夾に聞いた。外に出たはいいもののどこに行くかは決めていなかった。
「お前はどこに行きたいんだ?」
夾に聞かれて透は恥ずかしそうにいった。
「私は、夾君とご一緒できるのなら・・・どこでも。///」
     ゴンッ
夾は電柱にぶつかってしまった。
「だ、大丈夫ですか!?夾君!」
「ああ、大丈夫だ。」
(そこまでかわいすぎるお前も大丈夫かと思う俺はやっぱりエロ親父か?エロ親父なのか!?)





「あら・・・嫌だわ。エロ親父化した草摩夾が透君を狙ってるオーラがまた・・・。」
「だから大丈夫だって!あいつじゃ何もできねぇよ。」
「・・・一応また呪っとく?」





「それじゃあ夾君! ぶらぶらするというのはどうですか?」
はりきって言う透にぷっと笑うと、夾は透の手を取って答える。
「そうだな。じゃあ、そうするか。」
二人はいつも歩く道を並んで歩いて行く。
「見て下さい、夾君っ!」
感激した声で透が指を指す。
その先にはいつも通っている小さな公園がある。

公園には辺り一面、雪が積もっていて、しんとした静けさが漂っていた。



「素敵ですね。」
誰も居ない公園に入り、小さな銀世界の中心でぽつりと透がつぶやく。
「ほんとだな。」
隣に立って夾も答える。
それにしても、と
「こんだけ雪が積もってりゃ、雪合戦とかでもしてそうなもんなのになんで誰もいないんだろうな。」
そういって夾は辺りを見回した。
そしてすぐに、近くにはもっと大きな公園があった事を思い出した。

「夾君。」
ん?と後ろを振り向くと、
「猫雪だるまさんなのです。」
にこっと笑う透。その手には手乗りサイズの雪だるま。頭には耳がはえていた。
「おまえってほんと・・・。」
夾はすっとしゃがみこんで雪だるまの元となる雪球を作ると
「透、一緒に作ろうぜ。」
そう言って透の方を見た。
「はいっ!とても大きな物を作りましょうっ!」
透も笑顔で答えた。
そして二人は雪だるま作りをはじめた―――。





人生に少し疲れて

ふと顔をあげたら

粉雪が空から舞っていた

それをみていると

なんだかとっても寂しくなって

なんだかとっても優しくなった


気がつくと隣に君がいて

とても幸せな気持ちになった




だから、また、がんばろうって思ったんだ







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ちなみにこの話で、花ちゃん兄弟は魚ちゃんのバイト先でご飯を食べています。
二人は常連なんじゃないかなーっと思ってます。

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

これを読んで下さった方が、少しでも楽しんでいただけていたら嬉しく思います。








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