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ラノベ系小説
あげる、気持ち(沙漠の国の物語ジゼット×ラビサ・ラビサ21歳くらいの設定)
西洋の、砂漠とは縁が無く、代わりに「海」と言う大きな水溜まりに浮かぶ常夏の島国から

チョキラータと言う珍味とその種がカブルに大量に輸入された。

見た目は黒茶で固く、甘い香りがする。

初めは怖がって触るだけだったが、

元々食べられない物まで調理して食べられる様にしなければならない砂漠生活で身に付けた度胸と

持ち前の好奇心とが相まって試しに食べてみた。

香りから想像するよりも甘く、喉は乾くが力がつく。

使い方のレシピもついていて試しにその通り、リグーの乳を混ぜて生チョキラータを作ってみた。

その珍味の作り方が、カブル名産の焼き菓子に使う作り方と似ていると言うことと、

水のジンと砂漠そのもののカラリとした気候の為、

チョキラータの栽培に適した土地である事がわかり、栽培が始まる。

その後執務員のハディクと仲が良く、店も人気があるアイシェの店からチョキ菓子が売り出され、

カブル内にあっという間に広まった。

その島国の使者と交渉した一団から、

その島国では『チョキラータを好きな人にあげ、思いを伝えると恋が叶う』

という風習があると言う話が囁かれ、

チョキが広まると同時にカブル内で瞬く間に広まった。

ラビサがそれを知ったのも、アイシェの店でチョキを使ったシフォンケーキを食べていた時。

店にラビサより二、三歳年上くらいの大人な雰囲気をまとった二人の女性が入ってきた。

元々は旅人や商人の昼飯向けの慌ただしい食事処の様な店だったのだが

チョキ菓子を売り出してから、昼だけでなく、3時など中途半端な時間帯にも、

若い女の子や家族連れ等に喫茶店感覚でも利用される万人に利用される店になっていた。

女の子はラビサを見つけ、にこりと微笑んで声をかけた。

「あら、ラビサじゃない。」

「あ、おはよう。」

ラビサもにこりと笑いかける。その性格から昔から男の子と遊ぶ事がほとんどだったラビサだが、

最近では幼なじみの女の子達とジゼットの話をよくする事も増えていた。

「今ね、ちょうどあなたの話をしてたのよ。」

「ラビサはジゼットさんにチョキラータにあげたの?」
そう聞いてくる二人。

ラビサはきょとんと顔を傾けると

「チョキを?何でだ?」

なるべくそういった俗的な事は兄であるハディクもアイシェも話さないため、

そんな話は全く知らなかったラビサに、

二人は少し呆れた顔をして、チョキの話をした。

「へーっ!そんなのがあるのか!知らなかったなぁ。」

感心して言うと女の子がうふふ、と可愛らしく笑って、言う。

「実はジゼットさんにあげたいと思って

今ガトーショコラってゆう焼き菓子を練習してるの」

「えっ…あ、そうなのか。…頑張ってな。」

少し言葉に詰まってしまったが、別に彼女がどうしたいのかを自分が止めるなんて事できる訳もなく、

お菓子作りの応援をしたものの、何だか胸がキリキリと痛むのを感じた。

女の子達が帰ってからラビサは、ふう、と一つ息をつくとぽつりと呟いた。

「なんか、胸のとこ、痛い…かも。」

それを聞き逃さなかったアイシェは、キラキラした目でラビサにその訳を教える。

「ラビサ、それは嫉妬よ、きっと。」

「へ?嫉妬…?」

「ええ。さっきの子がジゼットにお菓子を作るのが、辛いんじゃない?」

そう言うアイシェに少し考えてからラビサは答えた。

「…そうかも。」

アイシェは、ハディクに知られたらきっと怒られちゃうわね、聞こえない位の声で小さく呟くと、

とても楽しそうな笑顔でラビサに言った。

「ねぇ、ラビサもチョキラータでお菓子を作らない?」

「えっ…そ、そうだな。でも私そんな女の子っぽい事して上手くいった事無いしな…」

髪の毛を編み込んだ組紐を作ろうとして上手くいかなかった事はまだ記憶に新しい。

でもふと先ほどの女の子の言葉と、ジゼットに渡した時を想像してしまった。

ジゼット、どんな顔で受けとるのかな…。

ありがとう、そう言って笑顔になるジゼットを想像して、

また心臓の辺りがキリっと痛くなったのと同時に

少しだけ、顔が赤くなった。

不覚にも作ってみたいと、そう思ってしまった。

結局、時には食べるが、そこまで甘い物が好きではないジゼットの為に大量のナッツと少しのチョキを混ぜ、

餡蜜で固めたチョキタルトを作る事にした。

元々ラビサはあまりお菓子作りをしたことがなかっただけで、

割と飲み込みが早く器用な方なのでチョキラータとナッツの微妙な対比の案配で

最もおいしくなる比率をすぐにマスターした。

完成したタルトを一つ食べてみて、驚いた。

何と言うか、甘い。

味自体は考えて作ったのでそこまで甘くないのだが、

食べた時に感じる甘さは何だか恥ずかしくなってくるほど、一人への愛が詰まっていた。

アンナにふふっと笑われてより顔が赤くなる。

これをあげるのかと思うととてつもなく恥ずかしくなってきた。


「ラビサ。」

唐突に良く知る声に名前を呼ばれハッと前を見る。

いつからいたのか分からないが、そこには心底ムスッとした幼馴染のユサンがいた。

「うわっ、ユサンッ!いつからいたんだ?ごめんな、気が付かなくて。」

「…別にいーけど。」

そう言いつつもムスっとした表情が変わらないユサンにラビサがもう一度謝ろうとした時、

「ジゼット、リグーの厩舎の方にいたけど。」

ぽつりとユサンが言う。

ラビサは一瞬固まるが、

すぐに満面の笑みを浮かべると

ありがとう、と言った。

「あ、そうだ。余った生地を使って作ったんだ。良かったらこれ、食べて。」

そう言ってチョキのクッキーをユサンに差し出した。

ラビサが去り、ユサンはクッキーを食べながら

「旨いけど、苦いな…」

そう呟いた。





逸る気持ちで厩舎につくと、そこにはジゼットと女の子がいた。

丁度チョキを渡そうとしている瞬間で、

出るに出られずラビサは入り口の影に隠れてしまった。

「悪いけど、俺、甘い物とかあんま好きじゃないから。」

凄く冷たい声でそうはっきりと言うジゼットの声が聞こえた。

その声に、その言葉に、ラビサは何だか泣きそうになった。

影に隠れたまま自分が作ったタルトの袋をぎゅっと握るとへなへなとその場に座りこんだ。

「そう。残念ね。」

女の子の諦めたような声が聞こえる。

厩舎の外に出てくる足音が聞こえ、

立たなきゃ、と思うのだが力が入らず立つ事が出来ない。

そのまま座りこんでいると外に出てきた女の子がこちらを見る。

二人の目が合った。

目に涙を浮かべるラビサを見て女の子は少しだけ驚いた顔をしたが

持っている物を見つけると、

「なーんだ。あなたも作ったのね。ほんと、残念。」

と少し拗ねたような、諦めたような声で言って、少しだけ笑って去って行った。


ふう、とため息をついて厩舎をジゼットは厩舎を出る。

「うわっ!」

出た途端、そこにいた座り込み、涙目になっているラビサを見つけ驚いた声を出した。

「どうしたラビサ!?何かあったのか?」

「何でもないっ!大丈夫だっ!!」

とっさにそう言い慌てて目を擦るラビサに

あんたがそう言って何もなかった試しがあるか、と小さく呟く。

ふとラビサが手を後ろに隠している事に気が付いた。

「何か持ってるのか?」

「ううんっ、これは何でも無いんだ」

あからさまに慌てるラビサ。

その様子が気になりジゼットはぐっとラビサに近ずいた。

急にジゼットが近くに来てラビサの胸がドキンと胸が大きく跳ねる。

「?なんか、甘い匂いがするな。」

「それはっ…」

至近距離な事と、言い当てられた事によりラビサはもの凄く焦る。

「あれ?もしかして、それ?」

さっとラビサから袋を奪う。

「あっ…」

その動作があまりに自然な流れ過ぎて掴む事すらできなかった。

「ラビサ、これ、もしかして…」
チョキ菓子か?

ジゼットはそう続けようとしたがラビサのとっさの言葉にさえぎられた。

「や、違うんだ。別にジゼットに作ろうとか思ったんじゃ無くて…

そう、兄さまっ!チョキの新作を発案したがってたからさ。

それにジゼット、甘い物好きじゃないし、こんなの貰っても…」

まだ何も言ってないのに勝手に言い訳をしだすラビサに、

ジゼットは何となく事情がわかってきた。

それと同時に沸き上がる感情。

ジゼットはラビサがすべてを言い切る前に勢いよく抱きしめると、

「頼むから…」

そう小さく言ってから一度言葉を区切り

「これ、あんたが作ったの?」

いきなり抱きしめられておどおどしながら

「う、うん…」

ラビサはこくりと頷く。

ジゼットは、ふーん・・・とあいずちをうつと、若干拗ねた風に続ける。

「それあんたの兄貴に食われるのって、スッゲー不服なんだけど。」

「え?で、でもジゼットは甘い物好きじゃないだろ?」

しどろもどろで聞くラビサにジゼットは少し考え、逆に聞き返した。

「…あんたさっきの話、聞こえてただろ?」

確かにみずらか進んでとは言わなくても盗みぎきした事には変わりない。

少し居心地悪く目を泳がすと、ジゼットはふっと笑って、

「例え俺が甘い物あんま好きじゃなくても、あんたが作った物なら何だって欲しいんだって事、

いい加減に分かれよな。」

とても優しい声でそう言い、袋を持っていない方の片手でポンポンとラビサの頭を撫でた。

「で、食っても良い?」

ジゼットは袋をふる。

「う…うん。」

ラビサは真っ赤になって小さくこくりと頷いた。

ジゼットは袋を開け、一つとりだし食べる。

「すっげ、甘いな。」

チョキ菓子は何度か食べた事があるので甘さは予想していたのだが、

予想外の真から来る様な甘さについ言葉が出た。

「ご、ごめんな、素材は甘くない物使ったはずなのに、

ジゼットの事考えながら作ってると何だか凄く甘くなって…しまったんだ。」

そう言ってあたふたと真っ赤になったラビサを

ジゼットは思いっきり抱きしめた。

「あんた、マジ反則。本気で可愛すぎっ。」

そして続ける。

「ありがとうな。こんな旨い物食ったの、生まれて初めて。」

ジゼットの腕の中でラビサはほんのり微笑んだ。








〜〜〜〜〜〜〜
ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございますっ!!
大好きな小説の大好きな二人の話をがっつりらぶらぶで書けて本気で満足です。

ちなみにこの話は、最終巻、寝たきりのラビサが復活して元気になりつつある時くらいの話です。

時期的に、だいたい21歳くらいです。

もしどなたかに楽しんでいただけたら嬉しく思います。



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