[携帯モード] [URL送信]

銀魂小説
ファーストコンタクツ〜それが分かるのはもう少し後の事〜(3Z・沖田、神楽、神楽+そよ)
「そういえば最近総悟、遅刻しねーよなぁ。昔は万年遅刻野朗だったのによ。」

朝練を終えて教室へ向かう途中で、土方がふと思い出して言った。

当の沖田は今日は珍しく朝練にも出席していて、今は近藤を挟んで隣で土方のケータイをいじっている。

「そういえばそうだな。二年の頃からか?」

近藤もうなずいて言う。

沖田はいったん手の動きを止め、含み笑いを表して返す。

「それには誰にも言えねぇ深〜い訳があるんでさぁ。」

そしてケータイの画面を指差して今度はにやっとした黒い笑みを浮かべて言う。

「そんな事より土方さん、今度の日曜日、このサイトで出会った留美さんと徳川像の前で

 待ち合わせる事になりましたから。 土方さんが。」

この遅刻常習犯を更生させるほどの出来事とはいったいなんなのかと考えていた土方だったが、

そんな考えは一瞬で吹っ飛んでしまい、一つ大きな怒り声が響いた。


 

    ファーストコンタクツ〜それが分かるのはもう少し後の事〜
 




「ス〜シ〜、スコンブ〜、、テンプ〜ラ〜。」

「もう食べられないネ。夢のようアルー。」

ある部屋の一室から不可思議な寝言が聞こえてくる。

延々と素敵な食事の寝言が続いたのち、

ピンクの頭ががばっと激しい音と共に布団から勢いよく起き上がった。

ピンクの頭は数秒間ゆらゆらゆれたあと、目線を時計の方へ向け、一瞬跳ねてぴたりと静止する。

時計の針は8時59分を刺していた。

カチカチと秒を刻む音だけが数秒間聞こえ、時計が9時を指し示す音を奏でる時、

そんなものはかき消してしまうほどの絶叫が響いた。

 
 神楽、AM9:00起床。  備考:大遅刻。


慌てて下に下りると、先に行ってるぞ と言う銀八からの置手紙が机に置かれている。


「あのクソテンパー!次あった時一発蹴り入れてやるネ!!」

神楽は割れんばかりの声で激怒して、もう一度二階に戻ると、とにかく急いで制服に着替えた。

一度鏡の前で一回テンして、にこっと嬉しそうに微笑んでから、はっとして家を飛び出る。


神楽は今日から銀魂高校に通う、季節外れの転校生だ。

銀八の家の前でたまたま行き倒れになっていた事がきっかけで、家に居候する事になった。

そして今日は念願だった高校初の登校の日。

寝坊。

神楽は自分を起こさずに先に行ってしまった銀八を怨んだが、

そういえば何度も起きろと怒鳴られたような気もする。

(あ〜・・・自分のせいアルな。)

心のなかで銀八に謝り、よりいっそう走りに気合を入れた。

とりあえず、授業には間に合わせようと思った。

と、走っている道の横道の方で

「やめてください!!」

と声がした。

神楽はぴたっと足を止め、その声の方を見る。

するとそこには長い黒髪の女の子と、二人のチンピラ学生がいた。









沖田は今日もゆっくりと起きて、のんびりと学校へ行く仕度をすますと、転がっている鞄を掴んで

一応使うかもしれない部活の竹刀を持って家を出た。

鞄の中に入っているケータイを見て、

起きるのまだ早かったな、

と後悔した。

無論、一般的には完全に遅刻する時間だ。

そんな中で沖田は、まあのんびり行こうとケータイを弄りながらゆったりと歩いていた。


ふと、そういえば後7回遅刻したら単位取れなくてもう一度二年やり直しだ言われた事を思い出した。

事実上近藤さんの下に就く事になるのはいいけど、土方の下にまでなるのは嫌だなぁとか思いながら

歩いていると、角を曲がったところで同じクラスの徳川さんと治安の悪さで有名な金魂高校の

生徒が二人いた。

と言うか正式にはそよが絡まれているのだか。

留年なんて七面倒くさい事なんだかんだでやりたくないと思った沖田は、お嬢さんなそよを

助ける事で遅刻を見逃してもらおうと考えた。

うん、いい案だ、と一つ頷いて、金高生の前に出て行こうとした時、

「おめぇらその子を離すアル!!」

高い声が響いた。

出鼻をくじかれてそっちを見ると、目立つピンクの髪の毛に、デカ丸ビン底眼鏡の女子高校生が叫んでいる。

しかも銀魂高校の生徒だ。

「あぁん?!俺らはこのねーちゃんに声かけてんだよ。芋は引っ込んでな!!」

金高の二人はピンク頭のチャイナ娘に言った。が、チャイナ娘はひるむ様子も無く、

少しピントのズレた回答を言い返す。

「芋は体にいいアルね!芋を馬鹿にすんじゃねーぞ!!

 それにその子嫌がってるアル!それ位気づけよなバーカッ!」

どこのヒーロー優等生かは知らないが、まだりなりにも女が金高の生徒に張り合おうなんて

馬鹿じゃねぇか。

沖田はそう思いながらいつでも飛び出せる状態に体を移動させた。

実際、金高の生徒もブチ切れたらしく、チャイナ娘に思いっきり殴りかかった。

さすがに女に手を上げるのは見てみぬフリは出来ないので、沖田は止めに入ろうと飛び出した。

が、その直後、目に飛び込んだのは



おもいっきり殴られ蹴られ、のされた金高生と、

透き通る様な白い肌に大きな青い目が映える、美少女だった。



前に、反動で飛んだ眼鏡が落ちている。

と、言うことは。

「・・・あんたがやったのか?」

沖田はいぶかしげに聞いた。



神楽は眼鏡を拾いながら

「お前もそいつ等の仲間アルか?」

と逆に聞き返す。

「へぇ。あまりにありえねぇ展開だったんで、全然見えなかったぜィ。」

神楽はそれを肯定だと解釈し、沖田がしゃべり終わると同時に蹴りを入れた。

 ばしっ!

沖田が受け止める。

「ってぇ。あんた本当に女か?」

すぐに体制を整えてパンチを繰り出しながら神楽が答える。

「失礼アルな!水も滴るいい女とは私の事アル!!」

沖田がそのパンチを掌で受け止め、逆にもう片方の手でアッパーを繰り出すと、

フワリと飛ぶように神楽がよけて、二人の間に間を取った。戦闘態勢のまま、

「お前、あいつ等の仲間じゃないアルな。」

神楽がぼそっと言う。

「あたり前だろぃ。あんな馬鹿どもと一緒にされちゃ困りまさぁ。」

声は穏やかだが、お互い一切譲らない。

そんな均衡状態の中、

「あのっ・・・ありがとうございます。お陰で助かりました。」

そよが声をかけた。




第三者の存在により、ピリピリとした空気が一気に解け、神楽はくるりと振り返ると

「いいのヨ。」

と返した。

その後、にやっと笑うと

「それよりこの事を遅刻の言い訳にしてほしいネ。お願いヨ?」

と上目遣いでそよに頼んだ。

そよはくすっと笑って承諾し、

「沖田君も一緒に行きますか?」

と聞いた。

突然の質問に三秒ほど悩んでから、沖田は断った。

こんな目立つチャイナ娘が同学年は三年なら一年も過ごせば絶対に目につくだろう。

と、言う事はこのチャイナ娘は一年生と言う事になる。

それなら・・・このまま遅刻しすぎて落第して、チャイナ娘が二年になった時自分ももう一度

二年をするのも悪くない。そう思ったのだ。





もう違う方向へ向かっている沖田を置いてそよは神楽を連れて学校に向かう。

と、すぐに神楽があっと声を上げて言う。

「そういえばお互い自己紹介してなかったネ!私、神楽って言うアル。

 お姉さん名前なんて言うアルか?」

「そよと申します。2年Z組です。」

それを聞いた途端、神楽はぱぁと顔を輝かせて

「私も2年Z組ネ!!よろしくアル、そよちゃん!」

と、はしゃいだ。


遅刻魔サド王子と凶暴チャイナ娘がもう一度出会い、王子の遅刻がめっきり無くなるのは

これからもう少し後の事―――――






〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私の中の3Z沖田はこんなイメージです。
出会う話、ずっと書きたかったのでかけてよかったです。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。






[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!