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銀魂小説
夏祭り(3Z・沖神、土そよ、銀妙)
今日は夏祭り。

盆踊りの音楽と共にたっくさんの露店と楽しそうな人たちの声が響く。

そこからは少し離れたところにピンクの髪をお団子にしている女の子と黒い髪を綺麗に結っている女の子が2人。

しかも片方はかなり上品な着物で、もう片方はかなり足が見えるタイプのチャイナ服。


 〜夏祭り〜

ぼーっとしていても目を引きそうなかわいらしさの2人だが、今は少々困った顔をしている。

「神社の中央出入り口ってどっちアル? 」

「うーん、さっきここの人に聞いた感じではこっちって言ってけど・・・。」

「だいたいそんなよく分からないところで待ち合わせようって言い出すアイツが悪いネ!」

アイツとは風紀をみだす風紀委員沖田総悟のことだ。

今日は沖田と土方、そしてそよと神楽の4人で祭りに行こうと誘われたのだ。

ところが待ち合わせする場所がどこにあるのか知らない事に、来る最中に気が付いた。


そしてうろうろしていると言うわけだ。

予定では5時に中央出入り口前に集合。

ところがすでに10分オーバー。

神楽もそよも携帯を持っていなくて、そのことを伝えることも出来ない。

だから一刻も早く、待ち合わせ場所に行かなくては。

そう思っていると後ろから声をかけられた。

「ねぇ、君たち。どこか探してるの?」

振り向くとまったく知らない男が2人。

そよはとっさに身構えた。男が苦手なのだ。

が、神楽があっさり答えてしまった。

「そうアル。お前ら中央出入り口ってどこか知ってるアルか?」

男たちは笑顔で答える。

「ああ、中央出入り口ならこの神社で一番分かりやすい目印だよ。」

「なんなら連れてってあげようか?」

「ほんとアルか!?ありがとアル!!」

「あの、わざわざありがとうございます。」

笑顔で喜んだ神楽と、ほっとしてお礼をしたそよの笑顔に男たちも いいんだよ、と笑顔を見せた。

「こっちだよ。」

男たちはそう言って神楽とそよに背を向けて歩き出した。

やっと待ち合わせ場所に行ける!その嬉しさでいっぱいの神楽とそよは

男2人が背を向けて不適に笑ったことに少しも気が付かなかった。




「なー、まだアルか?」

「もうだいぶと歩いていると思うのですが・・・。」

そよは不安そうにぎゅっと神楽の手を握った。

さっきからずっと中央出入り口に向かって歩いているはずなのにそれらしい物は少しも見えてこない。

それどころかどんどん人気が無くなっていっている。

男たちは神楽とそよの質問をスルーし、言った。

「そんな事よりさぁ、君たちすっごく可愛いよね。君たちを祭りで見かけた時からずっとそう思ってたんだ。」

「?・・・それはどうもネ。」

「?・・・ありがとうございます。」

なぜ突然そんなことを言い出すのか男たちの意図が全然つかめない神楽とそよは
頭にクエスチョンマークをつけながら答える。

男たちは倉庫のようなところで足を止めた。

そして続ける。

「ねぇ。せっかくこんな風に知り合ったんだからさ祭りなんて行くのやめて、
 これから俺たちと遊ばない?」

そう言いながら一人はそよの、一人は神楽の腕をつかんでそのまま壁に押し付けた。

と、その時。

「あ、やっと見つけやしたぜィ。おーいっ土方さーん、こっちでさぁ」

聞き覚えのある声が耳に届いた。

フイをつかれて男たちは神楽とそよをを離す。

そんな2人を無視して沖田は続ける。

「神楽さん、何やってんでィ。道間違えるどころかてんで見当はずれのところなんかに来て。」

「えっ!?こっちじゃないアルか!?・・・・どうゆうことネ?」

いつもの神楽とは違う、冷え切った瞳が男2人にふりかかる。

でもそれより恐ろしいのはその後ろの男2人。

さっきから自分たちの存在を無視し続けている金髪の男と、やっと駆けつけてきた瞳孔開きぎみのこの男。

(こいつら・・・銀高の土方と沖田じゃねぇか!!)

この辺の者なら知らねばモグリだろう。とにかくヤバイ奴等らしいのだ。
 
「お、待ち合わせの人等見っかったみたいだな。じゃ、俺等はこれd「待てヨ!このヤロー!!」

すごすごと立ち去ろうとしたが神楽に止められた。

「お前等それでも男かヨ!!せめてそよちゃんには謝って行けヨ!!」

「えっ?私・・・?」

そこまでだまって見ていたそよが聞いた。

「当たり前アル!!こいつ等そよちゃんにひどい事したネ!!そよちゃん・・・まさか気づいてなかったアルか!?」


 
(・・・いや、気づいてないのはアンタだろっ)

なぜか満場一致。

と、それは置いといて、土方が沖田に聞いた。

「総悟、こいつ等誰だ?」

前にこの辺りの高校の個人情報ファイルをハッキングするという

遊びをしていた沖田をしかった事はまだ記憶に新しい。

沖田はあたり前の様にさらりと答える。

「金高の山下と佐々木でさぁ。」

「ああ、あの卑猥な名前の高校な。」

「土方さんも大概人のこと言えねーですぜ。」

「俺のどこが卑猥だこのヤロー!!」

「存在でさぁ。当然でしょう?」

「やんのかオラっ!!」


ぽんぽんと目の前で行われる会話にポカーンとしてしまった二人は、

なぜだか喧嘩が始まった事で、これはチャンスとこそこそと逃げようとした。

コソコソコs「待ちやがれ。」

ザンっと2人の行く手を二本の竹刀が防いだ。

と、沖田は山下にものすごく近づいたと思うと竹刀を首に突きつけて言った。

「オィ。アンタ、今度同じ事やってみな?お前のこの首ぶっとぶぜィ?」

土方も一言、ものすごくドスの聞いた声で言った。

「明日からのお前等の学校生活が楽しみだな。」 

ただの竹刀が何故か真剣の様に感じ、今にも首が飛ぶような感覚を感じ、

山下と佐々木はヘナヘナと倒れ、気絶した。



「大丈夫だったか!?」

振り返った土方はそよに聞いた。

「///は、はいっ。ありがとうございましたっ!!」

そよは慌てて答える。

そんな2人を横目で見て、沖田は神楽の腕を引っ張って言った。

「そんじゃ、行きやしょうか。神楽さん。」

「は!?何言ってるネっ!離せよ!!」

沖田はふぅっとため息をついて小さい声で神楽に耳打ちする。

「この空気で察っしやがれィ。」

「?」

「徳川さんと土方さんを2人きりにしてやろうって言ってんでさぁ」

「!!えっ・・・そよちゃんって・・・・!えぇっ!!」

「分かったらあわせろィ」

「わ、分かったアル!・・・そうゆう訳だからそよちゃん、がんばれアル!!」

「え、ちょっちょっと・・・神楽ちゃん!!?」

沖田と神楽走って行ってしまった。

「がんばるって何を?・・・・とりあえず、ここに居てもなんだし・・・祭り見に行かねぇか?」

土方が突っ込みをし、それからそよに聞いた。

「はっはいっ・・・!」

そよが緊張して答える。そんなそよを見て、土方は隠れてクスっと笑った。

そしてほんの少しだけ、沖田に感謝したりした。




ー土方さんと徳川さんのため・・・?んな訳ないに決まってまさぁ

にやりと笑う沖田に気づく者は誰も居なかった。





来た道をだいぶ走って周りに露店の姿も増えてきた頃。

「もうそろそろ良いんじゃねぇ?」

それなりのスピードで走っていた沖田がスピードを緩めて言った。

「そうネ。そよちゃん、うまくいくといいアルな〜。」

神楽も走りを止めて言う。

「あー、でも土方さんはああ見えて以外とシャイボーイだからねィ。」

「・・・そよちゃんは見たまんまそうネ。あ〜!!何か心配になってきた!!
 やっぱり今から戻って仲取り持ってあげた方が良いアル!!」

そう言って今来た道を戻ろうと身構えた。

が、走り出す寸前に沖田に腕をつかまれた。

「アンタは若者の恋愛沙汰に口出ししたがるおばちゃんかィ。
 それについさっき徳川さんの気持ちに気づいた奴が行ったところで何もできずに邪魔になるのが落ちでさぁ。」

「うっ・・・。」

神楽は言葉に詰まって俯いてしまった。

確かに今までこれっぽちもそよが土方を好きだなんて思わなかった。

もともとそうゆう事はあまり考えないタチだし、そよもあまりそんな話はしない。

でもやっぱり少しショックだと思う。いつも一緒にいる親友の好きな人を知らなかったなんて。

(そういえばコイツはそよちゃんが大串君を好きって事、気づいてたネ。意外と目の付け所が良いアルか?)

そう思って顔を上げて沖田を見ると、

「って、お前何でそんなボーっとした顔してるネ?」

思わず突っ込んでしまった。なぜか沖田がすごく呆けていたから。

すると沖田から今までの流れから全く関係のない言葉が返ってきた。

「・・・アンタ、何でチャイナ服なんでィ。」

「は?」

神楽はいきなりの言葉に一瞬意味が意味が分からず聞き返した。

「いや、だからなんでチャイナ服着てんでさぁ。」

「私、これしか持ってないアル。ズボンタイプもあるけど普通お祭りにはこっちのを着るネ。」

少し威張って見せると

「ふーん。」

そう返された。

「ふーんって何アルか!?それよりお前、何でさっき呆けてたネ?」

「なんでも良いじゃねぇですか。きっとそうゆう年頃なんでさぁ。」

「きっと、って自分のことダロ」

「まぁまぁ。それより早く露店見やしょーや。」

「あ、そうヨ!!早く行くアル!そのために今まで苦労してお金ためて来たネ!」

そう言って神楽は近くにある露店を見回した。

嬉々として露店を見回している神楽を見て、沖田はこっそりホッと息をついた。

不覚にもボーっとしてた理由。そんなの一つしかない。





「ほちゃぁぁぁぁ!!」

一度に投げられた3つの輪投げはものの見事に斜めに並んで棒に入った。

と、同時に周りからは拍手喝采。

「おお!じょうちゃん凄いねぇ。」

的屋のおじさんが感嘆の声を上げる。いつの間にか野次馬まで居る始末。

神楽は隣で見ていた沖田にどうだっと言うように、にやっとして見せた。

すると沖田は9つの輪っかを全部持って、一気に投げた。

輪っかは空中で綺麗に9方向に分かれて、全ての棒に収まった。

わぁ!!っと周りが沸く。さすがにこれには的屋のおじさんもぽかんとしていた。


投げ終えた沖田は同じくぽかんとしている神楽に言う。

「じゃぁ、約束通り、りんご飴おごってもらいまさぁ。」

神楽はむぅっとして、りんご飴の方に向かった。


  


「あ、あれ何アルか?」

片手に綿菓子を持った神楽が指差した先には一つの的屋が。

「あれは射撃でさぁ。鉄砲で的の景品当てて、取ったやつはもらえんの。」

片手に神楽がおごったりんご飴を持った沖田が言った。

「ふーん。おもしろそうネ!!よしっ、沖田。今度はあれで勝負アル!!負けた方がたこ焼き奢るのヨ!!」

「いいですぜィ。返り討ちにしてあげまさぁ。」

そう言って2人は持っている食べ物を急いで食べ終えた。




的屋に行ってみると、店番に見覚えのある顔が。

「あれ、沖田君に神楽さんじゃ〜ん。やってかない?安くしとくよ。」

マダオこと、長谷川の今度のバイト先は的屋らしい。

「やってくネ。いくらアルか?」

「400円だよ。」

「はぁ。これだからマダオは・・・。普通こんなレディに声かけられたらタダって言うもんヨ。
 でもまぁ今日のところは払ってやるアル。それからそんな細かい事一々気にすんなよナ、
 そんなんだからいつまでたってもマダオから向けられないネ。」

沖田が先に出した400円に重ねる様に神楽は400円を出した。

ちゃんと払ってもらっているのにマダオはなんだか寂しそうな顔をしている。

と、沖田が予想外の一言。

「あ、神楽さん。ここは俺がおごってやるよ。」

「「は?」」

マダオと神楽が同時の沖田の顔を見る。

「えっでも沖田君400円しか・・・。」

マダオは話についていけず、おろおろとした言葉しか言えなかった。

「2人あわせて400円って事だろィ?」

「いや、あれは商売言b「さぁ、始めましょうや。神楽さん。」

なんかよく分からないが、勝負の幕開けのようなので神楽は鉄砲を取って身構えた。

「ま・・・いいけどね・・・。」

何だかどっと疲れた様にマダオが言った言葉が合図となり、戦いが始まった。

神楽は慎重に狙いを定めて打つ。 

  ぱんっ!!

乾いた音が響き、弾が的に当たる。

と、同時に隣では、一つの弾で二つの景品を落としている沖田の姿が。

負けるかとばかりに神楽も2つ狙いで打ってみる。

すると、たまたま3つの景品が落ちる。

それでコツをつかんだ神楽は3つ落としで景品を取っていくことにした。

今度は沖田が4つも落としだして、気がつけば景品が無くなってしまった。

またまた周りには野次馬。さっきよりも激しい人だかり。

予想外の展開にマダオはどうしようと言った表情を滲ませている。

打つ物が無くなったのに弾はまだ残っているので神楽はどうしようか悩んだが、いい標的が目に止まった。

  ぱんっ!!

するどく飛んだ弾がマダオのグラサンに当たる。

  パリンっ!!

グラサンの一部が冷たい音を鳴らして割れる。

えっ!?となっているマダオに今度は別の方からの砲撃が、腕時計に当たる。

沖田の方を見ると、サディスティック全開の顔でにやっとしてきた。

「なんでこうなるの〜〜!!!???」

恐怖でおののいた声でマダオが叫んでいる。

その後、4,5発乾いた弾の音が響いた。


結局勝敗は引き分け。たこ焼きは自腹で買う事になった。

たこ焼きを買っていると、前で並んでいる家族が何やら話していた。

「お、そろそろ花火の時間だなぁ。」

「あら、本当ね。じゃあたこ焼き買ったらいきましょうか。」

「ママ、はなびってなぁに?」

「お空におっきなお花が咲くのよ。」

「へ〜〜。みたい!みたい!!」

「ええ、今から見に行きましょうね。」

「わーいっ!!」

なんとなくその風景を盗み見ていると、隣の沖田が話してきた。

「神楽さん、アンタ花火見たことありやすかィ?」

「無いヨ。私の故郷にそんな綺麗な物似合わないネ。
 でも銀ちゃんセンセにまた屋の話なら聞いたアル。だからスッゴク楽しみネ。」


「また屋?」

「知らないのカ?花火職人ヨ。」

「また屋自体は知ってるけど。」

「ふふん、じゃぁ教えてあげるネ。」

神楽がちょっと威張って話そうとしていると、店のおじさんが呼んできた。

「おーいっ、君たち。そこで止まってるよ。何箱だい?」

いつの間にか自分たちの番になっていたのだ。急いでたこ焼きを買って、列から抜けた。

すると、さっきまではごちゃごちゃにたむろっていた人たちが一方に進んでいた。


神楽がどうしたのだろう?と思っていると沖田が花火を見るために場所を取りに行っていると教えてくれた。

ふーん、とその群れを見ていると、突然沖田に腕をつかまれて、波の逆方向に引っ張られた。

「えっ、ちょっ、沖田!?どこ行くネ!!花火みよ〜ヨ!!」

それでも沖田はずんずん進んで行く。

とりあえず今のポジションではそのうち転ぶので歩きやすいように体制を整えた。


だいぶと人の群れから離れて、祭りからも離れて、ちょっと小高い丘的な所に来た。

こんな所にこんな丘があると言う事自体が驚きだ。この丘はそのぐらいバレにくい所にあった。

そこで、やっと沖田は口を開いた。

「ここ、特等席なんでさぁ。花火はここが一番良く見えるんでィ。」

「へぇ〜。・・・って何でそんな事分かるアル?」

「昔は他のところで見てたんだけど、何年か前に一人でぶらぶらしてたらここ見つけて、
 花火の時は町が真っ暗になるから、下手に動けなくなったんでさぁ。んで、花火が上がったら、
 ここはものすごく見やすかったって訳でィ。」

「ふーん、それはちょっと、凄いアルな。・・・あっ、そうだまた屋の八べえの話、まだしてないネ!!
 また屋の話と、花火の時にこの町が真っ暗になるのは大きく関係しているのヨ!!」

そう言って、神楽はまた屋について話しだした。










神楽と沖田が走って行ってしまってから、土方とそよはのんびりとしたペースで祭りに向かった。

そよは何を話せば良いのか分からなくてなんとなく黙ってしまっていた。

どうしようと思って、ちらっと土方の方を見てみると、どうやら土方も同じような感じで悩んでいるようだ。

それをみてなんとなくほっとしたそよは、周りの的屋を見回してみた。




ふと、隣を歩いている人の言葉が耳に入った。

「さっきの2人組み、凄かったよねぇ!!感動しちゃった!!」

「ほんとほんと!!チャイナ服の子も凄かったけど、金髪の人のにはマジで驚いちゃったよ」

「てゆ〜か、カッコよかったよねvV」

「うんうん、あれ、2人じゃなかったら声かけてたよ〜〜!! 」

「あはは、あんたじゃ相手にされないって。」

「それはあんたもでしょ〜〜!」

そんな事を言いながらすたすたと歩いて行く。

(チャイナ服と金髪って・・・。)

そう思っていると、土方が言った。

「あいつ等・・・何やってんだ?」

「あ、今のってやっぱり神楽ちゃんと沖田君の事なんでしょうか。」

くすくす笑いながらそよが返す。

「ああ、何やってたのか知らねーが、あいつ等しか考えられねーよ。」

そんな事が話しの始まりで、少しずつ、少しずつ、土方とそよは話し出した。

と、射的の店番に、見知った姿が。グラサンはなくなっているが。

「あら?長谷川君。バイトですか? 」

「ああ。・・・徳川さんと土方君か。」

「ん?景品、何も残ってねーじゃねーか。しかもどうしたんだよ、その傷。」

不思議に思った土方が聞いてみた。

するとマダオは低いテンションのまま言った。

「妖怪祭囃子が出たのさ・・・。俺この仕事も、もうだめだよ・・・ハハハ。」


そう言うマダオの目に、哀愁ただよう一筋の光がこぼれた。

はてしなくテンションが落ちてしまった雰囲気に、そよが言う。

「大丈夫ですよ!!長谷川君。まだまだ次があります!勇気を持って下さい!っね?」

そして元気を出してっとにっこり微笑む。

「・・・徳川さん。ありがとう。」

どこと無く元気が出たようなマダオが言う。

その様子を見ていた土方の顔もどこかほがらかになった。

マダオに別れを告げて、土方とそよは歩き出した。

「やっぱりあれも、神楽ちゃん達がやったのでしょうか?」

「だろうな。さっきから祭囃子の話ばっか、いろんな所でされてるよな。」

「ええ。神楽ちゃん、お祭り来るの初めてって言ってたから、とても楽しんでいるようで・・・良かったです。 」

「総悟も、多分アイツに渡り合える奴がいて、テンション上がってんだろう。」


そういえばっと、土方が言う。

「徳川さん、まだ何も食ってねぇけど大丈夫か?」

言われてそよは思い出す。そういえばまだ何も食べていない。

少し考えてからそよは言う。

「お腹が減っていると言う訳では無いのですが・・・お祭りに行ったらりんご飴を食べたいと
 思っていたのです。良いですか?」

「ああ、分かった。」


そんな訳で、りんご飴を買う事になった。

露店の中にりんご飴屋を見つけて、そよが買おうとすると土方が一言

「奢る」

と言った。そよは焦って

「いいです!」

と言ったが、店の人がせっかくだから奢ってもらいなよと言うので、お言葉に甘えることにした。

そして、いい案を思いつく。

「でしたら私が土方君の分を買います。」

すると土方は、かなりいぶかしげな表情をした。が、そよはそのまま突き進む。


それを見ていた露店のおじさんは

「っか〜。若いってのぁ〜良いね〜!末永く仲良くするんだよ。」

とよく分からないことを言いながらりんご飴をくれた。

疑問符を頭の上に浮かべて土方を見ると、少し顔が赤くなっていて、
それで初めておじさんの言っている意味を理解する。

そよも少し赤くなって、うつむきながら歩いていた。

ふと、となりで歩いている土方が止まったので、どうしたのだろうと思って自分も止まると、

土方は空を見ていた。

「そろそろ時間だな。」

そう言って、そよの方を見る。

「もうすぐ花火あんだけど、見る?」

そよは喜んで頷いた。

「はい!!」

「あ、そうだ。徳川さん、この辺の地域で伝わってる花火の話って知ってるか?」


「え?花火ですか?・・・うーん知らないです。どういったものなのですか?」


「ん、じゃあ歩きながら教えてやるよ。」

二人は初めて目を合わせ、ふんわりと微笑んで

花火の上がる広場の方に歩き出した。










昔、八べえと言う花火職人がいた。八べえはまた屋と言う花火専門の店で働いていた。

彼は腕は確かだが、作った花火はいつも欲張りな親方の手柄になっていた。

そんなある日、もうすぐ祭りだって時に親方が寝込んでしまった。

町の人たちは皆花火を楽しみにしていて、皆の期待は八べえに向いた。

八べえはこれは自分の努力を皆に見せるチャンスだと思っていつもより力を入れて花火を作った。

できた花火は、自分でも驚くぐらいの改心の出来で、これは明るい所で見るのはもったいないと思った。

そこで八べえは電気会社に花火を上げる時間だけでも、町全体の電気を消すように頼んだ。

しかし答えはNO。まあ、当然の結果だ。

でも、それでめげないのが八べえだ。八べえは町を駆け回って、一軒一軒の家の人に頼み込んだ。

そしてたくさんの署名を持ってもう一度電気会社に乗り込んだ。

その熱意と、たくさんの人の同意に心を打たれた電気会社は電気を消す事を許可した。

そして真っ暗な中で打ち上がった八べえの花火は全ての人を魅了した。

それ以来、この祭りの花火を打ち上げる時は電気が消えるようになり、

八べえはまた屋の主人の後をついでまた屋を大きなものにしていきましたとさ。





「そんなストーリーがあったのヨ!!八べえカッケーだロ!?」

興奮した神楽がたこ焼きをほお張りながら言う。

その直後。周りの電気が消え、アナウンスが入った。

『まもなく、花火が上がります。照明が落ちますのでお気をつけ下さい。』

そして花火が上がった。


   ヒュ〜〜〜   ドンッ!!!

「!!・・・キレ〜〜アル!!沖田!ココ凄いナ!!確かに特等席ネっ!!」

「だろィ?・・・八べえもきっと今の年までこのしきたりが続いてるって事に満足してんじゃねぇ?」

「そうネ。きっと八べえも空から見てるアル。八べえが作り上げた伝統を」

また、花火が上がる。

神楽は叫んだ。

「ま〜たや〜〜!! 」


   ヒュ〜〜   ドドン!!

だから聞こえなかった。沖田がぼそっと言った言葉が。

「でも、多分、八べえはそれだけでは終わらねぇですぜ?」




一方そよは立ち見ではあるが、空に浮かぶ壮大な花を呆けるように眺めていた。


そして同じ様に隣で花火を眺めている土方に言った。

「本当に綺麗ですね、私、今日このお祭りに来て本当に良かったです!」

土方は花火を見たまま言った。

「・・・それは良かった。」

そよはゆっくりだか続ける。

「お祭りの楽しい雰囲気も味わえたし・・・土方君と、仲良くなれた・・・から。」


そよは今、すごく顔が赤くなっている。まさか自分がこんな事を言えるとは思わなかった。

「・・・・。」

土方の返事は無かった。

ちらっと土方の方を見ると、花火で顔が赤くなっていた。


・・・本当に、花火で??

くすっと微笑んだそよは自分もまた花火で顔を赤くしながら思った。

(今度は学校で「おはよう」って言ってみよう・・・。)





ここは銀八の家。

花火の音をバックにのんびり話している2人の姿。

銀八が話す。

「んでも、その八べえの話には続きがあんだよ。

 八べえにはばれちゃいけない恋愛相手の姫がいんの。

 周り真っ暗にして、皆の視線を花火に注目させて、八べえは何してたと思う?」


少し間をおいて妙が返す。

「まぁ、銀八先生、とんだ八べえがいたものですね。きっと八べえでも、先生には驚きですよ。」

銀八が腑抜けな声で言う。

「お前、2人の時は先生はやめろって言っただろ。」

妙がにっこり微笑んで言う。

「はい、そうでしたね。銀さん。」


外では花火の音が響いている。








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここまで読んで下さった方、有難うございます。

  
   神楽もそよも天然娘だと思うのでいまいち危機感にかけてますが、
   どちらかと言うと神楽はその強さから、自分の身を守れると思い込んでいる為、
   若干そよよりも危機感は低いんじゃないかなと思います。少なくとも私の書く神楽はだいぶ無鉄砲です。
    

   さて、夏祭りです。
 
   やっとラブっぽいイベントかけて嬉しいです。

あれ?夏祭りって別にラブっぽくない?

さらに私が書くともっとラブっぽくない・・・?

き、気にしないです!

でも本当に上手に書かれる皆さん全力で尊敬です。


もしもどなたかに楽しんでいただければ光栄に思います。




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