[携帯モード] [URL送信]

銀魂小説
in 体育用具室(3Z・沖神)
暗闇でピンク色の髪の毛をサイドでお団子にしている少女が倒れていた。

いわずもがな神楽である。

「う・・う〜ん・・・」

意識が戻ってきて目を明けると

神楽はハッとして起き上がる。

(ここ、どこアル・・・?)

ボーっとしつつもとりあえず周りを見渡してる。

・・・・真っ暗。

それでも少しずつ目が慣れてきて見えたものは、あたり一面に
転がっているハンドボールだった。

どうやらここは体育倉庫のようだ・・・。

   
     〜In体育用具室〜

神楽はあたり一面のに散らばっているボールを見て、思い出した。


事の始まりは少し前の事・・・。

今日の体育の授業は外でハンドボールだった。

神楽は太陽の光に弱いため、外の体育はいつも休み。

制服に派手な日傘までさして完全装備で授業を見学している。

まぁ、そんな訳で神楽は体育が終わった後に着替える必要が無いわけで、
いつも体育の後片付けを先生じきじきにまかされているのである。

「なんでそんな事しなきゃいけないアル」

と言っていた神楽だかそれをレポート代わりしてやると言われればやるしかない。


そして今日の授業もやっぱり神楽がボールの片付けに任じられたのだ。

しかしこの『ボールを片付ける』と言う作業が、ボールを倉庫に持っていき、

一つずつ棚に入れていくというなんとも時間と手間のかかる面倒臭い作業なのだ。


と、まあ実際のところ3Zの女子がボール運動をするのは初めてで、
どのぐらい大変なのかは神楽はこの時知らなかったのだが、

あの新八が面倒臭い発言をするぐらいなのだから相当なのだろう。

妙とかそよなどの何人かの女子が片付けを手伝おうかと言ってくれたのだが
次の時間は古典。担任こと銀八の授業だ。

銀八のことだから女子が着替えていようが、いや、むしろ着替えているからこそ

堂々と教室に入ってくるだろう。

なので神楽はそのありがたい申し出を断って皆には早く着替えるように言ったのだ。

さて、とりあえず倉庫にボールを持っていって下から順番にボールを入れていきさっそく問題発覚。

ボールを置く棚が高い位置にある為、手が全く届かない。

元々小柄な神楽ではあるが、それにしても少し高い位置に設定しすぎである。

これには神楽もかなりの屈辱をうけた。

周りを見てもハードルとかコーンとかばかりで土台になりそうなものが無い。

しかたが無いのでつま先立ちして腕をいっぱいに伸ばすという非常にバランスの

悪い体制でボールを棚に入れていく事にした。それでもかろうじて届く程度だが・・・。

なんとか2段目を全部入れきって、次に1番上にもうありえないくらいに必死になって
ボールを入れていった。

そんな状態でボールを入れていた分けだから足つま先立ちがよろけてしまい
後ろに倒れそうになってしまった。

やばいっと思い、目の前にある棚を慌ててつかんだのだか棚の後ろ側が少し浮いてしまい

棚が神楽側に倒れてきたのだ。

ぱっと棚から手を放したのだが時すでに遅し。神楽に向かってたくさんのボールが振ってきた。

そのボールの何個かが神楽の頭などに直撃して、そのまま神楽は倒れてしまった。



そして今に至る。

(とりあえず教室にもどらないとナ)

どの位の間倒れていたのか分からないがもうとっくに授業が始まっているかもしれない。

立ち上がると頭がジーンっと痛んだ。きっとよっぽど派手にぶつけたのだろう。


でもそんなこといってる場合じゃないとドアノブに手をかけて驚いた。

―――――鍵が掛かっている。

慌てて何度かガチャガチャとノブを回したがやっぱり閉まってる。

ドアをドンドン叩きながら大声で叫んでみた。

「ヘルスミ〜〜!!誰か居ないアルか〜〜!?開けてヨ〜〜!!」

が、残念ながら返事は無し。まぁ次に体育がないから倉庫の鍵を閉めたのだろうから
当然といえば当然だが。

(こうなったら壊すしかないネ・・・。)

神楽はドアを破壊して外に出る事にした。

こう見えて神楽は腕っ節には自信がある。多分この奇人超人ぞろいの3Z、と言うか
銀玉高校の中でも指折りの中の一人だろう。

ダッ!!

助走をつけて

「ホチャァァァァァァ!!!!!」

ドゴッ!!

痛々しい音を立てて体育倉庫のドアは

・・・壊れなかった。

「痛って〜〜〜〜ヨォォ。」

むしろそう叫んだのは神楽の方だった。

「さっき頭打ったから調子出ないアルか?」

そう思ってならばもう1回。

と助走をつけようとして元の場所に戻ると

「アンタ、何やってんでィ。さっきから。」

馬鹿でかいマットの方からあらぬはずの声がした。


その聞きなれた声の存在に神楽は驚いて声の方を振り向いた。

「お、お前こそこんなところで何やってるネ!ってゆうかいつからいたアル!?」

沖田は寝転んでいたマットから上半身だけを持ち上げて答える。体操服のままだ。

「どうせ古典だからサボりでィ。

せっかく気持ち良く寝てたってのにアンタがボールひっくり返した音で目が覚めちまった。」

「私が倒れたところ見てたんだったら助けろヨ!男ダロ!!」

サボリ魔の称号を持つ沖田なのでどうせそんな事だろうと思っていた神楽は前半はさらりと流し、

問題は後に続いた言葉。まさか寝ている姿をずっと見ていたのかと思うと無償に恥ずかしくて声を荒げた。

沖田はハッと笑うと馬鹿にした様に返事をする。

「知らねぇのかィ?失神てのはむやみに動かしちゃいけねぇんだぜぇ。」

「そっそれぐらい知ってるアル!!」

ムキになって答える神楽にくすくすと笑って沖田は言った。

「アンタ、ほんと嘘が下手だねぇ。それよりさっきから何やってんでィ。」

さっきと同じ質問。そういえば神楽はまだ答えていなかった。

嘘が下手というのがしゃくに触ったが、まぁ質問には答えてやることにした。

「愚問アルな。ここから出ようとしてるアル。ここ、鍵閉められてるネ。

 お前、起きてたんだったら閉められる前にとめろよナ。」

「アンタ、馬鹿ですかィ。これからサボろうとしてる奴がそんな事するわけねぇだろィ。


 あ〜、だからドアに蹴り入れてたのかィ。」

「でも、調子出ないネ。さっき頭ぶつけてガンガンするアル。」

沖田は「ふ〜ん。」と言ってからでも、と話し始めた。

「でも、それでなくてもここのドアは壊れないじゃねぇ?

 今までこの学校の奴らが何度もドアとか壊しまくってるからねぇ。

 前に校長がありえない位頑丈にしたって言ってたぜィ。」

「えっ!!!マジでか!!!」

(あのバカ校長がァァァ!!お前は勝手にペットでも集めてればいいネ!!)

そんな事を考えてみたが仕方がない。とりあえず今、ここから出る方法を探さなければ。


別に授業はサボってもいい。でも、こいつとここに2人でいるのだけはどうしても嫌だ。


神楽はこの前別のクラスの女子達が3Zに来たときから、

なんとなくだが沖田を目で追ってしまっていて、それにふと気づいてから2人きりにはなりたくないと思っていた。

でもこの状態。

(どうするアル!?どうするアル!?)

そう考えていると体育倉庫の窓が目に飛び込んだ。

人1人、しかも神楽なら余裕で抜けられそうな大きさ。

「出口めっけ!!」

そう叫んでからあることに気づいた。

本日2回目。・・・届かない。

窓を開けるためのロックにすら手がまったく届かない。

さっきも見回した通り、足場になるものは何も無い。

沖田が座ってるマットもふかふか過ぎて土台にはならない。

(ん、沖田・・・?)

さっきまでとは違うもの。一つだけある。そう。この男、沖田総悟の存在。

非常に嫌だけど、って言うかそれ以前に断られる可能性の方が数段に高いけれど、ここから出るには頼むしかない。

そう思った神楽はいつもより低姿勢になって聞いてみた。

「なぁ、沖田。」

「嫌でィ。」

「まだ何も言ってないアル!」

「アンタの目線追ってたら考えそうな事くらいすぐに想像つきまさぁ。

 どうせ足場になれってとこだろィ?」

うっ図星・・・。

「お、お前にだって私が肩車した事あるネ!それ位どうって事ないだロ?」

「それはこっちの話じゃ無いだろィ。」

ちょっとの間沈黙。もし今ここに新八がいたらどっちもに突っ込んでる事だろう。

でも今、それは無い。

なんともいえない空気が流れる。その沈黙をやぶったのは沖田。

「・・・だいたい俺、男なんですけど。あんたスカートだろ。」

はぁ、とため息をついて最もな意見を言う沖田を

神楽はホームランバットで打ち返した。

「お前が見なきゃ、大丈夫アル!」



なんかそんなはっきりと言われても困るんですけど・・・。

沖田はもう一度、はぁとため息をついて言った。

「わかりやした。しょーがねぇ。てつだってやりまさぁ。」



さっそく沖田の背中に神楽が乗って窓に手をかけた。

神楽は必死になってロックを開けようとするが微妙に届かない。

その為ちょっとつま先立ちになる。

沖田としては

背中が痛い。かなり痛い。

痛みを紛らわせるためになにか考え事をすることにした。

そして思いだした。前に山崎が言っていた事を。

「そういやぁ、前の昼休みに風紀の集まりがあったんだがねィ、

 それを忘れて教室でミントンやってた山崎がいってたことなんだけどねぇ。」

突然話を始めた沖田に神楽は少し驚いた様だが、すぐに「なにヨ?」と聞き返してきた。


またつま先立ち。痛い。早く開けろィ。

「なんか、クラスでかっこいい男子の話してたらしいじゃねぇかィ。」

「ぇえっ!?」

明らかに神楽が動揺してる。声の上ずり方がなんかすごい。

「アンタでも、そう思う奴、いるんですかィ?」

軽く聞いてみた。

その直後、急に上のバランスがおかしくなった。

と、思ったと同時に

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」

色気もへったくれもない奇声と共に
   
   バッターン!!

神楽が床に倒れた。本日二回目。





「ん、ん〜・・・。」


頭にものすごいビビッとする痛みを感じて神楽は目を覚ました。

うなりながら細目を開ける。

今日は厄日だ。体育倉庫に閉じ込められるし、二回も失神はするし。そんな状態で沖田と2人っきりになるし。

「おィ、大丈夫かィ。」

目をはっきり開けると目の前に沖田がいた。珍しく、心配そうな顔をしている。

「おぅ。私はこのぐらいでへばる様なタマじゃないヨ。」

そう言って強がってみるとおきたはどこかしらホッとしたような顔を見せた。


誰のせいでバランスを崩したとおもってるアル?

そう言いたくなった。突然あんな事を聞きだすから、だいぶ焦ってしまった。

とりあえず、この状態でいるのもどうかと思って起き上がろうとするとしたら

動けなかった。

沖田に押さえつけられていた。

「何やってるネ。離せよ。」

いぶかしげに思って聞いてみるとあの憎たらしい笑みで返された。

「さっきの答え、言ってくれたら離してやってもいいですぜ。」

さっきの答え。つまり神楽にもかっこいいと思う奴がいるのか。

「フンっ。私にもそれ位いるアル。さ、離すヨロシ。」

そう言ってみるとさっきよりも余計に力が加わった。

「痛いヨ。何するアルか!」

そう言って沖田の方を見ると、さっきのような笑みは無くただ無表情だった。

どこかしら怒っているようにも見える。

「そいつ・・・誰でィ。」

沖田がぽつっと呟いた。


なんだか沖田が怖いアル。

神楽はそう思った。

と、同時ににげなきゃ!とも思い、あらん限りの力でじたばたした。

でも、意味は無かった。頭は痛いし、沖田の力はいつもより強い。と思う。

なんだか沖田を『男』に感じ、無償に憤りを感じた。

そんな奴いないネ。

そう言えば良かった。後になって後悔した。


だけどそんなやつ・・・。

いないなんて言ったら嘘になる。

今目の前に居るバカの事を、かっこいいとかそんな風に思った事ないって言ったら、絶対嘘になる。

だから・・・


「教えないアル!」

神楽はきっぱりと言った。

「アンタ、この状態分かってんですかィ?何なら、襲ってもいいんですぜィ。」

「!!」

そう言う沖田の手に力がこもる。

なんだかいつもの沖田と違う様に感じて、神楽は少しだけ泣きそうになって頬を赤らめた。

「なんで・・・そんなに気にするネ・・・。」

力ない声で神楽がつぶやく。

上で神楽に乗っている沖田がふと、怪訝そうな顔をした。

一瞬頬を赤らめて、

「お前、何て顔してんでィ・・・。」

小さい声でそう言った様に思う。

本当にかすかな声だから、聞き違いかも知れないが。

その様子に戸惑ってきょとんとしているといつもの沖田の顔が目の前に来る。

むしろサドッ気全開な時のあの憎たらしい笑顔だ。

「言わねぇんなら本気でいくぜィ。」

そう言ったと思うと神楽の制服に沖田の手が入ってきた。

いつもの沖田に戻った事で気を取り直してきた神楽が、

やられる前に殺ってしまおうと、下から思いっきり殴りかかろうともがいたその時、

       ガチャッ

「お〜い。神楽ァ。いるかぁ〜?」

窓からの光よりももっと強い光とともにあのやる気の無い声が倉庫に響いた。

「志村たちが心配して・・・っておい!!君達何やってんの!?」

銀八のすっとんきょうな声が響く。

沖田がひるんだ隙にばっと立ち上がり銀八の方に走っていた。

「先生、あんな状態で入ってくんのはヤボですぜィ。」

さも普通に沖田が文句を言う。

「ヤボじゃねーよ。そうゆう事は夜にこそこそやりなさい。」

(いや、説教ポイント違うダロ!!)

神楽はそう思ったが銀八だからしょうがない。

「それより神楽、お前大丈夫か?何かふらふらだけど・・・。」

やっぱりこうゆうところは先生だ。

でも一体何を心配してるのかは分からないが。

「大丈夫ネ。ボール直してたら転げて頭ぶつけただけヨ。」

「あ、そう。じゃ、大丈夫そうだな。取り合えず保健室行っとけ。

沖田も盛ってないで授業にはちゃんと出ろよ〜」

なんだか、ほっとしたオーラを漂わせてそれだけ言うと銀八は去っていった。

神楽も保健室へ向かった。

一気に展開が進んで、沖田以外誰も居なくなった

体育倉庫に残っていた沖田がボソッと言った。

「何で気になるかって・・・?そんなん決まってまさぁ・・・。」







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここまで読んで下さった方、有難うございました。
3Z第二段です。

こうゆうのをエロかっこよく書ける人って本当に尊敬します。

もしどなたかに気に入っていただければ嬉しく思います。




[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!