ドリーム小説
5,この感情のその訳は(レッドが夢主の店に来る話)
私の喫茶店は営業員は私だけの個人営業の小さな店だ。
最近ポケモンも飲めて、ポロック的効果もあるコーヒーを販売しているとラジオで取り上げられた事で
結構有名になってきたけれど、昔なじみの常連さんや、お年よりの方から若いカップルや友達連れの人達まで、
様々な年の人がのんびりとした楽しい時間を過ごしてもらえる雰囲気は今も変わらないでいてくれていて嬉しい。
今日も3時の一番お客さんが入ってくれる時間帯が終わり、
今は14、5歳くらいの女の子達とそのポケモン達がテーブル席に座っているだけで、
穏やかで、楽しい空気が流れていた。
でも、その日、そこにいたお客さんが原因で
その後あんな事になるなんてその時の私はまだ知る由もなかった。
カランカラン
お店の扉が開き、お客さんが入ってくる音がする。
「 いらっしゃいませー」
反射的にいらっしゃったお客さんに声をかける。
そしてそちらを見て・・・驚いた。
そこにいたのはいつもは今頃シロガネ山にいるはずの、黒髪に赤い帽子と半袖が印象的な彼だった。
「・・・いい店だね。」
レッドさんはそう言ってカウンターに近寄ってくる。
「 あっ、ありがとうございますっ。」
店をほめてくれた事が嬉しくてへにゃっと口が緩む。
レッドさんがカウンターに座ると同時に肩に乗っていたピカチュウが床に下りた。
「でもレッドさんが山から下りるなんて珍しいですよね。ハナダに用でもあったんですか?」
少し不思議に思ってそう聞く。
レッドさんは首を軽く横に振った。
「 ううん。今週の日曜ちょっとカントーから出てて居ないから、会いに来た。」
そう言って少しだけ笑う。
「 っ!・・・・・あっ、コーヒー取りに来てくださったんですか。
すみません・・・言ってくださればその時だけ日にちを変える事も出来るので、気軽に言って下さいね。」
会いに来た、その意味を取り違いそうになって、少し赤くなってから、
自分の持ってるコーヒーカップを見て、ああ、コーヒーの事だよね、と思い直した。
・・・我ながら恥ずかしい間違いしちゃったな。
「 あ、ところでレッドさん、コーヒー何か飲まれますか?ピカチュウも。
山で作るのよりもいっぱいメニューあるんですよ。」
そう言ってメニューを指差す。
レッドさんは一度ピカチュウの方を見てから、私の方を見直して
「 ・・・いつもナナミが作ってくれるのがいい。」
そう言ってお金を置く。
嬉しくてにっこりと微笑んでしまう。
「はい、ちょっと待っててくださいね。」
私はそう言うと準備を始めた。
「 あの・・・もしかして・・・レッドさん、ですか?」
そう声が聞こえてきたのはコーヒーを立てだしてちょっとしてからだ。
コーヒーを立てる時、横を向くのでお客さんの方は見えない造りになっているのだけれど、
レッドさん、という声に反応してちらりとそちらを見る。
するとテーブル席に座っていた女の子達がレッドさんの周りに集まっていた。
「・・・・そうだけど、何?」
レッドさんは単調に答える。
「 あのっ、私、ファンなんですっ!ずっと噂で聞いてて・・・。
こんな近くで会えるなんて、嬉しいですっ。握手してもらえませんか?」
ドキドキ、胸の音が聞こえてきそうなほど分かりやすく必死にそう聞く女の子。
少しだけ間があってからレッドさんが握手するのが見えた。
「 私も、ずっとレッドさん好きだったんですっ!!」
他の二人もそんな事を言いながらキャーキャーと嬉しそうに握手していた。
こちらからレッドさんの顔は見えない。今、レッドさんがどんな顔をしてるのか分からない。
あれ?何だろう・・・。何か・・・
少しだけ胸のところがチクリと痛くて、そっと胸を抑えた。
「 ありがとうございますっ!!」
そう言って本当に嬉しそうに笑う女の子達は笑顔でお店を出て行った。
「 ありがとうございましたー、またお越し下さいねっ。」
コーヒーを入れながら、そう言う。
その言葉、いつもみたいに元気に言えたかどうか、・・・少し不安な自分が居て、戸惑った。
コーヒーが出来上がり、ピカチュウとレッドさんに出す。
「 ありがとう。」 「 ピカチュピッ」
「 どうぞめしあがれ。」
そう言って笑顔。お客様に対する笑顔。
ぎこちなくならない様に練習した笑顔。
あれ?私、なんだか・・・なんでだろ・・・何だか胸が痛いんだ。
いつもみたいに笑えない・・・・・?
「 ヤキモチ?」
そう声をかけられた。
驚いてバッとレッドさんを見る。
「 っ!?何で・・・ですか?」
私は慌ててそう聞く。
「 ・・・・だったらいいなと思って。」
レッドさんがコーヒーを飲んでから呟く。
そう言われて私は、・・・何も返せず固まってしまう。
「 ナナミ、顔、赤い。」
そう言って、レッドさんはふっと笑った。
その笑顔を見ると、私もなんだかつっかえが取れて、へにゃりと、力なく笑えた。
「 あの・・・レッドさんって町に下りてきたらいつも、あんな感じなんですか?」
気になって聞く。
「 いつもじゃない。でも、割とある・・・。」
・・・・・・。
「 あの、レッドさん、」
一拍置いて、意気込んで。
「 私、これから、日曜日洞窟に居ない日は、絶対別の日に、何があってもお届けしますから・・・」
生まれて初めてのこの感情。
決して綺麗では無いけれど・・・。
この感情のその訳は?
「 あ、そうだ。レッドさんポケギア持ってますか?これから曜日変更の時は連絡してください。」
少しだけ間があってからレッドさんが答える。
「 ・・・それは、何の用が無くてもかけてもいいのかな?」
っ!!!!/////
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