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ドリーム小説
4.大切な存在(グリーン→夢主)
日曜日の閉店後。

トキワシティまでトゲチックに飛んでもらって、そこからは自分で歩いて

シロガネ山を登り、コーヒーをレッドさんに渡して帰ってくる。

シロガネ山に登る事と、レッドさんとレッドさんのポケモン達に会う事は、ここ半年ほどの私の楽しみの一つだ。



いつもならトキワシティに着いたらすぐにシロガネ山に向かうのだが、

今日は先にフレンドリィショップに向かう。

トキワシティまで来て、傷薬の予備が切れてる事に気が付いたのだ。

山登りの時には傷薬が無いとどうしても不安なのでそんなに時間がかかる事でも無いし、

今後の分も含めて買って行く事にした。



傷薬を10個買ってフレンドリィショップを出て山に向かおうとしたところで

後ろから声をかけられた。

「 あれ、ナナミ?」

振り返るとそこにはグリーンさんが居た。

「 あっ、グリーンさんっ!こんにちは。」

振り向いて挨拶するとグリーンさんが、にっと笑って手を軽くあげてくれた。



グリーンさんは私がまだコーヒー喫茶を始めて間もない頃から

ご贔屓にしてもらってるお得意様。

一ヶ月に1回ペースでコーヒーをお届けさせてもらっている。



そして何より、クサイハナと出会った頃、いろいろあってお店の運営を諦めかけた時に

一番近くで元気をくれた、優しい人だ。



「配達?」

グリーンさんがこっちに近づきながら聞いてきた。

「はい。」

そう言ってうなずくとグリーンさんは

ふーん、と相槌をうってから続ける。

「最近すげー流行ってるみたいだな、ナナミのとこの店。頑張ってるな。」

「ありがとうございます。でもそれはグリーンさんみたいな常連さんあっての賜物ですよ。

 最近お店に顔出して貰えなくて一ヶ月に1回しか会えないからちょっと寂しいです・・・。

またいつでもお店に遊びに来てくださいね。」

言ってもらえた言葉がすごく嬉しくてえへへと締り無く笑って返す。

するとグリーンさんは口元に手を当てて目線を別の方に逸らした。

「 あっ・・・グリーンさんすっごく忙しいからそんなの難しいですよねっ!

 ごめんなさいっ!!迷惑になる事言っちゃってっ・・・。

 ハナダに来て、それですっごく時間がある時とか、ちらっと寄ってってくれたら嬉しいな、なんて・・・。」

失礼な事を言ってしまって困らせたのかも、と思い必死に言い直す。

グリーンさんは不思議な物を見る様な顔で私を見て

それからぷっと笑った。



「また近いうちに行かせてもらおうと思ってたのに何寂しい事言ってんだよ。」

そう言ってくれた。



ぱぁっと自分の顔が花やくのが分かる。

「是非っ!是非来てくださいっ!!お待ちしてますねっ!!!!」

「 ん。」

そう言って一つ頷いてくれた。



















「 ところで、誰の家にコーヒー届けるんだ?」

俺はナナミがこれから配達するんだろうと思われるインスタントコーヒーを指して聞いた。

「 あ、家じゃ無くて・・・あそこです。」

ナナミは振り向いてある場所を指した。木々の間から姿を見せるそこは、

「えっ?シロガネ山・・・?」

何で・・・?

すっげー驚いた。

「もしかして注文主・・・レッドなのか?」

「 あっ、はい。そっか、グリーンさんとレッドさんはお知り合いなんですよね。」

そう、いつもよく見せる笑顔で聞いてくる。

「おう。知り合いってゆうか・・・俺ら幼馴染だから。」

「えっ、そうなんですかっ!?」

「そんな事よりお前とレッドが知り合いだった事の方が驚きなんだけど。」

ナナミは少し照れた風に笑ってから

「シロガネ山に木の実採取に行った時に知り合ったんです。」

そう言って、少しだけ頬を染めた。すごく嬉しそうに笑って・・・。







もう随分前の事。レッドの様子を見るついでに差し入れに持っていったナナミのコーヒー。

俺が持っていった物であいつが旨いって言った物は後にも先にもそれが始めてだった。


それからレッドの分もまとめて俺が立て替えてコーヒーを買っていたけど、3ヶ月前に山に登ってコーヒーを渡した時に

もう買わなくていいよと言われた。

まあポケモン以外のもので執着を見せた事なんてそれが初めてだったから、

そろそろ飽きてきたのかな、ぐらいに思ってた。



でもレッド、お前も会ってたんだな。

ナナミに・・・。








初めてナナミと会った時。

華奢な体でふんわりした笑顔。ラフな格好の上に付けたエプロン姿に、少しだけ香る香ばしいコーヒーの香りと、女の子らしい甘い香り。

ヤワそうだと第一印象で思ってたその姿が、ものすごい異臭を放つクサイハナと仲良くなる為に

涙目になりながらひん曲がりそうな異臭の中で両手を伸ばしてクサイハナを抱きしめた。




その姿を見て、


ああ、まいった・・・。


そう思った。



それ以来、何度もハナダの喫茶店に通った。

常連の一人でもいい。ナナミが俺の事を覚えてくれていたらそれでいい。

そう思って開いた時間があれば会いに行った。



嬉し泣きの笑顔を見せながらクサイハナをモンスターボールから出し、

異臭が収まった事を見せてくれた時は、俺も泣きそうになった。





その姿を追いかけながら、ずっと思ってた事があった。



もし、レッドとナナミが出会ったら・・・。

間違いなく気が合うんだ、この二人は。



最初に話した瞬間からの直感と、

ずっと幼馴染でライバルしてた実績がそう言った。







好きなのか?あいつの事が。



レッドがもういらないと言った時の、ごく一部の人間にしか分からない表情の変化を思い出し、

今のナナミの笑顔と赤い顔を見た瞬間、そう聞きそうになった。



でも、思いとどまった。

俺が聞く前に、ナナミが口を開いたのだ。

「でもそっか、幼馴染か〜。うん、納得。

レッドさんとグリーンさんって何か似てるなって思ってたんです。」

「俺と、あいつが?」

どこが? そう思った。

自分でも何故仲が良いのかすらよく分からなくなるくらいに、

性格も、進むと決めた道も、ファッションセンスにいたるまで、俺達は全然違う。

むしろ同じ町出身なのにこうも違うものか、と思われてる事の方が多いと思う。

でもナナミはにこりと笑って言う。

「 はいっ!似てますよっ!優しさとか、ポケモンを大切にする気持ちとか。」



ぽかんとしてしまった俺を置いて,ナナミはさらに続ける。



「二人と話してるとね、暖かくなるんですよ、ここが。」

そう言ってナナミはぽん、と自分の胸をおさえた。





ふっと笑ってしまう。

きっとレッドも、こんな気持ちなんだろうな。

そう思った。



「 あ・・・つい長話しちまったな。悪いっ!それ、届けに行くんだろ?

 早く行ってやらないとあいつ心配すんじゃね?」

お前相手ならさ。  



最後の言葉は言わないで、心の中にとどめておいた。

何故がボッと顔を赤らめて小さくうなずくナナミに、



あいつ、何気に手とか早そうだよな、そんな事を思って少しだけ心配になった。

でも、泣かす事は絶対にしないだろう、あいつなら。

そう思う自分に、苦笑する。





「それじゃあまた。喫茶店でお待ちしてますからねっ!」

そう言ってシロガネ山へ向かうナナミの背中が見えなくなるまで見送って、

買い物に来た事を思い出し、フレンドリィショップの扉を開いた。







今度山に登った時、コーヒーとカップを持って行こうと思った。

で、久しぶりに本気のバトルをして、

コーヒー飲みながらさっきまで目の前にいて、今からあいつに会いに行く、

コーヒーの配達人の話でもしよう、そう考えて、一人ふっと微笑んだ。



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