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ドリーム小説
3.5「豪雪の夜」のその前に(夢主が遭難者を助ける話)
空は快晴。シロガネ山の雪も太陽に照らされていつもよりキラキラと輝いている。

そんな中、登る足を少し休め、空を眺めながら呟く少女が一人。

「あっ、何か雲行き怪しいな・・・。早くお届けして、吹雪になる前に下山しなきゃねっ。」


むろん、ナナミである。



山の天気は変わりやすい。今は晴天でもあっと言う間に豪雨が振るし、

雪山ならばその豪雨は全て豪雪となり、下手をすれば命に関わる事もある。

吹雪の山では歩かない。雪がやむまで雪山で手早く鎌倉を作りその中で雪がやむのを待つ。

何度も山を登って得た経験と知識と案外頼りになる直感。



その直感が言っている。今日は吹雪になる、早く下山した方が良いと。



ナナミは意識を改め、よし、先を急ぐぞ、と山を見据えた。







それから数分後。

一足の靴を発見した。片方だけの、靴。登山用ではない、普通のシューズ。

見覚えが無いし、これは今から向かう洞窟にすんでいる主の者では無い。



となると、山登りの初心者か、

こんな本格的な山に何となくな気軽な気持ちで山登り来た物好きか、

彼にポケモンバトルを挑みに来た挑戦者のどれかだろうか。



でもそんな事は置いておいて、今、重要なのはその人が、遭難しているかも知れないということ。

落ちている物からして、下手をすれば怪我をしているかもしれない。

遭難者の捜索と介助は何度か経験している。それも山登りをする中で得た経験と知識の一つ。

だってやっぱりほっとけない。動く事で助かる命があるのなら、動いた方が絶対いい。




ナナミは山登りを一時中断して、腰から2つのモンスターボールを取り出すと、頭上に放り投げた。

ポンッと音がして、トゲチック、ペルシアンが出てくる。

「この山のどこかに、遭難者がいるもしれないの。

 この靴の主。靴の大きさからして男の子だと思う。

 ペルシアン、いつもみたいに臭いで探して。

 トゲチックは空からお願い。」



二匹がこくりとうなずいて、すっと移動する。

どうか、無事でいて欲しい。

どんな思いで雪山に来たのかは分からないけれど、彼の安否を心から願い、ナナミも捜索を始めた。





30分ほどその辺りを探索して血痕のついたハンカチを発見した。

発見した靴とハンカチからして、そう前の物ではない。

多分昨日辺りだと思う。



一晩をこの雪山で雪に埋もれて過ごしたんだ。

がんばれっ!今、見つけるから、それまでがんばれっ!





そう心で念じたところで、ペルシアンが戻ってきた。



「ペルシアンっ!居た?」

ペルシアンはくい、と首を移動させ、場所を示す。

「ありがとうっ!」

ナナミはペルシアンをキュっと抱き寄せる。

遭難者の下へ向かいながら音の鳴らない小さな笛を吹く。2分ほどでトゲチックが帰ってきた。







ペルシアンが止まったところは、新雪でふんわりとしていてパッと見では分からないが、急な段差のあるところだった。

ペルシアンはそこで雪かきを始める。

ナナミはクサイハナを出し、つるのむちで雪かきを頼むとその隣で自分も雪を退け初めた。


雪を取り除くと、そこには小さな洞窟があり、遭難者の男性はそこで頬が少し凍った状態で座っていた。

急に視界が開けて、男性は少し眩しそうに目を細めてる。

「生きてますかっ!?」

ナナミが声をかける。

「・・・!!はいっ!」

男性がやっと、現状を理解して、元気に声を上げる。

「 ・・・よかった。もう、大丈夫ですよっ!!」

ナナミがにっこりと微笑むと、男性は体を震えさせて、力無く、微笑んだ。



男性の怪我はそれほど大きなものでは無かった。

男性は山登りの初心者で、山男の友達がシロガネ山の景色を自慢した事から、自分も行ってみたいという思いに駆られ、

自分には無理かもしれないとは思ったが、それでも、どうしても来たいという気持ちに負けて、来てしまったのだという。



野生のニューラが現れて、自分のポケモンとのレベルの違いに愕然として、自分では無理だと悟って、

何とか逃げきれたはいいが、靴を片方無くし、挙句この段差で足をとられ動けず、

暗くなって来て、動く事を諦め、一晩をこの洞窟で過ごしたのだそうだ。



「 でも本当に怪我が酷く無くて良かったです。」

足の怪我と腕の怪我の応急処置を済ませ、ナナミがにこりと微笑む。

「 コーヒー、飲みませんか?凍った体に、暖かいコーヒーは染みますよ。元気出して下山してください。」

そう言って、水筒からコーヒーを出す。

ぽかぽかと湯気の出るコーヒー。



受け取った男性は、一度ふーっと息を吹きかけると、くいっと一気に飲み干した。

飲み干した後、ほうっと一つ息をつき、つーっと目から涙を流して



「 旨い・・・。」





一言、そう言った。







何度もお礼を言う男性に、下りの最短ルートを伝え、ついでに喫茶店の宣伝もちゃっかりとしてから、

別れを告げる。

空を見ると、どんよりとした重い雲が、さっきまでの晴天の太陽をしっかりと覆っていた。

ナナミは前を向くと、レッドの居る洞窟へと少し足早に歩き始めた。



















〜〜〜〜〜〜

3の「豪雪の夜に」の番外編の作品です。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

どなたかに楽しんでもらえれば嬉しく思います。





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