ドリーム小説
1コーヒー、飲みませんか?(レッドと夢主の出会い)
「あと少しっ」
シロガネ山の頂上付近。雪山の切り立った崖の上、
片腕はすでに採った木の実をいっぱいに持ち、
片手で木の幹にひょいひょいと上ると、何も持っていない方の手を
ぐっと伸ばしてに新しい木の実に手をのばす。
「 届いたっ!!」
そう思った途端、体がぐらっとよろけた。
その拍子に今採ったばかりの木の実がポロリと落ち、
同時に片手からも何個か木の実がぽろぽろとがけから転がり落ちる。
「 あっ大変!」
慌てて腰から二つのポケモンボールをとると、空に放り投げた。
ポンっとカプセルが開いてトゲチックとクサイハナが出てきてカプセルは手に戻る。
「 トゲチック、風おこし!」
「 クサイハナ、つるのむち!!」
「 トゲっ!!」
「 クサー!」
トゲチックがおこした風おこしでごうっと風が吹き木の実が上手に手に戻り、
クサイハナが落ちた木の実のうち、
二つをつるで上手に絡め取る。
私は木から飛び降りると、クサイハナから木の実を受け取った。
「 ふたりとも、ありがとーっ!」
そう言ってぎゅっと二匹を抱きしめた。
トゲチックもサイハナもすりすりと顔を片方づつ私のほっぺにに摺り寄せてくれる。
ほんとに可愛いんだからっ!!
二匹をはなし、崖の下を覗いて真っ白な銀世界でも分かるほどのその断崖絶壁っぷりに身震いする。
「 何個か落としちゃったけど、まあいっか。」
そう開き直りかけた時、崖の下からペルシアンが駆け上ってきた。
「 あっ!ペルシアン、貴方また勝手に抜け出して〜っ!心配するでしょ?」
そう声をかけると、ペルシアンは何も言わずにすっと、さっき落とした木の実を差し出した。
「 あっ!それ。・・・拾ってくれたんだ。ありがとう、ペルシアン。」
にこっと笑ってそう言うと、ペルシアンはどこか嬉しそうに私の足に擦り寄ってきた。
「 もう・・・本当に・・・可愛・・・要領いいんだから。」
そう言ってぎゅっと抱きしめる。
実際この子が勝手に抜け出して、いつも何かと助かってるのも事実だしな・・・。
私はそう思ってふっと微笑んでしまった。
「それにしてもホントに上質な木の実。」
ペルシアンが拾ってきてくれた木の実を拾い、改めて関心する。
「 こんな雪山でも元気に育った、健康な木の実なのね。
これを私のコーヒーにブレンドしたら・・・ああ、考えただけでも美味しい!!」
そう言って少しだけ頬を上気させる。ポケモン達も嬉しそうに声を上げた。
「 さて、全員そろったし、さっき見つけた洞窟でコーヒー飲もっかっ!!」
私はポケモン達に声をかけると、皆をモンスターボールに入れて、
雪で埋もれながらざくざくと歩き、洞窟の方へ向かった。
どんどん吹雪が酷くなってきたくらいに、洞窟に入る事が出来た。
「 うわーっ、雪、酷いなぁ、これじゃあなかなか帰れないぞっと〜。」
そう言って、(とか言いながら私、少しわくわくしてるな、これ。)とか自分で突っ込みながら
洞窟の奥へと進んでいく。
奥に進んで行く毎に少しずつ温度が暖かくなっている気がする。
雪山の洞窟って以外と心地いいのよねー。こうゆうところで飲むコーヒーは本当に最高っ!あーっ楽しみっ!!
そんな事をのんきに考えていた矢先、そんなのんきな考えが一気に吹き飛ぶ事がおきた。
「 えっ!?こんなところに・・・人っ?」
こんな雪山の山奥に人なんて珍らしい上、その人はどう見ても倒れていた。
今まで何度も木の実を採りに山に登って、遭難者とも出会った事も時にはある。
そんな時、場合によっては一緒に降りたり、穴抜けのひもを渡して下山してもらったりしている。
とりあえず、意識があるのか様子を見なきゃ。
そう思い近づいて、その容姿に驚いた。
男の人なのに、すっごく、綺麗・・・。
目をつぶっていても分かるくらいにその人はとても綺麗で、今まで出会った人の中でもかなりかっこ良かった。
なんだか近くで見ると遭難、と言うよりは寝てる様にも見える。
でももしも遭難者で、力耐えてるのなら・・・と声をかける。
「 あのっ、大丈夫ですか?」
意識を失っているかもしれないので揺らさず、声だけをかける。
反応は無い。
息をしてるかの確認をする。
息はしてる、よし。
とんとん、と肩の辺りを優しく叩く。
「 あの、大丈夫ですか?」
反応が無い。
さて、どうしようかな、と思った時、
がしっと腕を捕まれた。
ばちっとその男の人と目が会う。
黒く透き通った瞳に吸い込まれるかと思った。
「バトル・・・する?」
そして私はその人に、突然バトルを申し込まれた。
本気のバトルなんてもうずっとしてなかった。
木の実を取る為に野生ポケモンと戦ったり、
途中で会ったトレーナーと戦ったりした事はあったけど、全てはコーヒーの為だった。
とりあえず、彼が元気だって事は分かった。
緊張から解けると、ふと、本気のバトルの後に飲む、コーヒーの味を久しぶりに味わいたいなと思った。
だから、彼との勝負、受けて立つ事にした。
驚くほどに、強かった。
彼のポケモン達。彼の出す的確な指示。
そして何より感動したのは、その行き届いた体調管理。毛並みのツヤ、技の出し方、
その一つ一つのしぐさで分かる。どれだけ愛されて育ったか。
どれだけ、「 彼との強さ」をポケモン達が求めているか。
どれだけ彼を愛しているか。
だから、負けても勝った時みたいに嬉しかった。
「私、ナナミって言います。素敵なバトルでした。ね、あなた、名前何て言うんですか?」
自然に手をのばし握手を求め、名前を尋ねている自分がいた。
「 ・・・・レッド。」
「 えっ!あなた、あの噂のレッドさんだったんですか?
だからあんなに強かったのかぁ。ポケモンの世話もものすごく上手だし。流石ですねっ!」
そう言って妙に納得してうなずいた。
レッドさんは少しだけ驚いた顔をしてから声を出す。
「 ・・・ナナミのポケモンも、ね。」
そう言って、レッドさんもふわりと笑った。
「っ!!・・・なんだか印象全然違いますね。ニュースで言われてるあなたより、
本物の方が断然素敵ですっ。」
そう言って、言ってから顔がボッと赤くなった。
・・・・何言ってるの、私・・・。初対面の相手に・・・。
チラっとレッドさんを見ると、驚いて目を見開いて、それから少しだけ、顔が赤い気がした。
「あ、あの、・・・よかったらコーヒー、飲みません?」
この恥ずかしい空気を何とかしようと、私はコーヒー豆を取り出す。
コーヒー豆を挽きながら話す。
「 私、こう見えてもハナダシティでブレンドコーヒーのお店やってるんです。
毎週火曜日はこうやってフィールドワークの日としてお休みしてるんですけどね。
まだ17歳で、お店も始めて5年しか経ってないけど、それなりにお客さんにも来てもらってるんですよ。」
そう言いながら木の実を削り、豆に加える。
「 ・・・木の実、入れるんだ。」
その行動に興味を持ったのか、レッドさんが聞いてきた。
「 はい。木の実を入れるとコクが増したり、甘くなったり、渋みが増したりするんです。
それにこうするとポケモン達でも飲みやすくなっちゃうんです。
この木の実、さっき山で採ったばっかりだから新鮮で美味しいですよ。」
コーヒーを焚いてしばし、待つ。いい感じに色がつき、コーヒーの香が洞窟を覆う。
「 はい、どうぞ。良かったらポケモン達にも。熱いから、気をつけてくださいね。」
そう言ってカップを渡した。
ポケモン達の分も入れていく。
ピカチュウが一度、クンクンとコーヒーの匂いをかぎ、そろりと舌をつけて
「 ピカっ!」
と鳴き、体全体で熱さを表現していた。
「 ふふふっ、大丈夫?ピカチュウ。ちょっと熱いかもだから、冷ましてから飲んでね。」
私はそう言っってフーフーと自分のコップに息を吹きかけて見せた。
私のポケモン達は慣れたもので、冷めるのを待っている。
「 それじゃあ、レッドさん。」
そう言って私は自分のコップをかかげる。
「雪山の素敵な出会いと、楽しいバトルに、乾杯。」
そう言ってこつんとカップをぶつけ合った。
「 あ、おいしい。」
少しだけ冷ましてからコーヒーを飲んだレッドさんの感想。
最高のほめ言葉。
「 あっ!ありがとうございますっ!!」
私は嬉しくてついテンションが上がった。
「 ・・・この味・・・」
レッドさんはそう言うとごぞごぞと自分のバックをあさり、そこからインスタントコーヒーを取り出した。
「 あっ!それっ!うちの商品です。私が作ってるの。え、でも、どうして?
配達サービス、全部私がしてるのに・・・。ってゆうか社員が私しかいないだけなんですけどね。」
「 いつもグリ・・・連れに運んで来てもらってる。」
「 グリ・・・あ、グリーンさんですか!?わあ、そうなんだっ!嬉しいな〜。
グリーンさんね、常連さんなんですよ。 うちの。」
「 へえ、そうなんだ・・・。」
レッドさんがまたふわりと笑う。
ああ、いいな、この笑顔。
そんな事を考えて、いけないいけないっと別の話題を持ち出す。
さっきからずっと思ってた事をもう一度、今度はちゃんと落ち着いて言った。
「 それにしても、レッドさんのポケモンって本当に健康ですよね。
毛並みといい、顔色といい。ピカチュウの頬袋もすっごく綺麗。
バトルした時にそこが凄く感動だったんですよ。 ポケモンを愛してるんだな〜って。」
自然に頬が緩む。
ポケモンを愛してる人は、好きだ。
そう思ってほくほくしてると、レッドさんが返事をくれた。
「 うん。大好きだよ。
でも、それは、ナナミもだよね。」
レッドさんはそこでコーヒーを一杯飲んでから続ける。
「クサイハナから臭い匂いがしないのは、飼い主を心から信頼してる証拠、でしょ?
トゲチックはなつかないと進化しないし、
ペルシアンの毛並みも、すごく綺麗。
このポケモン達と出会ってから、ナナミがポケモン達と一緒に、
ここまでがんばってきたんだなってよくわかる。」
「 っ!!!」
私は慌てて下を向いた。泣きそうになった。
それを止める為に体をぎゅっと固めた。
「 ・・・大丈夫?」
レッドさんの心配そうな声がふってくる。
「 あっ、・・・すみません。これは、その・・・嬉しくて。」
「 嬉しい?」
「 はい。これまで、そんな風に言って貰えた事、無かったから。」
「 そう。」
クサイハナとペルシアンは、いわゆる『捨てられた』 ポケモンだった。
クサイハナの主人は知っている人だった。拾った時の、悲しい程のクサイハナの異臭から、
クサイハナがそれまで、どれだけ怯えて暮らしていたのかが伺えた。
ペルシアンを捨てた人は知らないけれど、ニャースだった時、
よくある『 拾ってください』と書いた箱の傍でギラギラ目を光らせて世界の全てを否定していた。
彼らとの出会いを思い出して、さっき止めかけた涙があふれてきた。
「なんで?こんなに・・・優しくて可愛い子たちなのに・・・。」
悔しくて、悲しくて、ぽろぽろと涙があふれる。
ぽんっと、頭に、優しく手が触れた。そしてそのまま優しくなでられる。
「でも、だからナナミと会えたんだよ?」
また、驚かされた。
たったこれだけで気づいたんだ。この子達の事を。
そして、そんな優しい事を言ってくれる。
そんな人が、この世に居るなんて・・・。
なんだか暖かくてでも少し恥ずかしくて、こんなに赤くなった顔を晒したくなくて
私は下を向いてだけど、精一杯のお礼の気持ちを込めて、お礼を言った。
「 ありがとう、ございます。」
顔の赤みも収まって、涙も乾いたころ、そろり、と顔を上げると、
レッドさんはとろける様なの笑顔を、私に向けてくれていた。
「 ナナミ、可愛いね。」
突然そんな事を言う。
やっと収まったのに、一瞬でバンッと顔が赤くなる。
「えっ・・・?」
何を言われたのかきちんと頭が理解できないで、相手の名前を呟くと、また頭に手が伸びてきた。
でも私の頭に到達する前に、間にトゲチックが割って入った。
両隣にはペルシアンとクサイハナも居る。
「 みっ皆?どうしたの?」
見詰め合うトゲチックとレッドさん。
少しだけ緊迫した雰囲気が流れ、ふっとレッドさんの周りの空気がさっきの穏やかなものに変わる。
そうすると三匹の空気もほわっとなった。
これ以上ここに居たら、本気で名残惜しくなる。
そう思う自分に少し苦笑しながら声を出す。
「それじゃあ、そろそろおいとましよっかな。」
三匹をモンスターボールに戻して立ち上がった。
「 レッドさん、お邪魔しましたっ!楽しい一時をありがとうございました。
それじゃあこれで。」
少し、いや、かなり名残惜しいけれど、帰って明日の準備とか配達の仕事とかもしないと
いけないしな・・・。
そう思って踏み出そうとした。
でも、ぎゅっと手首をつかまれて、動く事が出来なかった。
「 へ?」
変な声が出た。少し恥ずかしく思いながら振り返る。
「コーヒーさ、配達もしてるんだよね?」
手首を掴んだ主のレッドさんが聞いてきた。
「 あ、はい。火曜日なら何時でも、それ以外の日なら夜の7時以降からお届けできますよ。」
とっさに出る商売言葉。
「じゃあさ、これから毎週日曜日、届けてほしいんだけど・・・ここに。いいかな?」
そんな事っ!答える返事はただ一つ。
「もちろんですっ!ありがとうございますっ!!」
〜〜〜〜〜〜〜
レッドさんのドリーム小説はじめますっ!
よろしければお付き合い下さいませ。
どなたかに楽しんでいただければ幸せです。
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