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クランプ系小説
私立・堀鐔学園〜七夕祭りにドッキドキ!〜
黒モコナ「私立、堀鐔学園。
     幼等部、小等部、中等部、高等部、大学、大学院とでなるこの巨大な学園は、

     とある人物が私財のみで完成させた巨大な一つの都市であり」

白モコナ「寄宿舎、研究所、映画館、病院、銀行などのありとあらゆる施設が整ったこの学園には、
     学生、職員、関係者、その他家族など合わせてなんと一万人以上が登校、生活している。」

黒モコナ「と、なんだかどこかで聞いたような設定の堀鐔学園。
     今回は年に一度の奇跡の日、七夕祭りのお話。」



理事長室でふうっと一つため息をついて空を見上げ、侑子先生が呟いた。

「今年の夜は晴れるかしらね。織姫。」

その表情にいつものたくらんだような笑みは無く、

少しだけ曇っているようにも見えた。

が、すぐに、にやっと口角をもちあげるといつもの不適な微笑みで言った。

「今年は七夕祭りをするとしましょうか。」

そして侑子先生は、ふふふふふ・・・と一人笑うのであった。


  私立・堀鐔学園〜七夕祭りにドッキドキ!〜

「と、言う訳で今年は七夕祭りをしたいと思うの。先生方の意見も聞きたいのだけど、どうかしら?」

「どうゆう訳だよっ!?あと、窓から入ってくんなっ!!」

突然職員室の窓ががらりと開いたかと思うと、ぬっと姿を現した侑子先生が、

突然言った言葉に、いつものごとく黒鋼先生の突っ込みが入る。

「わあっ!面白そうですね〜!やりましょうよ〜!!」

侑子先生が開けた窓からすらりと入ってきて、へにゃっと賛成したのはファイ先生。

「お前は相変わらず話を聞かずに決断すんなっ!
 あと、当たり前のように窓から入ってくんのいい加減やめろ!!」

「うえーん。侑子先生、黒ポン先生が全否定してくるよ〜。」

泣きまねをしているのは、もちろんファイ先生。

「よしよし。黒ポン先生には後でお仕置きしなくちゃね〜。」

そういって不適に笑う侑子先生と、わーいっお仕置きだ〜。

と無邪気に笑うファイ先生を尻目に、はぁっとため息しか出ない黒鋼先生であった。


「・・・ところで七夕って何ですかぁ?」

落ちが付くまでその様子を微笑んで見ていたユゥイ先生が聞いた。

「七夕って言うのはね〜。」

ファイ先生が語りだす。

「一年に一度、
七月七日の夏の第三角形とその間を流れる天の川が一番ぴったり重なる日にだけ、
織姫と彦星がその川を白鳥の橋を渡って出会う事が許されるって言う
素敵でちょっぴり悲しいお話があって、その七月七日を、七夕って言うんだよ。
織姫、彦星、白鳥、天の川は英語ではベガ、アルタイル、デネブ、ミルキーウェイ
とも呼ばれてるよね。」

黒鋼先生が続ける。
「日本では七夕は古くから願いごとが叶う日とされていて、笹の葉に短冊を吊るして
 願い事を書くってゆう風習がある。
 七夕祭りでするのは笹の葉に飾り付けと、短冊に願い事を書いて
 川に流すってゆう事くらいだな。」

「あと、夏の大三角を見ながら星見酒ね〜。」

侑子先生が続く。

「あんたはいつもだろがっ!!」

黒鋼先生がすかさづ突っ込む。

「へぇ。そんな風習があるんですねぇ。楽しそうだなぁ。
 皆は何てお願いするのですか?」

ユゥイ先生が聞き、

「そ〜れ〜は〜、七夕になってからのお楽しみよ。」

侑子先生がそう締めた。





「はい。とゆう訳で、今年の7月7日は七夕祭りを開くわよ。
 みんな笹の葉に飾りつけと短冊に願いごとを書いて吊るしていってねー。」

体育館に集まった生徒面々の前で侑子先生が言う。

生徒達の列の前には笹が5本並べられていた。

皆楽しそうにしているが、一際『うきうき』と言った表情を浮かべている生徒がいた。


C組のサクラである。

好きにばらけて作業をしてもよくなると、早速同じC組のひまわり、小龍と一緒に

B組の小狼、四月一日、百目鬼、モコナ達の元に向かう。

「サクラ、うきうきしてるっ。」

白モコナがキャ八ッと飛び跳ねて言う。

「うんっ!私、七夕って大好きなの。
 
 だって一年に一度、織姫様と彦星様が出会う日なんだもの。

 きっと二人が、一番幸せな日だもの。」

ふふふっと本当に幸せそうに笑うサクラに、小狼も優しくクスっ微笑んだ。

そんな二人を見て小龍は少しだけ意地悪な笑みを浮かべ

「運命の人、だもんな。」

そう言った。

それは暗にサクラと小狼の事を言っているという意を込めて。

案の定サクラと小狼はボッと同時に頬を赤く染めた。


「と、ところで皆は短冊に何て書くんだ?」

なんだかみんなのにやーっとした暖かい目が恥ずかしくて

慌てて話を逸らした小狼の言葉に四月一日が返す。

「俺は『ひまわりちゃんともっと仲良くなれますよ〜に!』だよ。」

そして語尾にハートをつけて続ける。

「ひまわりちゃんは〜!?」

「俺は『明日は鮭ご飯と卵入りミートボールと、ほうれん草のおひたし作って来い。』」


百目鬼が答える。

「お前には聞いてねーよっ!!つか只の飯のお願いな上、頼んですらいねぇっ!!!」


四月一日が一気に突っ込みを入れる。百目鬼はあーうるせーと耳を手でふさぐ。

そんな二人の様子をあははっと笑っていた黒モコナが、ふと気づく。

「ひまわり、何か元気ないな。どうかしたのか?」

「えっ、そんな事ないよ?げんきだよ〜っ!」

突然話を振られたひまわりは、確かにしんどいと言った様子ではないが

明らかにぼーっとしていて、驚いたといった返答だった。

「ひまわりちゃん、もし、何かあったのならどんな事でも教えてほしいな。・・・何か、あったの?」

四月一日が優しく聞く。

「あ、ありがとう・・・四月一日君。」

自分の変化に当たり前の様に気が付いてくれる人が居る、その事がじんわりと嬉しくて

ひまわりはふわりと笑顔を見せた。

だがすぐに、少しだけさびしそうな顔になり続ける。

「最近、七夕って雨ばっかりだなって思って・・・。
 雨が降ると天の川が洪水して、織姫様と彦星様が会えないって言うじゃない?
 だからちょっと心配だなって・・・。」

そういえば、と過去を振り返る。

毎年この梅雨の季節は雨で、ここ何年か七夕の夜に晴れた事が無かった事を思いだす。


「そっか・・・。確かにそうよね。洪水じゃ白鳥さんも橋を作る事、出来ないものね・・・。」

サクラもしゅんとして言う。

「それがそうでもないのよね。」

「「ひゃっ!!」」

突然背後から話に参加してきた侑子先生にサクラとひまわりの小さな悲鳴が重なった。


「侑子先生、それってどうゆう事ですか?」

小狼が聞く。

それがねぇ、とまるで近所の悪がきの話をするかの様に侑子先生は続ける。

「あの二人、年に一度を大切にしすぎて、どんな豪雨でも毎年必ず会ってるのよね。
 白鳥たちも、もう何千年も続けてる事だから
 あの二人に愛着わいちゃってるから誰も止めないし。むしろ楽しんでるのよね。」

それから少しだけトーンを下げて

「でもね、去年豪雨があったでしょ?
 そのせいで流されそうになった織姫を彦星が助けて
 彦星が足を骨折してしまったのよ。
 それでも彦星は良かったって言っているのだけれど
 織姫はかなりその事を気に病んでるようで、
 今年も雨が降ったら今年は全部の橋を渡り切ってやるって言ってるのよね。」

そしてその後、侑子先生自体、目を逸らしたくなるような残酷な言葉を吐く。

「でも、それは出来ない事なの。
 織姫は彦星の、彦星は織姫の陣地に入っちゃいけないって言う神様からのルールがあってね。
 ・・・今年、雨が降れば、それを織姫は、破るかもしれない。」

白モコナが震えるように言った。

「それ、破ると・・・織姫と彦星はどうなるの?」

侑子先生は静かに、言った。

「破った方は50年間、深い眠りにつくそうよ。」

「そんなの、駄目っ!!!」

サクラが今にも泣き出しそうに言った。

「会いたいのに、一年も我慢して頑張ってるのに、

 これからずっと会えないなんて、絶対駄目っ!」

そして小狼の服をぎゅっと握る。

小狼も苦しそうに唇をかむ。

四月一日もそうポツリと呟いた。

「そうだね。・・・会いたい人に会えないのは、この世で一番、辛い事だな。」


「だったら。」

そう言ったのは百目鬼。

「やる事は決まっただろ。」

続けたのは小龍。

二人が持っている物は短冊。


その姿に、落ち込んだ皆の顔にぱぁっとヒカリがさした。


そんな生徒達の姿を見て、侑子先生、ファイ先生、黒鋼先生、ユゥイ先生は

本当に幸せそうに、優しい微笑みを浮かべていた。



『どうか7月7日の夜が、晴れますように。』



並べられた5本の笹に吊るされた皆の願いごと。

月の光に照らされたその優しい願いたちは、ゆらゆらと風に揺れていた。







当日。

皆の願いが天に届き、夜に美しい夜空が拝めたのは言うまでも無く、

空には一際大きく夏の第三角形が煌いていた。

「あ、流れ星っ!」

サクラが一番に気が付いた。

「あっまたっ!!」

今度はひまわり。

次々に降り注いでくる、まるで流星群の中心に居るかのごとき

星の雨。

その幻想的な夜の空は

無事に出会えた織姫と彦星と、かれらを愛する白鳥たちからの

プレゼントの様に思えた。



星を眺め、月夜を飲んでる先生達。

くすりと頬を緩めて酒づきを天に掲げると

くいっとお酒を一のみし、侑子先生は呟いた。

「堀鐔学園、今日も平和ね。」









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
大好きなイベント、七夕を終え、勢いで書いてしまいました。
駄文ですが、ここまで読んで下さった方、本当に有難うございました。
心から感謝いたします。

堀鐔学園のほのぼの加減がほんとに好きです。



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