[携帯モード] [URL送信]

小説
caramella キャラメル


 ※ S女装話。XS←D要素有。


以前から殺しておきたいと思っていた男の一人を、始末した。
「お前…ほんとにえげつない殺し方するよなぁ?」
「…やったのはカスだろうが」
差し向かいで飯を食っているのは、十八年間忌々しいと思っている金髪の男だ。無駄に光を集める髪と瞳が、鬱陶しくて仕方ない。灰にしたくなる。
「やらせたのはお前だろー?あー怖!スクアーロも可哀想に」
「…次はてめぇの所にカスをやろうか?」
「いや、オレはあんなにしつこくないしな。良い奴だろ?オレって」
にっこりと笑って、シャンパンを傾ける姿が一々勘に障る。気障な野郎だ。
「はっ!ドカスが!」
どの口がそれを言いやがる。
これだから、跳ね馬との会食には来たくなかったのだ。
「しっかし、綺麗だったなぁ。スクアーロ」
「…帰るぞ。レヴィ、車を出せ。ベル、てめぇもだ。さっさと切り上げろ」
後ろに控えていたレヴィと、同じテーブルで食事をしていたベルに声を掛ける。会食には来たのだから、十代目のガキに文句を言われる筋合いはないだろう。
「あーっ!待て!待てよXANXUS!あと三十分!」
「ベル、カスザメだけ連れて先に帰れ」
「だーっ!オレはスクアーロが見たいんだって!独り占めしてんなよ!」
跳ね馬の手からシャンパングラスが抜け落ちた。幸いにも下は毛足の長い絨毯で、耳障りな音を聞かずに済んだ。
「フン、あのカスは俺の所有物だ。てめぇに見せてやる義理はねぇ」
「ッ〜〜〜!お前って、本当に心狭いよな〜?」
「…さあな」
心は、狭くはない。あのカスザメが俺の所有物だというのは紛れもない真実であれば、その艶姿を気に食わないと思っている男に見せてやる余裕もある。
誰がパーティーでカスザメを口説こうが、あれは俺以外に靡く事などは有り得ないし、すげなく扱われて終わりだ。パーティーが終わって自室に帰れば、心身共にあれは完全に俺の所有物となるのだし、例え任務に出ていようが、俺の言い付けに対し、恐ろしいまでに従順だ。
だからといって、脂ぎった俗物があれに集るのを見るのは、不快以外の何物でもないが。
「…だが、雑魚共の末期には見せてやっても良い」
あの容姿だけを欲している人間は、哀れな事だ。あれが本当に美しいのは、剣を手に舞い、血飛沫に嘲う姿だというのに。
「だから、見せてやった」
久し振りに、酒が廻っている。気分が良い。口数が増える。だが、跳ね馬、てめぇにはそれは見せねぇ。
「…本気で性格悪ぃぞ、お前」
呆れた様子で、跳ね馬がフォークとナイフを置いた。
「言ってろ。カスが」
カスザメを着飾らせるのは、思いの外楽しかった。姿だけを絹と銀と真珠で繕って、血の匂いと傲慢さを覆い隠す歪さが、面白かった。
案の定、繕った表面だけを好む銀髪好きの俗物は、あっさりと着飾った暗殺者を部屋に招き入れた。スクアーロには、ファスナーを降ろすまでは許せ、と、指示した。死の瞬間はさぞ見物だっただろう。濁った血が染めた白い服は、あれにはさぞ映えたに違いない。俺は珍しくも、その現場に居なかった事を後悔した。
「ししし、パパン、機嫌良いね」
ベルの言葉を無視して、酒を口に運ぶ。デザートワイン。菓子は余り好きではない。ベルは、運ばれてきた飴の籠の掛かったムースを食べている。
「う゛ぉおぉい、もうデザートかぁ」
跳ね馬がまた派手にスプーンと皿を落とした。赤面し、硬直する。仕立ての良い黒のスーツに付いた染みは落ちないだろう。ベルが茶化すように口笛を吹く。レヴィは驚いた顔をしていたが。
「カスが。遅ぇんだよ」
銀にドロップ型の小粒な真珠を散りばめた装身具に、長い白手袋。素材は良いが、余計なパーツを一切付けていない流線型の衣装。腰の線が出るように指示しただけあって、よく出来ている。ああ、ルッスーリアには特別に休暇をやるとするか。
「ん、美味そうだなぁ。オレも食いてぇ。XANXUS、良いかぁ?」
「…好きにしろ」
わざわざ振り返るような真似はしない。カスザメは俺の隣に座ると決まっているのだから。










[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!