小説 pioggia 雨3 同じソファに座り、隣でぐずぐずと鼻を鳴らすこいつは、まるっきりただのガキだ。 「ん…XANXUS」 「あ?」 スクアーロが膝立ちになり、俺の肩に手を置いた。目を固く閉じ、背筋を強張らせ、口付けてくる。舌で応えてやれば、直ぐに筋肉の緊張は解けた。 「ぇ…XANXUS…?」 「煩ぇ」 唇を離して、ソファに押し倒してやる。契約は成立した。こいつはこいつの意志で契約をした。文句は言わせねぇ。言うのなら、言えないように塞いでしまえば良い。 「鮫の肉が食いてぇ。寄越せ」 「えっ!?あっ…!そ、それって、そ、そういう意味…だったのかぁ!?」 首筋に噛み付いてやれば、漸く意味を理解したようだ。今度は先程とは違う理由で、顔が朱に染まる。 「わ、悪ぃ、XANXUS、オレ…」 「御託は良いからさっさと食わせろ」 「ちょっ…!待てぇ!こ、こっちにも心の準備ってのが必要なんだぁ!」 この期に及んで、両手と両脚を使ってまで抵抗してくるコイツに、殺意すら覚える。何処まで焦らす気だ、カス。 「嫌か?」 「う…い、嫌じゃねぇ。けど…その、お、お前は大人だし、その、オレはガキだし、何て言うかっ…!」 「だったら、俺がガキになりゃあ良い」 久し振りに、姿を変えてみる。十四の処女に合わせて、十六のガキの姿に。 「待てっ!待てよぉ!XANXUS!」 「ああ?まだ不満があんのか?」 「す、姿は、最初に会った時の…さっきのが、良い…でもなぁっ!だ、大体っ!オレ達はさっきの契約でお互いがお互いのモンになったんだから、つまりはどっちも相手に絶対服従っつー事だぁ!だから、矛盾が発生すりゃあ、契約は相殺されて無効!お互いの意志が同じじゃなけりゃ駄目って事だぁ!」 嗚呼畜生。クソが。魔術師なんざ録なもんじゃねぇ。 何時の間にか降りだした雨は、議論が紛糾するのに比例して激しくなっていった。 ‡余談‡ 三日後…雨天の夜、スクアーロの私室にて。 「凄かったぞぉ…!」 キラキラと尊敬の眼差しでXANXUSを見詰めるスクアーロ。 「…そうか」 「XANXUS、お前って凄ぇんだなぁ!」 裸のままベッドでしがみ付かれただけで、全てを許してしまう時点で、多分悪魔は魔術師に勝てません。 [*前へ][次へ#] [戻る] |