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小説
menta ミント1


婿と舅の関係が複雑なのは万国共通、古今東西同じ事で―――…
「遊びに来てやったぞー、可愛い孫達よー」
白衣に黒いシャツ、派手な柄のネクタイ。間延びした口調と特徴的な声。間違いない。
「あ、グランパだー。久し振りじゃね?どうしたの?」
「また王妃か皇女辺りに手を出した上で八百股くらい掛けて指名手配とみた」
「惜しい!八百二十二股だ。さー、お土産だぞー」
いきなり、何の前触れもなくヴァリアーの幹部専用談話室に現れたのは、普段は滅多に登場しない疑似家族の一員、Dr.シャマルだった。ポジションは母方の祖父。なので会うなりベルとフランには土産のベルギー製ミントチョコレートを配り、マーモンには小遣いを与えている。
「う゛ぉおおぉい、よく来たなぁ。シャマル、今回は何日位滞在するんだぁ?」
「おー、我が娘(笑)よ。そーだなー…今回は綱吉が面倒事押し付けてくる前日位までだな。最近はどうだ?ん?ちゃんと旦那とハメてるか?」
「う゛ぉおおおぉい!ガキ共の前でサラッと下ネタ口にすんなぁ!」
実際にはベルもフランもマーモンも皆大人のようなものなのだが、これは頂けない。
XANXUSのこめかみに血管が浮き上がる。
そして…
「いやいや、堅い事言うなよ。これも性教育の一環だ。で…正味な話、どうなんだ?」
「えぇ!?だ、大丈夫だぁ…だって、何時もあれやら(自主規制)これやら(自主規制)それやら(自主規制)してくれるしな゛ぁ」
「何だあの馬鹿亭主。そん位しかしてねーのかよ。 相っ変わらず面白味のねー男だな!ついでに甲斐性もない!いいか、娘(笑)よ、大体ピ――(報道規制)もピピ――(R-18)も使ってだなピ――(いやんv)をピピ――(放送事故)するだとかピ――(新法案可決反対)した上でピピピ――ピピ―――、ピ――ッ!(R-20)」
…これだ。
この歩く猥褻物のお陰でスクアーロが汚い…基、生々しいというよりも生臭い言葉を覚えてくるから困りものだ。
時々、この猥褻物に吹き込まれた言葉を真に受けて、純真な瞳、且つ無邪気な態度でとんでもない事を言われて肝を潰したのは一度や二度ではない。これから前戯に入ろうという時に、そんな言葉は清純な筈のスクアーロの口からは聞きたくない。
十年程前から放送禁止用語のボギャブラリーが急に増えたと思ったら、この薮医者が全ての元凶だ。
仲良く出来る筈がない。
「おっ、居たのか我が義息子よ!相変わらず人生損してそうだな!」
「煩ぇ。死にたくねぇならさっさと出て行け」
「あー、もう駄目だ駄目だ!こんな器の小せー男、離婚しちまえスクアーロ!」
「!?」
離婚、という言葉に動揺してしまう。尤も、スクアーロとは結婚している訳はないのだが…別れ話関連の単語にここ数年酷く臆病になっている自分が居る。その事実は疎ましいが、既にスクアーロの居ない人生など考えられない段階に来ているのだから仕方ない。
自らの不甲斐なさを腹立たしく感じるが、自分では最早どうにも出来ないのだ。
「う゛ぉおおい…そもそもオレ達、結婚してねぇぞぉ…υ」
スクアーロが真面目に返すが、明らかに論点がずれている。
何時も思うが、仕事上の勘も察しも良いのに、何故こうも自分が絡む人間関係になるとずれているのか。
「我が娘(笑)ながら哀れな…オメー、本気になればこの世の大概のモンは手に入るポジションに居んだぞ?そこんトコちゃんと分かってんのか?」
確かに!
「あ゛あ゛?一体何言ってんだぁ?意味分かんねぇぞぉ?」
カスザメ、お前はお前で何処までも予想通りか!だが安心したぞカス!
現在スクアーロが手玉に取ろうと思えば取れる人間は、少なくともこの世に三人は居る。XANXUSとディーノと山本だ。
この三人は揃いも揃ってスクアーロにベタ惚れで、三人が三人とも十年以上この超天然な暗殺者に恋しているのだ。
イタリアの裏社会でかなり高い位置に居るこの三人は馬鹿みたいに金持ちだ。金を持て余しているといっても過言ではない。シャマルの言う通り、スクアーロが強請ればこの三人は何だって手配してスクアーロに与えるだろう。
しかし、スクアーロに全く自覚・物欲・魔性度がないので、そんな事態に陥った事は過去に一度たりとも無かったが。
「その気になりゃ何でも…って、そりゃオレじゃなくて、綱吉とかXANXUSだろぉ?まぁ、オレも任務でそれなりに金貰ってっから、大抵欲しいと思ったモンは買えるけどよぉ…根っからの庶民だからな゛ぁ、そんな高ぇモンなんざ買わねぇし…」
コメントの内容がほぼ予想通りで、XANXUSは心中複雑な思いが交錯する。欲が無いのもスクアーロの魅力だが、故に誕生日でも、毎年贈る物を何にするか苦心する羽目になるのだ。何を贈ろうが喜ぶが、それは正解が無いというのと同義なのだから、少し虚しいものがあったりする。
「お前…本気で人生損してるような…否、まぁ、物欲がないなら、そうだよな。価値観の問題か…」
シャマルが妙な表情をして、煙草をふかし始めた。遠い目で何か感慨に耽っている。
「XANXUSぅ、まだ仕事あんのかぁ?」
「…珈琲を持って来い」
一先ずは落ち着いたので部屋に戻る。多少気疲れがするのは、年のせいだろうか。





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