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小説
uccello 鳥3




「…人間ってのは、一回の交尾でここまで消耗すんのか」
不便な生き物だ、とXANXUSが不思議そうに言う。
「あれを一回と呼べるならな゛ぁ」
何とかXANXUSに人間流の交尾にしてくれと半泣きになって頼んだお陰か、体位だけはまともだったが、人間の姿で行為に及ぶと、時間も満足度も人間並みに換算されるらしい。鳥類だから数分で終わるかもしれないという願望にも似た希望は見事に打ち砕かれ、散々揺さぶられて今に至る。激しさも時間も、野生の王国から離れて久しい現在の人間とは比べ物にならない。
「ああ゛?カスが。文句でもあんのか。犯すぞ」
「何でもねぇ…」
鳥類の交尾は、許可するのは雌でも、何時終わるのかは雄次第だ。下手に刺激したらもう二、三ラウンド追加されかねない。
「頼むから勘弁してくれよ゛ぉ…XANXUSぅ、お前、人間の交尾ってどんなモンか少しは知ってんだろぉ?知識があんだから、人間の流儀に従ってくれぇ…」
XANXUS程の知識量であれば、ポルノ小説を読んだ事がなくとも、それ位は分かる筈だ。
「…この姿で人間の牝とヤッた事は何度かある」
「だったらよぉ…って!待てぇえぇえ!今聞いちゃなんねぇ事を聞いちまったぞぉ!?」
人間の女と何度か人間の姿でヤッた事があるってのは…確かにルックスはモデル並みだし女だったらホイホイ面白いように引っ掛かっても不思議じゃねぇっつーか、え?う゛ぉおぉおい、それって、え?人間の牝って言ったよなぁ?って事はオレの事も男だって分かってる筈で…じゃねぇ!違ぇだろぉ!オレぇ!それ以前にって事は、つまり…!
「おっ…前!」
XANXUSが口の端だけを吊り上げ、皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「あの腕グルグルはただの口実かぁああぁあぁ!」
騙された。
生態系ピラミッドの頂点にある人間の身で鷹に騙されるなんざ、オレ、本当にカスかもしんねぇ…
「…おいカス!人間の流儀で、と言ったな?」
「う゛ぉう」
ショックの余り枕に顔を埋め、うつ伏せになった状態のままで答える。頼むから今は放っといて欲しいぜぇ。人間の尊厳ってのは何か探求してるトコだぁ。
「言ったな」
また嫌な予感。サド全開な声のトーン。反射的に顔を上げると、いきなりキスされた。
ああ、注意一秒怪我一生。後の祭り。よく言ったモンだぁ。ジャッポーネの諺ってのは凄ぇよなぁ。畜生、まだ仕事終わってねぇのに。
「ヤるぞ」
また猛禽類に騙される、霊長類の長たる人間である筈のオレ。人間流で、何て言わなけりゃあ、これから絶対に肩を回さなけりゃ良いだけの話だったんじゃねぇかぁ。人間流のアピールってのは猛禽類と違って複雑だぁ。だからこそ人間ってのは偉大なんだろうが、その複雑さが疎ましい。幾らでも好きなように拡大・解釈出来る。
多分この大空の支配者に今更何を言っても無駄だろう。鷹は一度捕らえた獲物を取り落とさない。
スクアーロはそう諦めて、縁は異なもの味なもの、と今翻訳している小説の希望とも皮肉とも取れる一節を日本語で唱えたのだった。








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