カイとソウ《2》
*


恢のベッドに転がってぼんやりしていた。
なんだか感情が浮いたままさ迷ってるみたい。
掴めなくなっていく自分の気持ちなのに、どこか他人事みたいで。
目を閉じた。
ただ、好きなだけなのに。




ふわり。
優しい感触に擦り寄ると、またふわりとした感触。
「……ん…ン」
包まれた温かさが心地好くて力が抜ける。
「ふ、ン…」
そのまま沈んでいく意識。

──そーた

僕を呼ぶ恢の声。
蕩けるみたいに甘くて、優しい声。
誰に呼ばれるよりも僕の心を満たしていく。







── 一緒に居て、しんどくない?


──アイツと居て、世界が違うとか思わない?


──傍に居てしんどいなんて、一緒に居る意味ないじゃん




響いたのは小野の声。
詰まるような息苦しさと鈍く痛む喉の奥。
吐き出した息が震える。
違うんだと叫びたい。
恢と居てしんどいなんて、そんな風に思わない。
隣に居る恢とモデルの恢と、どちらも好きで大切で。
感じる焦燥は僕自身の問題だから。
だんだんと開いていく距離が怖いから。







「……っ、あ」

飛び込んできたのは暗闇。
じわじわとにじむ汗に目が覚めたことを感じた。
腰に乗る重みは馴染んだ温かさ。
「恢…」
ゆっくりと上下する胸元。
「寝てる、ね」
しっかりとした腰に腕を絡めてくっついた。
もっと傍に行きたい。
隙間がなくなるくらい。
「…ン、そー…た?」
どうしたの、と甘やかす唇が額を撫でて吸う。
きっと無意識の行動なんだろうな。
「恢」
「…なぁに?」
いつもよりも掠れた声が返る。
もぞもぞと動いて僕の体を抱き締め直す。
ちゅ、と旋毛を撫でる唇。
「好き」
「………ん、どした?」
「恢が好き」
恢の胸に押し付けた額からは規則正しい鼓動を感じる。
長い指が髪の毛を掻き混ぜて撫でる。
「好き…だから」
だから、の続きは言葉が出なくて。
「そーた」
恢の体が動いたと思ったら肩を掴まれて仰向けにさせられた。
「か、い…?」
一本一本ゆっくりと絡ませた指を握り締めて顔の横に置く。
間近にある恢の瞳がギラリと光った、気がした。
「ふ、ぁ…っ」
重なった唇に驚いて口を開けたら恢の舌が入り込む。
ぐるり、と僕の舌に絡み付いてきつく吸い上げた。
「ぅ、んっ、ん」
がっちりと噛み合わせるように重なる唇。
舌の裏側から根元までねっとりと舐められて背中が震えた。
熱い息が混ざり合って、零れるみたいに溢れる。
全部、全部…
全部が混ざってしまえばいいのに。
苦しさを感じるくらいの舌の動き。
必死についていって吸い付いて。
握りしめている指に力が込もって舌を噛まれた。
「ゃ…い、た…っ」
ピリ、と広がる痛みにいやいやをする。
それでも離されることのない舌は恢の咥内に引き摺り込まれた。
キスだけしているとは思えないようないやらしい音が響く。
「ふ、ぅ…うン…んーっ」
痛みが感覚の表面を滑る。
その奥から侵食するみたいに拡がるいやらしい気持ち良さ。
いつの間にか離された指は恢の首を辿って触れた髪の毛を掴む。
さらさらとした感触はいつもなら安心するもの。
今は…
もっと欲しくて引き寄せた。
「そーたの淫乱」
囁かれた声は僕の咥内から直接頭に響く。
長い指が唇の端を拭う。
恢と僕の混じりあった唾液が恢の指を濡らす。

ペロリ。

赤い舌が濡れた指を舐める。
その舌が唇を滑る。
きゅう、と綺麗な弧を描く唇。
「す、き…」
離れてしまった唇に触れたくて両頬を包んで引き寄せた。
「すき…すき、恢…恢が好き」
「そーた」
「好き…っ」
舐めてねだるように下唇を噛んで…
「知ってるよ」
「…ン…ぅ…」
答えるように絡んだ熱。
「だから、もっと好きになって」

──俺を見て

もう、僕の中は恢でいっぱいなのに。



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あきゅろす。
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