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短編『観測者』
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シャート「思い…出した……」

マスター「目覚めたようだね」

シャートは立ち上がると作者殿を睨みつける。

マスター「思い出せたようだ」

シャート「思い出せた……だが、僕を生き返らせて何がしたい!?何が目的だ!」

シャートは感情のまま、作者殿に怒号を放つが、作者殿は口にする。

マスター「実はね、私は数多くの物語を書いてきた。君の物語もその一つだ。だがそんな物語も読む人間によって悪用されてしまっていてね」

シャート「は?」

マスター「その異常を君に修正してほしいのだよ」

シャート「あんたは……神様なのか?」

マスター「そんなものかな、私は世界とおおよその物語を作るがその世界に生きる者達がその先を紡いでいく。そしてその物語を読む者がいる。そんな場所が私のいるこの場所だ」

シャートは辺りを見渡すが、人が生きている様子はない。
どう考えてもこの年寄りが一人いるだけのように見えた。

マスター「私以外にも様々な創造者(クリエイター)がいるのだが、会いに行くかな?」

作者殿はそう口にすると手元の書物を開くが、シャートは制止した。

シャート「いい……僕も自分がいた世界で好きに生きていたし、神に喧嘩を売って殺しもした…もう何を言われても驚きはしないさ」

シャートは自分の経験から全てを受け入れた。
納得しているかと言われたら、答えられないものだったが。

マスター「では君に第二の人生を与えた者として、頼みたいことがある」

シャート「なんだ?」

マスター「先程も言った通り、私の物語や他人の物語に介入して悪用するものがいる。それを『観測者』という立場で修正してもらいたい」

シャート「……まあ、構わないが…」

マスター「その為の力も与えよう。君は既に十分な力を持ってはいるがそれはそれとしてね」

シャート「ん?」

作者殿は書物を開くと、書物から光の粒子が浮かび、シャートの体に触れると彼の体の中に溶け込む。
シャートは何が起きたか分からずに首を傾げた。

マスター「まずは君の【全てを貪る捕食者】の能力はそのまま使えるけど呪いは消えていないよ、君はクロードという存在には一生勝てない」

シャート「分かってる、そういう呪いだからな」

マスター「君は話が早くていい、君を選んで正解だったね」

シャート「で?能力とは?」

マスター「君に与えた力はもう一つ。私も使えるが【DLIST】だ」

シャート「【DLIST】(ダリスト)?」

マスター「これは今後旅していくことで強化されるが、簡単に言えば君が世界を旅することでその世界の力をいつでも引き出し、利用出来る力の事だ」

シャート「Aの世界で得た力をBの世界でも使えるということか?……それって僕の【全てを貪る捕食者】と何が違うんだ?」

シャートの疑問は最もだ。
そんな能力既に持ち合わせているのだから意味などないと。

マスター「【DLIST】は、その世界で力を得るとその世界にある全ての力が使えるのだよ」

シャート「どういう意味だ?」

マスター「例えば私が君のいた世界の力を得た場合、その世界に由来する全ての平行世界の力と全ての人間の力を利用出来る………もっとわかりやすく言えば、君の世界で力を得たら、君やクロード、魔物の全ての力の顕現と召喚、何でも出来てしまう」

シャート「なんだと?」

マスター「【DLIST】は強力だが、濫用は禁止するよ。『観測者』はあくまで修正や監視が仕事で戦闘や殲滅が目的ではないからね」

シャート「分かった……」

マスター「うん、では事件が起こるまで君には待機を命じるよ。この庭園で自由にしているといい。休みたくなったら私の家の2階を使うといい」


作者殿はそう言うと建物の中へと消えてしまった。
シャートは辺りを散策するが特に目ぼしいものは見当たらなかった。

そしてしばらくして作者殿が彼を呼びつける。



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