『ドラゴンクエスト ─運命に抗う者達─』 ページ:8 アルギアを転ばせたのは無論の事、クロードとクルスだった。 その状況を眺めていたミリア達をよそにインフェルノが二人を吹き飛ばす。 クロードとクルスはミリア達のいる場所の左右にそれぞれ撃ち落とされて転がる。 サヤ「クルス君!?」 バロン「クロード、大丈夫か!?」 インフェルノ「余の相手をしている割に随分と余裕だな」 インフェルノがそう告げるが、土煙から二人は何事も無かったかのように歩いて現れる。 しかし、全身には傷や血痕があり、満身創痍だった。 立っているのが不思議なくらいだった。 クルス「アルギア、お前ふざけてんじゃねえぞ」 アルギア「え?」 クロード「ミリアの心を傷付けてまでお前は敗北する運命に抗い続けてたんだろう?」 クルスとクロードがアルギアの少し前に並んで立つ。 クロード·クルス「だったら諦めずに最後まで抗い続けろよ!」 クロードは小さく息を吐き、クルスは口元の血を拭った。 その後、クロードは再度【全身全霊】と【明鏡止水】を発動する。 クルスもポケットから白い手袋を取り出し、装備してから魔導書を開いて【魔導暴走】を発動させる。 アルギア「無理だ…世界は最後の最後まで僕に戦えと…………【死んで敗北しろ】と言うんだぞ!?…そんな未来になるくらいなら僕の大事な…傷付けたくなかったレミリアが幸せに過ごせる時間くらいは……償いとして、残してあげたって構わないじゃないか!」 アルギアがそう叫んだ時、ミリアがスッと立ち上がってアルギアの横に立った。 それに気付いたアルギアが振り返ると、ミリアは剣を手にして立っていた。 ミリア「アルギア兄様は見ていてください」 ミリアがそう言ってクロードとクルスの間を通り抜け、インフェルノを見上げる。 アルギア「レミリア!駄目だ!」 ミリア「駄目じゃありません。私は大魔王インフェルノを……闇の存在を倒すって決めたんです」 アルギア「そんなこと、レミリアがする必要はないだろ!?」 アルギアはそう口にする。 もしもミリアが新たな勇者として覚醒したのならそれも当然だが、それはあり得なかった。 ならば、【ただの人間である】彼女がそんなことをする必要はないはずだ。 ミリア「あります。私はフェニスを復活させる為にたくさんの人の絶望の気持ちを希望の光に変えてきました。人々が変わってくれたのなら、私はそんな人達を…助けてあげたい」 ミリアはミリアの剣を掲げて、切っ先をインフェルノに向ける。 ミリア「私は勇者でも何でもない【ただのミリア】だけど、助けを求める人々がいるのなら、その人達の為に戦いたい。ただそれだけだから!」 ミリアがそう言うと、クロードとクルスは構える。 それと同時くらいにクロードの横に、サヤ、バロン、レイナート。 クルスの横にミドリ、フリルが並び立つ。 レイナート「そうですね、アルギアの話が本当ならば勇者は敗北してしまうのかもしれませんね」 フリル「逆を言えば、勇者じゃなきゃ敗北しないんじゃない?」 バロン「ワシらは誰も勇者ではないからのぅ、楽しみじゃ」 サヤ「例えどれだけ大きな存在だったとしても私達は恐れたりなんてしませんから」 ミドリ「光があるから闇がある。けど、闇が大きければそれだけ強い光もきっとあります!」 クルス「【敗北する運命】ってやつに胡座をかいてるやつがさっき死んだぞ?……インフェルノ、お前もそういうタイプかよ!」 仲間が口々に言葉を紡いでインフェルノを睨みつける。 インフェルノ「ヤケになるのが早くはないか?」 インフェルノは焦ってなどいない。 もはや、そこにいるアルギアも含めた9人は自分にとって恐るるに足りない存在だからだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |