『ドラゴンクエスト ─運命に抗う者達─』 ページ:6 オールテクの街は、八角形の通路の様なものが一繋がりになっていて、中央に平たい建物があり、その上には雪像があり、その広い中庭のような場所では子供が遊んでいたり、区画を柵で区切って降雪地方でも作られる作物が作られていた。 その子供が遊んでいる場所のベンチでミドリが俯いて座っていた。 フリル「なーにしてんのよ」 ミドリ「あ、フリル」 フリル「『あ、フリル』じゃないわよ…どうしたの?」 そう声をかけつつ、隣に座る。 ミドリはチラリとフリルを見てからまた俯き、自分の手元を見ながら話し始める。 ミドリ「私…お役に立ててるんでしょうか?」 フリル「え?」 ミドリ「ミリアはみんなを引っ張って、誰とでも話して皇帝や皇女様とも普通に接しています。クロードやバロンも強くて頼りになります。レイナートやサヤは大人で冷静で何でも知ってます。フリルも変装での潜入や情報収集、戦いも強いです。クルスも戦いや色んな知識でみんなを助けてます……でも、私だけずっと足を引っ張っているようにしか思えないんです」 フリル「あんただってクルスに魔法教わってて回復呪文で助けてくれてるじゃない?」 ミドリ「でも……私には……私だけが出来ることがほとんどないです…」 フリル「そうよ、歌!歌があるじゃない!」 ミドリ「でも…味方を強化するだけなら…呪文でも出来ます……」 フリル「うーん……」 ミドリは自分だけこの旅の仲間の中で役に立てていないと思っているようだ。 フリルはなんと声を掛ければいいか迷ってしまった。 フリル「あたしの勘なんだけどさ」 ミドリ「?」 フリル「ミドリにはミドリにしか出来ないことがある。それはきっと私達にとって重要なものな気がするの」 ミドリ「でも……勘…ですよね?」 フリル「そうよ、勘。でもね、そんな気はするの」 ミドリ「……でも…」 ミドリはどこか否定しようとするが、そんなミドリの口にフリルは立てた人差し指を当てて話せないようにしてから続けた。 フリル「あたし達ってさ、みんなよく分からないじゃない?……みんな、歳もバラついてるし、職業や立場もバラバラ。でも何かを成し遂げる為に集まったんじゃない?……だから、ミドリがパーティーにいることはきっと【運命】なのよ」 ミドリ「【運…命】?」 フリル「たくさんの巡り合わせで、今の8人になったんだから、みんなきっと何か意味があるはずよ。何も出来ないなんてないわ」 ミドリ「フリル……」 フリル「まあ、偉大な御先祖様と比べてちゃっちいあたしが言っても説得力無いかもだけどね」 そう言ってケタケタと笑うフリルを見て、ミドリはそこでようやく落ち込んだ顔から笑顔を見せた。 ミドリ「ありがとう…ございます」 フリル「うんうん、クルスじゃないけど、ミドリは笑顔の方がやっぱりいいわよ」 ミドリ「クルス?」 フリル「ああ、クルスがね、あたしが笑った顔見つめてきて『何か用?』って聞いたらなんて言ったと思う?」 ミドリ「なんて言ったんですか?」 フリル「あのガキ、『ミドリの笑顔の方がいいな』って言ったのよ!あたしの顔ジロジロ見ながらなんてガキよ、ホント!」 フリルはそこで腹を立てて呆れながら乱暴に息を吐く。 ミドリはそれを聞いて少し頬を紅潮させている。 フリル「ま、そんなわけだから落ち込んでないで、クルスとレイナートが待ってる宿屋に行くわよ」 ミドリ「はい……ありがとうございます、フリル」 フリル「はいはい、あたしは別に心配してなかったけどねー」 そこで会話を終えた二人は宿屋へと向かった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |