『ドラゴンクエスト ─運命に抗う者達─』 ページ:6 商人は戦う職業ではない。 剣士や騎士のように優れた武器の扱いは出来ない。 闘士や武闘家のように肉体を闘気で強化して扱う事はできない。 魔法使いや僧侶のように呪文が得意なわけでもない。 では何故、サヤは戦えるのか。 商人の目利き。 一瞬にしてそれが商売や商品として扱えるかその価値はどれほどのものか、値段にしたり、流通に乗せるにはどうするべきか、というのを判断する為の観察眼と知識、計算、そして審美眼。 それらをフル活用する事で商人の目利きは完成する。 サヤはそれらを戦闘に活用すれば、傭兵や護衛を雇わずとも自分で戦えるのではないか、と考え、磨きに磨き抜いた『商人の目利き』 戦闘に応用されたそれは、神速とも呼べる速さで情報を処理し、演算し、叩き出す事で自分の戦闘能力で叩き出せる最高の結果を導き出せるものとなった。 サヤはブレスを吐こうとする魔物、力を溜めている魔物、走ってこようとしている魔物を瞬時に見極める。 ムチを放って力を溜めている魔物を捕まえる。 そして走ってきた魔物がサヤの後ろにいるレイナートを狙う直線上に立ち、その魔物の体を掴み、勢いに乗る。 そのまま、捕まえた魔物を地面に引きずり、走っていた魔物の動きも無理矢理向きを変えさせ、ブレスを吐いてきた魔物の攻撃の盾にする。 サヤはムチを離し、腰に掛けると跳躍し、算盤を構えて味方であるはずの魔物の炎ブレスを食らって慌てている魔物に算盤を叩きつけた。 サヤ「仲間割れですか♪大変ですねえ♪」 努めて明るく、努めて優しい笑顔を見せるが、その一連の流れからでは恐怖しか感じられなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |