『PERSONA ─INDEX ALTERNATIVE─』
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そこからの時間の流れは渉には長く感じた。
だが、嫌な気はしなかった。
たくさん飲食店があるが当たり外れを教えてもらい、穴場や近道なども教えてもらった。
そしていつの間にか渉は、暦翔の事をレキと呼び、ここに来てまだ一日も経っていないのに、心が少し軽くなったような気がした。
そして少し中央から離れた辺りで暦翔が指差す。
暦翔「ここから真っ直ぐ行けば愛善高校だよ」
渉「レキ、あれは?」
渉が指差した先には古いお屋敷があった。
町の雰囲気に似合わない洋館だった。
暦翔は渉の肩に手を置いてこう言った。
暦翔「ここはね、灰山っていう昔この町を発展させていった偉い人の家だよ、あんまり関わらない方がいい」
暦翔はそう言い終えると別の場所を案内したいと渉に言って離れさせようとする。
渉は洋館を眺める。
まるでホラー映画にも出てきそうな雰囲気だった。
そして三階の端っこの部屋に人影を見たような気がしたが、暦翔と魅奈に呼ばれて返事をし、また向き直ると人影は消えていた。
暦翔「ワタル?」
流石にボーッとしていた渉に不安を覚えたのか暦翔と魅奈が近くまで来ていた。
渉「いや、何でもないよ、レキ」
渉は見たことを暦翔と魅奈には言わず、二人と合流し、歩いていく。
長く時間を感じていた渉がふとスマホの時間を確認する。
時刻は気付けば18時となっていた、空も少し暗くなってきている。
暦翔「今日はここまでかな、ワタル」
渉「ああ、ごめん」
暦翔「別に君が謝ることじゃないだろ」
暦翔は苦笑し、ハッと気が付いたように問うてきた。
暦翔「そういえば、渉って愛善高校に転入するんだよね?」
渉「ああ、3月中に手続きを済ませてテストも大丈夫だったよ、4月7日から2年生に転入する」
暦翔「2年生なら僕と同じだよ」
魅奈「クラスが一緒なら兄様がいらっしゃいますがそういったお話は?」
渉「まだ聞かされてない。7日当日に職員室に行かなきゃいけないから」
暦翔「そうなのか…」
そしてしばらく沈黙が流れ、何か話さないといけないと思い、言葉を発しようとするが渉は勇気が出なかった。しかし、暦翔がふと口にする。
暦翔「7日の始業式に転入するのか…ワタル」
渉「ん?何?」
暦翔「明日も遊ばないか?」
そう口にして暦翔はスマホを取り出した。
渉がポカンとしていると魅奈もスマホを取り出して言った。
魅奈「番号を交換しましょう」
暦翔「予定組むなら連絡取らないと、だろ?」
渉は以前にこういった番号、アドレス、チャットアプリのID交換はしていたはずなのに、もう長い間していないかのように手間取った。
しかし、暦翔と魅奈は笑っていた。
渉にとってはそれがとても嬉しく感じた。
両親の死からポッカリ空いていたものが少し埋まった気がしたのだ。
暦翔「明日、君の家まで迎えに行くよ」
渉「わ、悪いよ」
魅奈「遠慮しないでください」
暦翔「君はこの町に来たばかりなんだ、場所が分からずに歩き回るよりは、君が必ずいる場所に僕らが行った方が早いし、確実だよ」
渉「そう…だよな、じゃあ、お願いするよ」
暦翔「じゃあ、また明日」
魅奈「失礼します」
暦翔が手を振り、魅奈は丁寧に会釈をする。
その二人の後ろ姿を見届けてから渉はロードバイクに跨がり、祖父母に電話を一つ入れ家路に着いた。
祖父母は優しく帰りを迎えてくれた。
祖母の幸子は心配していたが…。
信夫に案内され、居間に着くと夕食も用意されていた。
渉は素朴ながら温かい食事にまた心の隙間が埋まるのを感じた。
そして、祖父である信夫に出かけたことを聞かれた際、正直に伝えた。
渉「じいちゃん、ばあちゃん」
幸子「?」
信夫「どうした?」
渉「俺……友達が出来たんだ!明日もその二人と遊ぶんだよ、それでそれで…」
渉は『友達が出来た』と放ったその言葉に興奮を覚えていた。
今までの暗い表情からは窺えないほど明るい声で。
それを見て聞いて、幸子と信夫は涙ぐみながら「そうか、良かったな」と答えてくれた。
この祖父母とは何度か子供の頃に会っていたし、両親が亡くなった時も会っていた。
だが、両親が亡くなったばかりだった渉は心を閉ざして塞ぎ込んでいたのだ。
そんな渉から明るい言葉が聞けたのだ。
嬉しいなんてものではなかっただろう。
幸子「もし入り用なら言いなさいねぇ」
信夫「何でも好きに言ってくれて良いからな」
渉「!……ありがとう、じいちゃん、ばあちゃん」
渉は自分が食べた分の食器をシンクに片付け、2階の自室へと上がる。
自室にはテレビ、コタツ机、布団、タンスなど必要なものや前に住んでいた家で使っていたものが置いてあり、段ボール箱もいくつかあった。
渉はテキパキと片付けを済ませ、明日の準備をし、信夫に呼ばれて風呂に入った。
風呂上がりにスマホのチャットアプリを開いた。
暦翔からメッセージが届いていた為、それに返信しつつ、渉は疲れからかすぐに眠りへと落ちた。
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