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『PERSONA ─INDEX ALTERNATIVE─』
6月6日(金)
朝、玄治の悲鳴が聞こえて渉は目を覚ました。
体を起こしている玄治が魚のように口をパクパクさせている。
暦翔も驚いた顔をしていた。

渉は何事かと思っていると二人の視線は渉の真横に注がれていた。
何かと思い、渉が横を向くと銀色の髪が鼻と口元に触れる。
少しその髪から離れるように顔と体を引きながら下を覗き込むと、渉の横にナギサが一緒になって寝ていたのだ。

渉「えええぇぇぇ!!??」

まさか、本当に成功するとは。
渉はすぐさま体を起こした。
そう思っているとナギサが目を覚まし、目を擦りながら身を起こす。

そして辺りを見渡すと自分にとっては見たこともない風景に目を丸くしながら渉の顔を見ると、今までで一番だとも思えるほどの笑顔を渉に向けて、渉に抱きついた。

渉「な、ななな、ナギサ!?」

ナギサ「渉さん、私、出られました!渉さんのお陰です!」

渉「え、あ、うん…どういたしまして」

渉はナギサに抱きつかれて動けなくなっていた。
そんな中、暦翔はどうすればいいか分からなかった。

暦翔「いやいや、ワタル、その女の子どこから連れ込んだの!?」

玄治「おい、やべえぞ、このまま先生とかに見つかったらやべえって」

そうやって3人はナギサをどうしようかと迷っていると、阿莉愛、魅奈、結菜が来てしまった。

そして外側から呼び掛けても返事をしない三人に阿莉愛が、まだ寝てるの?、と呼び掛けながらテントの入り口を開いてしまった。
その瞬間に玄治と暦翔は声を揃えて言った。

暦翔・玄治「僕(俺)は関係ない!」

唖然としている阿莉愛、魅奈、結菜は、逃れようとする二人や見たこともない綺麗な少女と抱き合っている渉に何を言えばいいか分からず、固まっている。

そんな中、間藤先生が呼び掛けに来てしまった。

間藤「お前らー何してるんだ?」

暦翔「今、行きます!」

玄治、暦翔はすぐさまテントから飛び出した。
渉はナギサをゆっくり引き剥がすと、待ってて、と言うがナギサは全てが新鮮なのか出てきてしまう。

阿莉愛はすぐさまナギサの手を取り、渉も追い出して着替えをさせた。

阿莉愛「これでよし」

渉「え、それ、俺の…」

阿莉愛「渉が連れ込んだみたいだし、いいじゃない」

渉「え、あ、はい…」

ナギサは渉のジャージを着ていた。
元々着ていた服は折り畳んで渉のカバンに入れられたようだ。
ナギサはジャージの襟元をスンスンと嗅いで笑顔で話す。

ナギサ「本当ですね、渉さんの匂いがします」

笑顔で無邪気にそう答える彼女に渉はどうしたらいいか分からなかった。
阿莉愛はこのままテントで待ってて、とナギサに告げるとナギサは快く頷き、テントへと入っていった。
そして朝食後、テントの片付けの際にナギサにも手伝ってもらい、昼からは自由に解散だったため、渉、玄治、阿莉愛は用事のある暦翔と魅奈、新聞部に行く結菜と別れを告げて、ナギサに問うた。

阿莉愛「あなた、出られたの?」

ナギサ「えっと渉さんと出てきました」

玄治「あ、指輪してる。お前ダイブしたな」

渉「ご、ごめん」

ナギサ「でも出られるなんて知りもしませんでした。ありがとうございます、渉さん」

無邪気に彼女はそう笑う。
しかし、安心したのも束の間、最もなことを阿莉愛が口にする。

阿莉愛「ナギサ、帰る家は分かるの?」

ナギサ「あ……分かりません」

玄治「え、じゃあ、どこに泊まるんだ!?」

ナギサ「えっと、私、【ナイトメア】では一睡もしてなかったんで大丈夫ですよきっと」

ナギサは小さくガッツポーズをするが三人は心配でならない。

玄治「お、俺んちは無理だぞ!狭いし!」

阿莉愛「当たり前でしょう?…玄治みたいな変態の家にナギサは預けられないわ」

玄治「あぁん!?じゃあ、篠崎の家はどうなんだよ!」

玄治が指を指しつつそう言うと阿莉愛は急に俯きがちに話し出す。

阿莉愛「私の家は無理よ、沙梨愛がいないからお母さんも心が傷付いてるから…人なんて泊められないわ」

するとやはり、白羽の矢は立つものだ。

渉「分かった、なんとかじいちゃん、ばあちゃんを説得してみる」

色々と話し合った結果、ナギサは渉の家に行くことになった。

玄関の前で渉は立ち止まる。
この2ヶ月でも住み慣れたはずの我が家の扉がこんなに重たくなるとは思わなかったのだ。

渉は意を決して引き戸を開ける。
そして出迎えてくれた祖母にこう言った。

渉「話があるからじいちゃんも来てくれ」









渉は土下座をする。


渉「この子、記憶喪失で帰る家も分からないなんだ、だからうちで泊めてあげられないか」

そんな渉の横でナギサも同じように頭を下げて、お願いします、と頼み込む。
しかし、祖父は警察に行けばいいだろう、と言う。
渉はそれもそうだろうが、と思ったが何故かそれは良くない気がした。
本来はそうするのが一番だが渉はそれでも頼み込む。

幸子「渉がここまで必死ということは大きな訳があるみたいよ、なんとかなりませんか?」

しかし、祖父の信夫は渉とナギサの手を掴むとトラックの荷台に乗せ、警察署まで連れていってしまった。
警察署に着いてから奇妙なことが起こった。

警官が無機質に「分かりました、捜索の方を致しますのでしばらくはあなたの家で泊めてあげてください」とまるで事務的に機械的にそう答え、簡単に帰されてしまった。

渉は少し奇妙な雰囲気を感じ取ったが、信夫が話をして、その奇妙さを掻き消されてしまう。

信夫「渉の向かいの部屋が空き部屋だからちょうどいい、そこで寝てもらって構わん」

そして家に到着し、ナギサの部屋をそそくさと渉と祖母が掃除する。
祖母の幸子は「必要なものがあったら遠慮なく言ってね」とナギサに伝える。

ナギサは渉に笑顔で口にする。

ナギサ「渉さん、ありがとうございます」

渉「分からないこととかあったら聞いてくれ」

ナギサ「はい、これからもよろしくお願いします」

ナギサはそう言うと部屋のものを触り始めた。
渉は祖父に呼ばれ、お風呂に入ることにした。
そこでナギサは口にする。

ナギサ「渉さん、お風呂って何ですか?」

渉「ああ、お風呂は…ってえぇ!?」

渉はこの年頃の女の子は何故お風呂を知らないのか、と思った。
そしてその瞬間、自分の家に自分と祖父母以外に人がいるという状況とそれが年の近い女の子であるという状況を思い知る。

渉は一通りお風呂の事を説明すると、ナギサはいまいち分からないといった表情をする。

渉「あ、あとのことはばあちゃんに聞いてくれ!」

そう言うとお風呂はナギサに先に譲り、渉は家で筋トレを始めた。

渉(これは日課、日課の筋トレだ!)

そう思いつつ、ナギサが出てくるのを待った。
しばらくしてナギサが出てきた。

ナギサ「渉さん、お風呂ってとても気持ちがいいんですね」

渉「はぁ、ああ」

渉はため息をつき、自分も風呂に入った。
出てから冷蔵庫で飲み物を出そうとしていると祖母からお茶を二人分出すから待つように言われた。

そこで祖父が渉をテーブルの正面に座らせる。

信夫「渉、お前はまだ若い」

渉「え、ああ、うん、そうだね」

信夫「だからたくさん経験を積んでいくんだ」

渉「え、うん」

信夫「その上で一つ忠告しておく」

渉「はい」

信夫「ナギサちゃん、と言ったか若いからといって…そういうことはあまりしないようにな」

渉は祖父が何を言っているのかさっぱり分からなかったが、一言「気を付けるよ」とだけ答えた。

祖母からお茶を受け取り、ナギサの元まで運ぶが部屋にいなかった。
すると渉の部屋のドアが少し開いていたので入るとナギサが渉のベッドに腰かけていた。

渉が入ってきたのに気付くと、ふふっ、と頬笑む。
渉はお茶をテーブルの上に置き、ナギサに手渡す。

ナギサ「あったかい…」

渉「なあ、ナギサ」

ナギサ「なんですか?」

渉「いきなり【ナイトメア】から飛び出して不安はないか?」

ナギサ「そうですね、不安はあります……でも渉さんや阿莉愛さん達がいらっしゃるので大丈夫です」

彼女はそう言ってお茶を少し飲む。
渉もお茶に口をつける。

渉「これから色々あるだろうけど、これからもよろしく、ナギサ」

ナギサ「はい!」

ナギサはそうやって強く答えた。
渉はナギサと部屋の前で別れてゆっくりと眠りについた。


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あきゅろす。
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