『PERSONA ─INDEX ALTERNATIVE─』
6月5日(木)
朝からゴミ拾いをさせられている渉、玄治、阿莉愛、暦翔、魅奈。
林間学校は、学校の方針のせいか、1年と2年の合同で六人一組の班を作ることになった。
渉、玄治、暦翔、阿莉愛、魅奈に加えてもう一人、1年生の鈴木結菜(すずきゆな)がいた。
彼女は新聞部に所属しており、学校の噂話を大胆不敵にも調査する物好きである。
そんな結菜の目的はただ一つ『氷の女王』と呼ばれていた篠崎阿莉愛と仲良くなり、愛善高校設立から初めての秀才である黒鐘暦翔と仲良くなった男、瀬上渉の調査だった。
結菜「というわけで〜瀬上先輩、ズバリ篠崎先輩を落としたテクニックは?」
渉「べ、別に普通に挨拶とかしてただけだよ、あとはテストの話とか」
結菜「えぇ〜?本当にそれだけですか〜」
結菜はボイスレコーダーやら手帳やら本来林間学校には必要のないものまで持ち込んで来ていた。
結菜「じゃ〜黒鐘先輩とはどうやって仲良くなったんですか?」
渉「え、普通に遊んでたりしてたら仲良くなったよ」
結菜「にゃ〜!?そんな普通のことでこの両名と知り合えるなんてどんな豪運ですか〜!?」
渉は結菜のインタビューに真剣に答えるが、結菜はそんなわけはないと頭を抱える。
魅奈が渉に耳打ちする。
魅奈「あの子の事は無視していいですよ」
渉「え、でも可哀想じゃんか」
暦翔「鈴木結菜ちゃんは入学前から話題になっていた子だからね、知っている限りでは知り合ってもそんなに良いことないよ」
渉「二人とも、身も蓋もないね…」
そんな感じでインタビューに答えたり、ゴミ拾いをせっせとしていると昼食の時間となった。
昼食は班毎にカレーを作ることになっていた。
暦翔「ワタル、料理は出来るの?」
渉「嗜む程度に…」
阿莉愛「私は片親だから休日に料理しているから出来る方だと思うわ」
魅奈「私も問題ありません」
玄治「俺も母さんと二人暮らしだから余裕だぜ!」
そんな風に堂々たるメンツに対して暦翔はため息をついた。
暦翔「ワタル、野菜切ってくれるかい?」
渉「ああ」
阿莉愛「玄治、何してるの?」
玄治「え、カレー作るんだから茶色を出すために味噌とソース鍋にぶちこもうと思ってな」
魅奈「え」
玄治「あぁ!?材料に味噌とソース無えじゃねえか!?こうなったらじゃがいもの皮を煮込んで…」
暦翔「玄治、全員分の水を貰ってきてくれ」
玄治「お、ソースとかも貰えるかな?」
渉「とりあえず水と食器を貰ってきてくれ、それだけでいい頼んだ」
玄治「分かったー」
玄治はそう答えてその場から立ち去る。
阿莉愛「壊滅的センスの持ち主かもしれないわ」
渉「野菜は切れたし、材料炒めて煮込むだけだよ」
暦翔「ここからは篠崎さんと魅奈にお任せするよ、僕と渉は玄治が余計なことをしないように見張る」
魅奈「任されました!」
そして手分けして役割をこなしていく。
魅奈と阿莉愛はそのままカレーを作り、渉は結菜に捕まり、インタビューの続きをさせられ、暦翔は玄治が余計なことをしないように監視に努めた。
そして無事にカレーは出来上がり、食事を済ませた。
玄治は終始言い続けた。
玄治「今度料理する機会あったら任せてくれよ、本物の料理ってやつを見せてやるぜ」
と。
渉と阿莉愛は今後家庭科の調理実習では玄治と組まないようにしようと決めた。
昼食後、テントを張る作業になった。
初めての作業だったが暦翔の的確な指示により、ふざける玄治がいてもどこよりもテント設営が終わった。
男子と女子双方とも無事に終わる。
テントを張り終えて班のリーダーである暦翔は先生に報告しに向かい、魅奈と結菜は別の班の1年生の仲間と話をしていた。
渉、玄治、阿莉愛はふとナギサの話をする。
阿莉愛「そういえばナギサはどこから【ナイトメア】へ来ているの?」
玄治「ああ、それ俺も思ってたんだよなぁ、記憶喪失らしいけど家とか分かってんのか?」
渉「そういえば知らないな」
渉は彼女と出会って2ヶ月以上経つのにナギサのことを何も知らないことに気付いた。
阿莉愛「まさか、【ナイトメア】でだけ会える人間?」
玄治「お、おいやめろって」
阿莉愛「あら?玄治はオバケとか怖いの?」
玄治「うっせえな!わりぃかよ!?」
阿莉愛「悪くないわ、でもその不良みたいな見た目でねぇ〜」
玄治「あぁん!?」
二人がそんな会話をしている間に渉はナギサを【ナイトメア】から出すことを決意していた。
夕食となり、先生のつまらない話を聞き流しながら食事をしていると結菜は未だに渉へのインタビューを続けている。
魅奈「結菜ちゃん、食事中くらい黙って」
結菜「う〜ん、瀬上先輩について何にも分かんないや、あそうだ、瀬上先輩はどうしてこの町に来たんですか?」
渉「え…」
それまで真面目に答え続けていた渉も固まってしまう。
結菜「何か家庭の事情とかですか?」
渉「まあ……そんなところ…かな」
渉は食事の手すら止めてしまった。
結菜が渉のその反応に食らい付くように親に関しての質問を多量にぶつけてきた。
阿莉愛は詳しく聞いたことはないが渉の様子から話しにくいものなのだと理解する。
渉が答えられずにいると結菜は何を勘違いしたのか検討違いの事を話し出す。
結菜「もしかして〜ご両親が犯罪を犯したとか〜?」
魅奈「結菜ちゃん、いい加減にして!」
魅奈が結菜を怒鳴る。
結菜はそれにビクッと反応し、宥めようとするが口論となってしまった。
魅奈「相手の気持ちも考えて行動するのがどうして出来ないの!?」
結菜「だって気になるじゃ〜ん」
魅奈「だからって相手の心にヅカヅカと踏み込むなんて!」
終いには先生まで来てしまい、暦翔が何とかその場を収めた。
そしてそれぞれ男子用のテント、女子用のテントへと行く。
暦翔「ワタル、大丈夫かい?」
渉「え、ああ、大丈夫だよ」
玄治「つーか、あの鈴木結菜だっけか?渉に親の話は良くねえって」
暦翔「渉だけじゃない、玄治や篠崎さんだって親のことで色々と悩んでいるはずなのにあまりにも無神経すぎる」
玄治「いやまあ、俺はいいんだけど渉は良くねえよな」
と、男3人がテントで話をしていると突然テントの入り口が開いた。
そして結菜が顔を覗かせる。
結菜「ふっふーん、何か面白そうなネタですねぇ」
玄治「帰れ!」
玄治が結菜を追い出す。
そして疲れた玄治は、とっとと寝ようぜ、と言ってごろんと横になる。
暦翔「そうだね、おやすみ、二人とも」
玄治「おう、おやすみ」
渉「おやすみ」
渉は自分の右手を確認する。
ナギサから貰った指輪を付けている。
そして今日のうちに決心したことを実行しようと思った。
【ナイトメア】にてナギサを見つけた渉はナギサにこちらの世界に来られないかという話をするが、ナギサは戸惑いながら答える。
ナギサ「私は【ナイトメア】から出たことがないので出られるか分かりません」
と不安げに言う。
渉「じゃあ、ずっとここに?」
ナギサ「…………はい」
長い沈黙のあと、一言そう答える。
渉はナギサの手を取り、ナギサに向かって口にした。
渉「俺と一緒に目が覚めることを念じてみよう」
と言う。
ナギサ「え、ですが…」
ナギサは不安だった。
そんな単純なことで問題が解決するのか?と思っていたからだ。
渉「出たことがないから分からないだけなんだろ?…だったら出てみようとしてみたら出られるかもしれない!」
そう言った渉にナギサは微笑み、渉に答える。
ナギサ「ではやってみます」
と言って二人は手を繋いだまま、ここから出るんだ、と強く念じて目を閉じた。
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