文献 零 主様との時間が私の幸せだった。 毎朝早起きをし、朝ごはんを作り出来次第、主様を起こしに行き二人で朝ごはんをたべる。そして、主様が剣道場に行くのを見送り、洗濯物や掃除をし一日を過ごす。暇が出来れば市に行き、その日の買い出しをして… 夜帰って来た主様のために夜ご飯を作りつつ、風呂も沸かす。 疲れて帰って来た主様を風呂に通し、その間に夜ご飯を仕上げ、食卓に置く。 そしてまた、二人で食べて、風呂に入り寝る 毎日がそれの繰り返しで、目新しいものなんて中々なかったが、それでも幸に溢れた日常だった__ 雨がザーザー降っている 「主様を、主様を返せ!その汚い手で主様に触れるでないっ!!」 新政府軍だか、なんだか知らないがそれに属しているという者達が主様を拘束する。 まるで罪人のように… 「哉太、落ち着け。俺は大丈夫だ、すぐ帰ってくる」 主様は、何時ものように晴天の空のような笑顔を私に向けているのだろう。 けれど、雨やら涙やらでハッキリと見えない 私たちが何をした? ただ、日々を平凡に静かに暮らしていただけだ。なのに何故? 「すみ、ません。主様、私は貴方の命令に背きまする」 懐から出した得物で、新政府軍の人たちを切って行く。 願いはただ、貴方と生きたい。それだけの…いや、私にとっては最重要なことのために私は赤を散らす。 「哉太、やめろ!やめてくれっ…!!」 私の手が他人の血で染まると並行し、私の身体は自らの血で染まる。奴らが投げた得物が刺さり痛い、けれど、止まる訳にはいかないのだ。 グチュリ 音がした 不穏な音 音がしたほうを見れば__ 「ぬ、し…様…」 グチュリ その音を最後に私_服部哉太_の生涯は幕を閉じたのだ… [*前へ][次へ#] |