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HQ(long)@
game 6 *


side 宮 侑




あの1点は絶対に決まると確信していた。


我慢して我慢して…

ようやく巡ってきた最高の
タイミングでのセッティング。


治も俺と全く同じ感覚だったからこそあの
タイミングで助走に入ってきたのだから。




ーーー なのに ーーー





「なんであそこ居んねん」

「…俺らと同じ読みやったんちゃうか」


烏野の影山と日向にしっかりマーク
されていて見事にシャットを食らった。


「あいつらが読むなんて芸当出来ると
思うか?あんなんどうせ勘か偶然やろ」

「勘とか偶々やとしてもあそこで
それが出来てる事がスゴいやん」

「いいやっ俺は絶対に認めへんからなっ!」

「…めんどくさ」


俺は変な意地になって治に言い返すも
あいつも俺の本心が分かっているようで
それ以上は何も言わずただ黙々と着替え
を済ませていった。

着替えを終え荷物を持ったと同時に治が俺
の方に視線を向けてきたので首を傾げる。


「…なぁ侑。俺ら大事なこと忘れてへん?」

「何や?何か約束でもして………たな。」

「せやろ。」


忘れていた。

試合の頭ぐらいまではしっかり覚えていた
し寧ろそれがモチベーションにもなって
いたのに今となっては会うのも気まずい。


「言い出したのは俺やしそこは
きっちりケジメつけんとあかんよな」

「…行くか」

「あぁ」


近くに居た選手に声を掛け治と2人揃って
烏野の控え室の方へ向かって行った。





「侑。中入って行くんか?」

「さすがに俺もそこまで神経図太ないで」

「何でこういう時だけ猫被んねん。
いつもみたいに図々しく入って行けや」

「あ"ぁ?誰が図々しいねん。
お前がいっつもチンタラしとるから俺が
痺れ切らして先に行きよるだけやろが!」

「俺は考えてから行動しとるだけやろ。お前
みたいに考えなしなヤツと一緒にすんなや」


烏野の選手達はまだ中に居るようで声が
聞こえるのだが試合を終えて間も無いのに
堂々と顔を合わせるのも何処か気まずく
中に入るのを躊躇ってしまう。

すると俺たちが言い争いをしている間に
呼び出したかった当人が此方に向かって
来ていたのだが俺たちは気が付かず。


「えっ…宮さん?」

「「…あ。」」


急な対面で互いに驚き微妙な空気が一瞬
流れたのだがすぐ我に返った俺はここに
来た目的を果たす為意を決して口を開く。


「少しだけ時間もろてええ?名前ちゃん」

「ぁ…はい」


治がここでは目立つからと少し場所を移動
してようやく本題を切り出すことにした。





「「舐めたこと言うてホンマに悪かった」」

「えっ!?あっあのっ頭上げて下さい!
別に本当に謝って欲しかったわけじゃ…」

「約束は約束やからな。そこは
きっちりしとかんと俺の気が済まん」


2人揃って頭を下げ謝ると彼女は慌てて
いてそれに加えて治があっと声を上げる。


「侑。謝るだけやなくて土下座も
する言うてなかったか?」

「おおっそうやった!忘れるとこやったわ」

「いやいやいやっホントにもういいです!」


俺たちが言い出したことなのでそれを実行
しようとすると名前ちゃんが必死になって
止めてきた為渋々土下座は諦める。

顔を上げると彼女は安心したように息を
吐き笑みを浮かべて俺たちに視線を向けて
きたので2人して思わず眼を見開いた。


「私こそ偉そうなこと言っちゃってごめん
なさい。お二人のコンビプレー本当に凄
かったです。個々の能力もかなり高くて
目が離せない素晴らしい試合でした」

「っ…いや…それほどでも…なぁ治///?」

「…///」


初めて俺たちに向けてくれた彼女の笑顔は
心臓を鷲掴みにされる程魅力的でそれに
加え自分にも非があると謝ることのできる
心の広さと清らかさ。

こんな素晴らしい女性を今まで出会った
ことがなく俺らは完全に彼女に嵌っている。

自覚したところで早速頭を切り替え俺は
彼女と繋がりを持ちたくて口を開いた。


「なぁ。負けといてあれなんやけど
よかったら連絡先教え…」


言い終えるまであと少しというところ
だったが最後の言葉はかき消された。


「「名前さん(先輩)!!!」」

「「はぃ?」」



俺の大事な話しの途中に割り込んで
きた声の主たちは日向と影山で。


「あれ?2人とも休んでてって言ったのに」

「俺は全然元気なんで大丈夫です!」

「こいつより俺の方が全然元気です」

「お前さっきまで寝てたじゃねーかっ!!」

「寝てねぇ。考えごとしてただけだ」

「お前がするわけねーじゃんよっ!!」

「…2人とも元気有り余ってるみたいね」


1年コンビを呆れながら
宥めている名前ちゃん。

またこの2人に俺らの邪魔をされるのかと
思うと沸々怒りが込み上げてきて不機嫌
そのままに言葉を発した。


「何やねん自分ら。俺ら 名前ちゃん
と大事な話ししとんのに」

「ここはもうちょい空気読むとこやで?」


2人して鋭い視線を1年コンビに向けると
日向の方は変な声を出して怯えていたが
影山は飄々としていてしかも俺たちに
生意気にも言い返してくる。


「俺らは名前先輩を手伝いに来ただけ
ですけど。でも来て正解だったみたいです」

「「どういう意味やそれ。」」

「先輩。もうすぐ帰るみたいなので
早く買いに行きますよ」

「えっホント?あっ宮さん
すみませんっ急ぐので失礼します!」

「「ええっ!?!?」

「しっ失礼しますっ!!」


影山に半ば引き摺られるように自販機の
方へ連れて行かれる名前ちゃんを呆気に
取られながら見送ってしまった。


「あんのくそガキ〜!
次会った時覚えとれよ!!」

「侑 あいつに舐められとんのちゃうか?」

「んなわけあるか!俺の邪魔したこと
絶対後悔させたんねん!!」

「俺“ら”な。」


影山に名前ちゃんを取られてしまい
腹立たしさから声を荒げていると俺たちを
探しに来たチームメイトに見つかり呆気なく
連れ戻されてしまった。

せっかく理想の女性を見つけたのに
今度はいつ出逢えるのか分からない為
監督を見つけると直ぐさま烏野との
練習試合を頼みに行く俺と治だった。




おまけ



「監督!烏野と練習試合させて下さい!!」

「お願いします」


もの凄い形相で監督に詰め寄る侑と一歩
引いてはいるが強い視線で懇願する治。


「なっ何やねんお前ら!試合に敗けて悔し
いのは分かるけどな。そんな簡単に練習
試合なんか組めるわけないやろ。しかも
相手は宮城県やで?遠過ぎるし無理や」

「そんなこと言わんとお願いします!
どうしてもあのチームとしたいんです!!」

「俺らの人生掛かっとんです」

「は?人生?どういうことや?」


2人の勢いに圧倒されてしまっている監督
だったがそこに割って入ったのは怒気を
含んだ落ち着いた主将の声。


「おい。そんなのは俺らの引退式終わって
からにしてくれるか?それともお前らには
もう3年はジャマになっとんのか?」

「「っ!?」」


双子揃って背筋を伸ばし冷や汗を流しなが
ら北の棘のある言葉を耳にしている。


「「…すんませんでした」」


素直に謝った双子はその後は大人しく帰路
に着き3年生の引退式を行ったのだった。





end






あとがき


影山に遣り込められる侑。稲荷崎はキャラ
が濃くてもっと色々絡めたいんですけど
何せ大阪と宮城なもので…
頭を悩ませたいと思います(笑)


ここまでお付き合いいただき
ありがとうございました☆







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あきゅろす。
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