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HQ(long)@
遠征サバイバル。1



『遠征ですかっ!?』


インターハイの県予選が終わって数週間。

練習後滝田先生から県外遠征の話し
をされ選手全員が沸き立った。

先生の知り合いの方から声を掛けて貰った
らしく私たちもチームのレベルアップには
もってこいだとモチベーションが上がる。


「場所は静岡県で泊まりにはなるんだけど
県外からの強豪チームも来るって聞いてる
からいい刺激になると思うわ」

「…静岡ってどこ?」

「まどか。地理ぐらい把握しときなさいよ」

「まどかちゃん勉強苦手だもんね〜」


一年生たちは笑い声が聞こえ和やかムード。


「名前。男子の方は?」

「遠征には被らないから大丈夫だよ。
県外の強いチームと試合出来るなんて
機会あんまりないから楽しみだねっ!」

「私は今から緊張するよぉ」


望から男子との兼ね合いを聞かれ日程は
問題ないと告げると隣の凛子ちゃんは
言葉通りもう既に顔が強張っている。

遠征の日が待ち遠しく毎日の練習にも
熱が入る女子バレー部であった。





前日から静岡に泊まり迎えた当日の朝。


「何ニヤニヤしてんのよー」


宿泊先から歩いて目的の体育館まで
向かっている間に望から指摘された。


「ニヤニヤなんてしてないからっ///」

「でも彼氏も来るんでしょ今日。東京と
宮城に住んでるのに同じ日に同じコートで
練習試合なんてあんた達凄過ぎない?
まさか仕組んでるんじゃないでしょうね?」

「出来るわけないでしょう///!?」


そう。実は今日の練習試合で使う
体育館にまさかの梟谷も来るのだ。


遠征が決まったその日の夜のこと。


「女バレなんだけど連休で静岡へ遠征に
行くことになったのっ。もちろん私も
参加するよ」

『へぇ奇遇だな。俺たちもその日は静岡に
遠征だよ。交流試合としてウチは毎年そこ
に行ってるんだけどね』

「同じ静岡なの?すごい偶然だね!
偶然ついでにまさか会えたりしてっ」

『そうなれば嬉しいけどさすがに無理あるよ。男子の方なら確率あるけど女子だろ?』

「それは分かってるけど…それでも京治に
ひと目でも会えたらなって思っただけっ///」

『っ//////!?!?』


いつものようにスマホで会話しながら甘い
時間を過ごしていたのだがこの後更に
2人にとって思い掛けないことが起こる。


『そんなかわいいこと言わないでくれる?
自分の試合よりも名前の方に行きたく
なるから…///』

「それは絶対ダメだからねっ!?私が
梟谷の監督やみんなに怒られちゃう!」

『冗談だよ。行きたいのは本気だけどね。
…で?どこの高校で試合するの?』

「今回は学校じゃなくて県か市が運営して
る体育館だって。△△体育館って言ってた」

『…え…?』

「…ん…?」

『…そう言えば去年隣の2コートは
女子が試合してたような気が…』

「……うそでしょう?」


この時まさかの同じ体育館だった
ことが判明した瞬間であった。




主催である静岡県の高校が男女ともに強豪で
毎年この時期にコートが4面も取れる体育館を無料で貸し出してもらえるらしく県外の
チームを呼んで男女半々で使用し交流試合
を行っているようなのだ。


「うちを呼んでくれたっていうのがまさか
だよね。先生の顔の広さにはビックリだよ」

「ホント。先生には感謝だねー」

「お返しじゃないけど私たちはこの遠征で
色んなこと学んで帰らなきゃだね!」


先生の努力を無駄にしないようにと望 凛子
ちゃん 私の三年生組は今から始まる交流試
合に向けて更に気合いを入れ直していた。



「うわぁおっき〜い!さすが都会だねっ!」

「いや。まどか ここは静岡だから」

「由莉ちゃん。何気に失礼だからぁ」


相変わらずどこかずれた会話をしている
一年生のレギュラー3人。


「ここ迷子になりそうだよぉ。
何か凄いところ来たような気がする…」

「男女一緒ってところがスゴイよね。こんな
場所でプレー出来るなんて大会みたい」


大きな体育館を目の当たりにして若干緊張
感を漂わせている凛子ちゃんと望。

私はというとこんないい環境で練習試合が たくさん出来る機会なんて滅多にないので
ワクワクしてきた。


館内へ入ると主催チームの方が誘導して
くれて荷物を観客席へ置き早速アップを
とる為コートへと降りて行く。


「あっ!名前さーんっ!!
おはようございます!!」


私を呼び笑顔で近づいてくるのは
京治の後輩の三浦くん。

一年生ながら梟谷のエースを任されていて
今後木兎さん以上にもなれると言われて
いる逸材である。


「おはようっ今日も元気そうだね!スパイク
のコース打ちが上手くなってるって京治が
褒めてたよ。時間があれば見てみたいな」

「えっ!?ほんとですか!?!?でも赤葦
さんから言われたこと1度もないっすけど」

「口に出さないだけ。京治の言葉に嘘
はないから自信持って打てばいいよ」

「はいっ!…やば…俺今日のスパイク
全部決められる気がする…」

「逆に力まないようにね」


感動に浸っている三浦くんを苦笑しながら
眺めていると私が一番会いたかった人が
視界に入り無意識にも笑みが溢れた。


「三浦。何やってんだお前」

「おはよう京治っ」

「名前おはよう。こいつ迷惑掛けてた?」

「大丈夫。ただ感動してただけだから」

「?」


クスクス笑う私に京治は疑問符を頭に
浮かべながらもそれ以上三浦くんに
関して特には気にする様子もなく。

それよりも今は機嫌が良いようで表情も
明るく薄っすらだが笑みも浮かんでいる。


「まさかここで会えるとは思ってなかった
から驚いたよ。やっぱり何か持ってるの
かもね俺たちは」

「ほんとだよねっ。だってお父さん
たちにも話したけどビックリしてたもの。
京治にもケガに気をつけて頑張ってって
言ってたよ」

「自分の親に言われるより有難いな」

「またそんなこと言って。
おばさんに叱言言われるよ?」


久しぶりの再会に話しは尽きないのだが
試合に向けてそろそろお互いアップを行う
為名残り惜しくも自分のチームへ戻ら
なければならない。


「それじゃあ試合頑張ってね。観られたら
京治の試合観るから楽しみにしとくっ」

「俺も名前のプレーを間近で観られる
機会なんて滅多にないから楽しみだよ。
いいパフォーマンス期待してるからね」

「京治に言われたら緊張するよぉ。でも
下手なプレー見せないように頑張るからっ」


試合への意気込みを伝え彼に手を軽く振り
チームへと戻ろうと反転した時だった。


「ほらな!やっぱり名前ちゃんやんっ!!
さっきから似てるなぁ思ててん!」

「俺は違うなんてひとことも言うてない。
名前ちゃん久しぶりやな。練習着なんか
着てどないしてん。選手みたいやで?」

「…侑さんと治さん?」


明るく関西弁で話してくる宮兄弟の登場
に驚き思わず立ち止まってしまった。


「監督に烏野と練習試合したいって何度も
言うてるのに場所が遠過ぎて出来んって言わ
れるしインハイの時は会えんかったやろ?」

「おん。烏野は出て来ぉへんかったしな。
そないなことよりもや。名前ちゃん
もしかして今日は試合出る感じなん?」

「あ…えぇ…まぁ…」


2人の勢いに押されながらこの場をどう
乗り切ろうか悩んでいるとすかさず京治
からの助けが入る。


「名前。チームの人たち待ってるん
じゃない?こっち観てるみたいだけど」

「あっホントだ!2人とも失礼します!
京治ありがとねっ」

「「はっ!?ちょっと待…」」


お礼を言いながら京治を見遣ると軽く手を
挙げて応えてくれ小走りでチームのもとへ
戻って行った。

せっかく京治に逢えて気分も上がっていた
私だったのだが宮兄弟の出現でこの遠征が
平穏無事に済むことはおそらくないだろう。

一気に気分も落ち込み大きな溜め息を吐い
てしまったのだがこれからゲームがある為
チームに迷惑を掛けないよう平常心を保ち
今は試合にだけ集中しようと心に決めた。




「相変わらず名前の彼氏カッコいいわね!
しかもあんたの周りに集まる男は顔面
偏差値高すぎない?」

「名前ちゃんホント顔広いよねぇ」


チームに戻ると望から羨ましがられ 凛子
ちゃんからは渇望の眼差しを向けられて。


「名前先輩っ!あれって稲荷崎高校の
宮さんですよねっ!?知り合いだったん
ですかっ!?私に紹介して下さいっ!!」

「影山先輩はどうしたのまったく…
まどかのイケメン好きとミーハーなとこ
は変わらないよね…って絵莉?」

「双子の宮さん…かっこいい…///」

「…月島先輩はどうした?」


一年の間でひとり冷静に対処している
由莉奈に拍手を送りたくなり。

まだ試合は始まっていないのだが
もう既に疲れてきた私であった。


しかしこの時。

睨むようにウチのチームへ視線を
向けている選手がいたことに私は
気付けていなかった。



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あとがき


あいあいさまからリクをいただいて
赤葦vs宮兄弟の直接対決を書いてみようと。

2校は全国常連ですが個人的な繋がりは無さ
そうなので練習試合という形にしました。

が。何しろ東京 兵庫 宮城 と余りにも距離
があり過ぎるので悩んだ末に静岡集合と
いう無理矢理な設定になってしまい突っ込
み所満載です(笑)


ここまでご覧いただき
ありがとうございました。
次回もお付き合いくださいませ☆









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