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HQ(long)@
ゆく年くる年 3


元日。


「わぁ。人がいっぱいだねぇ」

「名前。逸れないように
しっかり掴まってて」


現在朝の9時過ぎにもかかわらず近所にある
神社は屋台も出て大勢の人で賑わっている。

私たちが出掛ける頃にようやく親たちが
起き出し新年の挨拶をしてから家を出た。


「とりあえずお詣りしに行こうか」

「後でおみくじも引きたいっ」


京治にしっかりと手を握られお詣りの列へ
並ぶとしばらくして順番が回ってきて
同時に賽銭箱へお金を投げ入れしっかり
今年の抱負と願いごとをした。


「名前は何をお願いしたの?」

「ん?みんなの健康と現状維持!」

「健康はわかるけど現状維持ってなに」


私の願いごとに不思議そうな顔をしている
京治が面白くなり思わず笑ってしまった
のだがきちんと説明をすると。


「去年は私にとって良いことがあり過ぎた
1年だったから今年は去年みたいにって
欲張らずに今を持続出来ればいいかなって」

「欲がないよね名前は」

「なに言ってるの。私は欲張りだよ?
バレーでもやりたい事が沢山あるし
京治ともっと一緒に居たいと思ってるしね」


去年が奇跡的な出来事が多すぎて逆に今年
は良くないことがあるのではと不安になる。

それに今が幸せだからこそそれが続いて
欲しいと願うことは普通だと思う。


「じゃあ京治のお願いは?」

「俺は願いごとしてないよ」

「…どういうこと?」


微笑みながらお願いをしていないという
京治に私は首を傾げてしまう。


「春高で優勝してきますっていう決意と
去年は名前に出逢わせてくれてありがとう
ございましたっていうお礼を言ったから」

「っ///」


京治もこうして私たち2人が今一緒に居ら
れることに喜びを感じてくれているのだ
と分かり嬉しくなった。


「名前は春高で優勝したいって
願わなかったの?」

「だってそれは願うことじゃなくて叶える
ものでしょう?だから京治もさっき決意
表明してきたんじゃないの?」

「まぁね。こればっかりは自分で掴みに
いかないと叶わないと思うし」


チームは違えど思いは同じで顔を見合
わせ笑い合うとおみくじを引き出店を
軽く回ってから家へと戻って行った。


おばさん手作りのおせちをご馳走になり
荷物を纏め車に詰め込むと一家総出で
見送りをしてくれた。


「次は東京体育館でね」

「対戦出来るように勝ち上がってきてよ」

「それはお互いさまでしょう?
木兎さんには頑張ってもらわないと!」

「ホントあの人は気分次第だからね…」


木兎さんに苦労させられている京治は名前
が出ただけで疲れたように溜め息を吐き
それを見た私は同情するように苦笑する。

車に乗り込み出発すると姿が見えなくなる
まで手を振り続け一瞬昔の記憶が頭を過る。

あの時は涙を流しながら寂しい
思いでいっぱいだったが今は違い
またすぐに会えることが分かっている
から涙もなく苦しくもない。

年月とともに成長した自分を実感
しながらあの頃とずいぶん変化した外の
風景をのんびり車から眺めていた。






オマケ



「あっ!私“吉”だって。京治は?」

「…俺も名前と一緒だ」


おみくじは2人揃って“吉”

良すぎず悪すぎずということで
今の私にはちょうど良い感じだ。


「“結婚・恋愛”は“良縁あり”だって。
というか縁はもうすでにあるけどね」

「俺は…」


まずまず良い内容に笑いながら京治に
話しを振ると彼はおみくじを凝視
しながら何故か固まっている。


「京治?どうかした?」


不審に思い京治の手元にあるおみくじを
覗き込むと私も彼と同じように一瞬
固まってしまった。


「……これって」

「…ねぇ名前。宮城に帰るの
止めない?俺年明け早々不安なんだけど…」

「…それは無理だね…」


京治のおみくじの“結婚・恋愛”の内容が
“良縁も障害多し”と書いていた。

口には出さないが2人して“当たりそうだ”
と思いながらも“当たらないでくれ”と
心の中で切に願いある意味一番神頼みを
したい出来事であった。



end





あとがき


最後はおみくじで落としましたが
おそらくよく当たることでしょう(笑)
赤葦の苦労は絶えません。頑張れ!


ここまでお付き合いいただき
ありがとうございました☆



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あきゅろす。
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