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HQ(long)@
ゆく年くる年 1


冬休みに入り今年も残りわずかとなった。

しかし年明けすぐに春高が開幕する為
朝から晩まで練習一色で正月どころの
騒ぎではない。


「えっ?元旦は休みなんですか!?」


練習後に武田先生から言われた言葉に
いち早く大地さんが反応しそれから他の
選手たちもザワザワしだした。

それもそのはずで選手たちは今
休みよりもとにかく大会に向けて
練習をしたいのだから。


「練習したいのは分かりますが元日は
1年の始まりです。挨拶まわりや親族との
交流もきちんとしておかないと良い年を
迎えられませんよ?試合前最後の休み
なのでしっかりと身体を休ませて下さい」


先生の言っている事も最もなうえ烏養
コーチもどちらにしろ1日は練習に出られ
ないと話していた為納得しているかは
別として全員が『はい』と返事を返した。





「名前さんは親戚の家とか行きますか?」

「んーどうだろうなぁ。休みが1日しか
ないから行かないかも…おじいちゃん
とか親戚はみんな東京だしね」


日向から年末年始の予定を聞かれ元々両親
の地元は東京なので祖父母や親戚もそっち
にいて集まりたいのは山々だが往復だけ
でも時間が掛かり長居も出来ず1日の休み
では運転手であるお父さんも大変だろう。


「じゃあ赤葦さんとも会えないんですね」

「何言ってるの。京治こそすぐに春高で
会えるんだからそれこそ問題ないわ。
しかも親戚とかに会ってたら京治に会う
時間があるかどうかも分からないし」

「あ。そっか」


京治の場合はお正月に会えなくてもその
4日後には確実に会うことが出来るので
だからこそ無理してまで東京に行く必要
はないと思って割り切れていた。


「じゃあ1日は一緒に初詣行きましょう!」

「それいいね。親に休みを伝えて
予定が入らなければ行こうか!」

「やったー!!」


両親ともに年末年始は仕事も休みなので
家には居るが私が1日しか休みがなければ
特にどこかに行くこともなく家で過ごす
だろうと想定して日向と話しを進めていた。




「はぃ?」


明日は大晦日。

練習は何時もより早めに切り上げると
言っていたので夜は家族でゆっくりと
過ごせると考えていたがそれも母親の
一言で全く違うものと化した。


「だ・か・ら。明日練習が終わったら
すぐ帰って来なさいよ。お父さんの家には
行ったけどお母さんの家にはしばらく
行ってないでしょう?おじいちゃんたちも
あなたの顔が見たいって言ってるの」

「じゃあおじいちゃん家に泊まるのね」

「日帰りじゃなければお父さんの負担も
減るし新年ぐらいは顔出さないと。
去年はバタバタしてて行けなかったから」

「わかった。じゃあ泊まりの準備しとく」


確かに去年はお父さんの仕事が落ち着かず
お正月に東京に行くことが出来なくて
お母さん方のおじいちゃんおばあちゃん
には会えていなかった為素直にうれしい。

翌日日向にも事情を説明し初詣の話しを
申し訳ないが断り今年最後の練習に集中
しようと気合いをいれ練習納めをすると
急いで部活から帰ってきて支度を済ませ
車に乗り込み東京へ向かって出発した。






side赤葦



大晦日。

朝から困っているおばあちゃんを助けた
ことがきっかけで部活では信頼していた
先輩に不信感を抱いたりと俺にとっては
散々な1日となっていた。

大晦日ということで練習も何時もより
早めに切り上げ重い足取りで家に帰って
いるのだが今何とか気持ちを持ち堪えて
いられるのは名前とのLINE。

昨日の夜に東京に来ることを聞いたのだが
明日はおじいさんたちや親戚への挨拶回り
で忙しいようで難しいかもしれないがもし
タイミングが合えば一目でも会いたい
とお互いに話していた。

明日の微かな望みに希望を抱きながら
家に着きリビングへ入ると母さんが
やけに楽しそうに料理をしている。


「ただいま。何かいいことでもあった?」

「あらお帰りなさい。そう見えた?
でも正確にはあったじゃはなくて
これからあるの方が正しいわね」

「…これから?」

「そんなことよりお風呂入っちゃいなさい。
出てくるまでにご飯作っておくから」


詳しいことは分からないが特に気にも
留めず言われるがままに着替えを持って
浴室へと向かった。


夜も9時を過ぎ大晦日にもかかわらず
部屋で春高の対戦相手のDVDを見ていると
何やら一階の方が急に騒がしくなり
母さんの言っていた客が来たのだろう。

誰とも言わなかったので俺の知らない人
なのだろうと推測したのだがそれにしても
何時にない騒がしさに疑問が浮かぶ。


(あれだけテンションの高い母さんは
珍しいけど…)


いつの間にかDVDより一階の様子が気に
なりだし会話を聞き取れないかと集中して
いると階段を上る音が聞こえ誰かが
こちらに向かっている。

もちろん父さんか母さんしかいない
のだが母さんの声は下から聞こえて
いるので父さんなのだろう。


(俺に何か用事か…それとも客人は俺も
知り合いだったりするのか?)


コンコンッ


ノックの音に反応して色々考えていたことは父さんに聞いた方が早いと頭を切り替えた。


「入っていいよ。ねぇ今来てる人だれ
………え………?」


扉の開く音とともに顔をそちらに向けた
俺は自分の想定していた人物ではない
こととそこに居る筈のない人物の登場に
身体が固まり開いた口が塞がらなかった。





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あとがき


しばらく赤葦の出番がなかったので
春高前に何とかと思いやっと出せました!
若干無理やり感は否めませんが軽く
流していただけたら(笑)

次回もよろしくお願いします☆







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あきゅろす。
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