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HQ(long)@
1


合宿から帰って来て
気持ちの面でどこかモヤモヤした
ものが残ってしまっていた。

それでもチームメイトとともにプレー
しているとバレーだけに集中することが
出来るので次第にその気持ちも薄れていた。


「由莉奈。今週の練習試合はセンターを
メインにトス上げてみて。
名前へのトスはなるべく控えて
他を上手く使えるようにコンビ合わせて」

「はい!」


先生からの細かな指示が飛びコート内も
いい緊張感が走っていて
チームのモチベーションも上がっている。

総体の県予選はベスト4だった私達。

細かなミスが出て勝てた試合を
落としてしまったのもあり
リベンジする為に三年生も全員残って
春高への出場を目標として練習している。

県内でも注目度が上がったうちのチーム
への練習試合の申し込みが増えたらしく
今週末と私が男子の合宿に参加する間も
練習試合をする予定である。


「名前先輩!スパイク
見てもらっていいですか!?」

「おっけ。じゃあブロック1枚着けようか」

「私レシーブ入りますね〜」


自主練もほとんどみんなが残り
この時間の私は指導をメインとして
技術面の強化に努めている。

男子は今年の全国総体にも出場し
今では全国にまで烏野の名が
知られるようになってきたので

今度は女子が全国の舞台で烏野の名を
広められるよう春高へ出場したい。

チームの一員として私を必要としてくれた
みんなの為にも全力で期待に応えるべく
日々練習に取り組んでいた。




side赤葦



合宿から帰って来て他校に刺激を受けた
のもあったのかチームのレベルが
また少し上がったように思う。

キャプテンとしてもそれは喜ばしいこと
なのだが気がかりは名前のことだ。



合宿終了後烏野のバスを見送り自分達も
自チームのバスへと向かおうとしていた
のだが思わぬ人物から足を止められた。


「で。何か俺に用事でもあるの?孤爪」

「………」


あまり聞かれたくない内容なのか
集団から距離を置き周囲を見遣ると
ようやく口を開いた。


「…名前の様子がおかしい…」


孤爪の言葉に敏感に反応した俺は
鋭い視線を向け続きを促した。


「…さっき1年のマネージャー達の
話しが聞こえたんだけど」


孤爪が話すにはなぜか名前が
悪口を言われていて聞いているとどうも
ウチのマネの筒井が絡んでいるらしい。


「…あの子には早々に手を打たないと
名前に危害が及ぶよ?
俺のとこに来てキミと名前が
別れるように協力して欲しいって
言ってきたぐらいだし…」

「何それ…で。その話しに乗ったわけ?」

「…無意味で無駄な事はしない」


俺を見ながら呆れたように溜息を吐く
様子に嘘は見られず
孤爪は洞察力が優れている為あの子に
協力したところでメリットは何もないと
判断したのだろう。

それにしても孤爪にまでそんな要請を
するなんてあの子は何を考えているのか。


「…キミも変なのに目をつけられたね。
モテ過ぎるのもどうかと思う…」

「俺にはただ迷惑なだけなんだけど」

「…これでキミが何もしないまま
名前が傷つくようならどんな手を
使ってでも名前は俺がもらうから
……忠告はしたよ」


一瞬目つきを鋭くし俺に厳しい言葉を
掛けるとその後は何もなかったように
自チームのもとへ戻って行った。

孤爪は間違いなく本気で言っている。

あいつが名前のことを好きで
誰よりも気に掛けて大切に思っている
ことは知っていた。

名前が気持ちを総て吐き出せるのも
俺しかいないと分かっているうえで
今も彼女のことを相談してきたのだろう。

だからこそ俺が何も対処せず名前が
傷つくのならば側には居させないと
わざわざ釘を刺して来たのだから
俺も気が気じゃない。

名前が思っている以上に俺は彼女に
依存しているし彼女以外が俺の隣に居る
ことはありえないと思っている。

それぐらい彼女は大切で大きな
存在だからこそ名前を
狙う者が後を絶たないのも事実で。

俺が少しでも気を緩めれば名前を
奪われてしまう危険性があると思うぐらい
彼女の近くにはいい男が集まってくる。

今回は俺も原因のひとつだしその事で
彼女を傷つける可能性があり
前もって分かっていたにも関わらず
対応していなかった自分に腹が立つ。

絶対誰にも渡さない。

彼女が俺の隣でいつも笑顔でいられる
ように早急に対応しなくては。

不甲斐ない自分を叱咤し気を引き締めると
まずは練習に集中する為自分のポジション
へと足を進めた。


手始めの対応策として自分のボトルと
タオルは別で置いておいてもらい
休憩になると自分で取りに行き
中の交換は同学年のマネに頼んで
あの子との接点をなくした。

これで何かしらあの子は行動を
起こしてくるだろう。


「尾長、三浦。ちょっと頼みたい
ことがあるんだけど」

「「?」」


次の合宿では今まで以上に名前の
負担も増えることは確実なので
少しでも余計な心配をさせない為に
早く解決してバレーに集中してほしい。

信頼の置ける後輩2人に話をすると
快諾してくれこれで準備は整った。



end



あとがき


赤葦と研磨は一時休戦。
次回夏休み合宿に突入します!(笑)

気長にお付き合い下さいませ☆



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