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HQ(long)@
10


午前のゲームを消化し昼食の準備をしに
行くと一年のマネ達が固まって話しを
していたので声を掛けた。


「みんなお疲れさま」


こちらを一瞥すると再びみんなで話しを
始めたので疑問に思うも特に気にする事
なく厨房へ入りおばさん達を手伝った。

上級生のマネ達が姿を現すと
慌てて自分たちの持ち場に入り手伝いを
始めたのだが私には何が起こっているのか
全く訳がわからない。


「名前さんどうかしましたか?」

「ん?何でもないよ」


私の様子が気になったのかやっちゃんが
声を掛けてくれて大丈夫だと返事をすると
二人で雑談しながら手を動かした。

昼食を摂ってからも一年のマネ達から
見られている気がしてどうも落ち着かず
本人達に聞いてみようと声を掛けてみる。


「ねぇ。私に何か聞きたい事でもある?」

「えっ!?…いえ…何も…」

「?…そう。変な事聞いてごめんね」


他にも声を掛けてみたが別に私に用が
ある訳ではなくこれ以上気にするのを止め
ゲームに集中する事にした。


「名前ちゃんどうかしたの?」


私を気にしてくれていた真子ちゃんが
すれ違い様に言葉を掛けてくれて
気になっている事を話してみる。


「ん〜…一年のマネちゃん達からスゴく
見られてる気がするんだよね。
まぁ私の気のせいだとは思うんだけど…」

「そうなの?だけどあまり接点ないよね?」

「それなんだよね〜。私の勘違いだと
思うから気にしないで」


軽く話しを終えると気持ちを切り替え
音駒のベンチへ入り選手達と次の
ゲームに向けた話しをする。

午後からの違和感を払拭しながら全日程
を終え帰り支度をする為荷物を取りに
行くと数人がまだ室内に残っていた。


「酷い人だよね。いろんな選手に媚び
売って取り入ろうなんて…」

「筒井さんかわいそう。
いじめられてるらしいよ?」

「そうなの!?最低だね!」


そこには昼間の一年のマネ達が集まっていて
どうも誰かがいじめられてるようなのだ。


「みんな何かあったの?今いじめって…」


私の声を聞いた彼女達は鋭い目つきで
睨んできて敵対心を剥き出しにしながら
私へと言葉を発した。


「何も知らないような顔して怖いですよね」

「私先輩を見損ないました」

「後輩いじめなんて最低ですよ」


私に対して彼女達が怒っているようだが
身に覚えもなくどうしてこのような
事になっているのか全く理解ができない。


「…いったい何のこと…」


頭の整理がつかない私は彼女達に詳しく
聞こうとしたのだが他のマネ達も戻って来た
為入れ代わるように彼女達は出て行った。

唯々呆然としている私にやっちゃんが
声を掛けてくれたのだがその場は平静を
装ったものの内心穏やかではなく

意味のわからない問題を抱えたまま
次回の合宿へ臨まなければならない
事への不安が過った。




side赤葦




2日間の日程を終了し帰り支度を早々に
済ませ見送りをする為烏野のバスへと
向かい名前を探していると
月島から声が掛かった。


「名前さんならまだ来てないですよ」

「…月島ちょうど良かった。
名前の事なんだけど」

「?はい」


名前と話したかったのは勿論だが
月島にも話があったのでタイミング良く
現れてくれて手間が省けた。


「かなり疲れが溜まってるみたいなんだ。
自分からは絶対に言わないだろうから
倒れないように気をつけてあげて」

「え?……わかりました」


俺の言葉に驚いた表情を見せたが
すぐに何か考える仕草をすると返事を
返してくれ俺の言いたい事が伝わった
ようで頭の回転が速くて助かる。

端から見ればマネがデータ収集している
だけだと思うだろうが
名前の場合選手に注意やアドバイスを
したりコーチングと似たようなものも
しながら自主練では選手と同じメニューを
自らこなし時間が空けばデータ分析など
とにかく仕事量が半端じゃない。

誰かに押し付けられてする分には
直ぐにでも止めさせられるのだが自らの
意思で行っているのでそれも出来ない。

それに加え帰ったら選手としてもチームの
得点源として動かないといけないし
彼女に寄せる期待は並大抵のものでは
ないのでプレッシャーも掛かるだろう。

だからこそ限界を超える前に止めないと
名前本人が辛い思いをしてしまうので
それを避ける為にも月島に頼んでいた。

その後も月島と話していると名前が
もう一人のマネの子と一緒にこちらに
向かって歩いている姿が見え自然と顔が
緩んでいるのが自分でも分かる。


「名前」

「京治…。ちょっと荷物置いてくるね」


何だろう。

一瞬…ほんの一瞬だけ名前の表情が
曇っていたように感じた。

バスへ向かった彼女を目で追っていると
月島が俺の様子を不審に思い声を
掛けてきたのだが其れよりも
名前の事が気になっていた。

こちらへ戻ってきた彼女はいつもの様子で
俺の気のせいだったのかとも思ったが
万が一何かあってはいけないので
念の為聞いてみることにした。


「ねぇ名前。…何かあった?」

「えっ?特に何もないないけど…
私どこか変だった?」

「ちょっと頑張り過ぎたんじゃない?
疲れが顔に出てるよ」

「ホントに!?う"〜…帰ったら
しっかり休むようにする」

「美人が台無しだから」

「京治のいじわる!」

「…お楽しみのところ悪いんですけど
俺の存在忘れてませんか?」


名前の頬を抓ったりして二人で
戯れていると隣に居た月島から不機嫌な
声が漏れ渋々ながらも彼女から手を放した。

名前が他校の選手達に挨拶へ
行ったのを確認すると月島へ顔を向け
真剣な表情を見せる。


「ちょっと烏野のマネージャーの子を
呼んでくれない?」

「…谷地さんですか?どうして…」

「少し聞きたい事があってね」


再び名前へ視線を向けた俺に
何か察してくれたか月島はマネの子を
呼びに行ってくれた。


俺の勘はやはり当たっていたようだ。

質問に対して名前の肩が微かに
動き何か気になっている事があるのは
これで間違いない。

あとはその原因が何なのか…


「赤葦さん」

「あっあの!私に何かご用でしょうか!?」

「ごめんね急に。名前のこと
で聞きたい事があって」


月島に谷地さんを連れて来てもらい
女子部屋での様子を教えてもらった。


「いっいえ特に変わったことは…
あっ!?でっでもですね!
今日のお昼過ぎぐらいからでしょうか」

「「?」」


谷地さんの話によると昼過ぎ辺りから
何かを気にするような素振りが見え
本人は何でもないと言って
いたらしいのだが。


「さっきもどこか困惑してた様子で…」

「そう…ありがとう。助かったよ」


谷地さんからの確証もとれ
名前が何かに巻き込まれている
ようで早急に解決しないといけない。

もし誰かが彼女を傷つけているようなら
絶対に許さないしタダでは済まさない。


「月島…名前を頼んだよ」

「もちろんです」


次の合宿に向け早急に対策を練る為に
まずは情報を集めなければと思いながら
徐々に集まりだした自チームの選手達の
中に帰って行った。




end





あとがき


終わりが暗い感じに… 汗
一応前期合宿編は終了で
次は波乱の長期合宿編へ向かいます!

気長にお付き合い下さいませ☆



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あきゅろす。
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