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ゆきのはなし
ゆき、来る
「(涼しくなってくる時期とは言ってもやっぱり日本は暑いなぁ)」

新奈はリボーンに呼ばれイタリアの地から日本の並盛町へとゴスロリ姿でキャリーケースを引きやって来た。

「(もうほとんど忘れてる・・・一世紀以上前の記憶だもんね、実際リボーンに何されたとか自分が何したとかもあまり覚えてない・・・大丈夫かな私)」

並盛を歩きながら町の風景や自身の身に起きた事を思い出せず地図を手に歩く中溜息が漏れる。

「ぁ、(ココだ)」

見覚えのあった家の表札に“沢田”とあり地図を再度確認し息を整え呼び鈴を鳴らす。

「(母さん、居るのかな・・・大丈夫、ちゃんと呼べる!練習したもん!)」
「ちゃおっス、ニーナ」
「!お久しぶりです、リボーン先生」
「あぁ、久しぶりだなニーナ」

塀の上から降りて来たリボーンを抱き留める新奈。

「ゴスロリか・・・似合ってるが、セツナの趣味か?」
「恐らく・・・私の私服はほぼこの様なヒラヒラです」
「そうか、しかしもう少し遅いと思ったが、セツナは大丈夫だったか?」
「だいぶ泣かれてしまいましたが、フォン様が来てくださいまして」

新奈の長い髪が動きセツナと風を模した人形になる。

『おやおや、セツナ泣いているのですか?』
『フォン!?なぜお前がココに!』
『ヴェルデが来れないので私が代わりに新奈さんの見送りです、誰かさんが連れ戻さないよう見張りも兼ねて』
『我が弟子の門出だ、誰がその様な事をするか!』
『では、そろそろフライトの時間ですね』
『っ!!?新奈・・・』
『おや?セツナその手に持っているものは?』
『なっ!何でもない!』
『私の弟子もボンゴレ十代目の元に居るのでついでにこの手紙を渡して頂けますか?』
『!?お前の弟子は既にボンゴレの元に居るのか?』
『はい、一年前からすでに』
『っ〜〜〜新奈!しっかりボンゴレの役に立って来い!』

泣く泣く見送るセツナの言葉を最後に人形は髪に戻り重力に従い落ちる。

「あぁ・・・そりゃ見送るしかねーな」
「しかし、心配です・・・師匠生活能力ゼロですから」
「なんとかするだろ、お前が来る前も生きてられたんだから」
「はい・・・」
「しかし声帯模写まで出来るのか、研究資料にはソコまで書いてなかったが」
「試してみて最近出来る様になったので」
「そうか、他にも色々ありそうだが、まずはお前のボスを紹介しねーとな」

家の鍵を取り出したリボーンに新奈は首を傾げた。

「どなたもいらっしゃらないんですか?」
「あぁ、だからとりあえず部屋に荷物を置け、ソレから出かけるぞ」
「はい」

リボーンの案内で部屋に通され荷物を隅に置いて再び並盛町へとくりだす。

「実はこの間並中の生徒が襲われる事件があってなその首謀者と一昨日一戦交えたせいでツナ達は入院中だ」
「え!?」
「安心しろ首謀者は掴まって一件落着、ツナに至ってはただの筋肉通だ」
「筋肉通で入院ですか・・・(そう言えば私もそんな経験があったような・・・)」
「呆れるだろうがそれ程体を酷使したんだ・・・つー訳で看護と言ったらコレだな!」

何処からともなく取り出された白衣の天使セットに新奈は眉を下げる。

「(リボーンのコスプレ趣味ってまさか師匠が要因なんじゃ・・・)」

時々衣装をどこかしらに郵送する師の姿を思い出しながら白衣を受け取る新奈。

「ヴェルデに聞いたがお前整体の知識もあるんだろ?」
「はい」
「それでいっちょツナの筋肉痛を治してくれ」
「かしこまりました(白衣の天使は整体師とは違うと思うのだけど・・・)」

病院に着くなりトイレで着替える様指示され渡された其れに素早く着替える。

「(師匠もそうだったけどリボーンも膝丈とかちゃんと守ってるのね、ガーターは付いてるけど・・・)」

膝の隠れる白衣に安堵しトイレから出ると、リボーンが待ち構えていた。

「さすが手早いな、んじゃ行くぞ」
「はい(ってか、ボスへの印象最悪なのでは・・・初対面からコスプレとか)」

綱吉の病室の前に来るとリボーンは忽然と消え新奈少々思案すると病室の扉を叩く。

「っはい・・・痛っ!!てぇぇええ!!」
「!?」

どさっ

「痛てぇぇええ!!!」
「っ(落ちた!?)失礼します!」

新奈は慌てて扉を開くとベットの傍で倒れた少年に駆け寄り支える。

「大丈夫ですか?」
「っ〜〜!(金髪美人の看護婦さん!?)」
「立てますか?」
「いや、ちょっとムリ・・・っ!」
「ベットに戻りますね?動きますよ?」
「っ〜〜〜!」

綱吉を支えなるべく振動を与えないようベットに横たえる新奈。

「申し訳ありません、私が声を掛けた所為ですね・・・」
「いや!違います、俺さっき起きたばっかでちょっと混乱して起きたら体中痛くて!」
「全身筋肉痛だそうです、丸一日以上眠ってらっしゃたとか、お疲れだったのでしょう」
「え!?ぁ、そっか俺、骸と戦って・・・そうだ骸!痛っ〜〜」

再び勢いよく起き上がろうとする綱吉は余りの痛みに歯を食いしばる。

「ったく情けねーな、ニーナが何も言えねーじゃねェか」
「リボーン、っ!」
「ニーナ、手っ取り早くコイツの筋肉痛治してやってくれ」
「へ?この看護婦さんリボーンの知り合い」
「オレの古馴染みの弟子だ」
「って事は・・・」
「一流のヒットマンだ!」
「え!?こんな美人な子がマフィア!?っ〜〜〜」

大声を出すだけで体に響く痛みに綱吉は口を閉じる。

「お前のファミリー候補に引き抜いてきた、ありがたく思えよニーナは優秀だ」
「必要ないよ!俺はマフィアのボスには成らないんだから!」
「(私と一緒の事を言ってる、だけど・・・)綱吉様は私の事は必要ないのですね・・・」
「え?」
「(要らないと言われる事は、辛い・・・)」

表情に影の差す新奈に綱吉は困惑する。

「でも、せめて筋肉痛だけは治して帰りますね、リボーン先生に言いつけられましたので」
「え・・・」

ベットに手を付き綱吉に優しく囁く新奈に身を引く綱吉に構わず其の手を取る。

「かなり痛いですが、姿勢を変える度に痛いよりはましだとご容赦ください」
「・・・構わねェ、思いっきりやれニーナ」
「は?ちょっ!んぎゃあぁぁぁああ!!!」

リボーンの許可が下りると綱吉の悲鳴が病室に響き渡り三分間止む事はなかった。

「っ!・・・・・・・・・」
「終わりましたリボーン先生、これで完治したと思いますので」
「あぁ、助かったぞニーナ」

まさに虫の息状態の綱吉に毛布を掛ける新奈を労うリボーン。

「悪かったな、態々来てもらったのにダメツナがあんな事・・・」
「イキナリでしたし、何時紹介していただいても変わらなかったと思います」
「帰っちまうのか?(セツナは狂喜乱舞だろうが)」
「この方に必要とされないなら私が日本に居る意味はないでしょう」
「っ」

気を失っていた綱吉の瞼が開いた事に気付いたリボーンが其方に話を振る。

「起きたかダメツナ」
「大丈夫ですか綱吉様」
「すげー痛かった・・・」
「でもおかげで治ったろ?」
「え?」

リボーンに言われ確認するように身を起こすし両の手を開き握り感覚を確認する綱吉。

「ホントだ、全然痛くない・・・」
「ニーナに感謝しろよ、あんな事言ったお前を治してくれたんだからな」
「え?ぁ・・・あの、ありがとうございます」
「いいえ、少しはお役に立てて良かったです」
「それとさっきはごめん・・・キミが要らないとかそういう意味じゃないんだ、ただ・・・俺にはマフィアの部下とかは必要ないって意味で、えっと・・・」

頭に手を置き必死に言葉を引き出そうする綱吉の手を新奈は再び取る。

「!」
「確かにアナタはまだマフィアではありません、部下が必要ないのも頷けます」
「(この人、ひょっとして俺の気持ち、分かってくれてる?)」
「ソレでもアナタはマフィアのボス候補として命を狙われている、今回の件も不本意だった事でしょう」
「そう!そうなんだ!」
「・・・アナタの中に流れる血は私にはどうする事も出来ません、コレからもこの様な目に合うでしょう」
「なんとかならないのかな・・・俺は、マフィアになんか」
「嫌なら全力で抗うしかありません、周りに有無を言わさぬほどに」
「イヤだって言い続けたら周りは変わるの?」
「変化を待つのではなくアナタが変化を起こさなければ変わらないでしょう」
「え!?ムリだよそんなの!」
「アナタには変化を起こす力があります(だって私とは全く違う世界に立っているのだから)」
「・・・俺に出来るって言うの?」
「はい、私はその手助けの為にリボーン先生に呼ばれたのですから」
「え?俺をマフィアのボスにする為じゃなくて?」

俯いていた綱吉は新奈の目を見返すと新奈は優しい笑みを返す。

「アナタが望む事を出来るだけ手助けする為に来ました」
「俺の望む事・・・」
「アナタが必要ないと仰るなら私はアナタの前から消えます」
「・・・・・・・・・痛!?」

変わらぬ笑みを向ける新奈の言葉にどう返せばいいか分からず固まって居ると最強のヒットマンの足が脳天に響く。

「ダメツナが、女にココまで言わせてなに黙ってやがる」
「わかってるよ!!」

リボーンから改めて新奈に視線を戻す綱吉。

「あの!」
「はい」
「部下とかそんなんじゃなくて、友達として一緒にいてください!」
「・・・ともだち」
「ぁ・・・やっぱりだめ?」
「いいえ(忘れてたかも、友達って・・・)私は新奈と申します、よろしくお願いします、綱吉様」
「こちらこそよろしく!新奈ちゃん」

握られたままの手を握り直し握手する二人にリボーンは口角を上げるが・・・

「・・・あの、どうか新奈と呼び捨てください」

不意打ちの様にちゃん付けで呼ばれ視線を外す新奈を気にせず続ける綱吉。

「じゃあ、俺の事も綱吉でイイよ!なんならツナでも」
「それはご勘弁ください、師匠に怒られてしまいます」
「そっか・・・先生ってリボーン?」
「そいつに戦闘技術を叩き込んだ奴の事だオレじゃねーぞ」
「あ、そーなんだ」

ばたばたっ

「「!」」
「え!?」

外から数人の足音を感じたリボーンと新奈が其の場から消え、綱吉は驚き目を瞠ると病室の扉が開く。

「随分遅い対応だな」
「綱吉様三分間叫びっぱなしだったんですけどね・・・」

医師と警備の人だろう人間が部屋に入ってくるのを確認し天井裏から其れを見守るリボーンと新奈。

「なんだ、ツナの奴もう退院か」
「良い事ではありませんか、今日は退院祝いですね」
「ママンにお前も紹介したいし先に帰るか」
「はい」

リボーンの言葉に頷くと、紙切れに走り書きし其れを綱吉の頭に落とすと新奈は音も無く其の場から去った。

「ん?何コレ・・・『お先に失礼致します、お帰りお待ちしております。新奈』」

天井を見上げるも其処には何も無く綱吉は首を捻る。


―――
――


「即退院だなんて驚いたわ〜」
「うん、俺も・・・(騒がしいから追い出されたんだけど)」
「急だったから退院祝いとか――・・・」
「あぁ、そんなの別にイイよ(筋肉痛で丸一日寝てただけだし)」
「ううん、出来ないと思ったんだけど今日ねウチにメイドさんが来てね」
「え?メイドさん?」
「そうなの!『私が準備致しますから奥様は綱吉様の元気なお姿を見に行ってくださいませ』って!」
「へ〜リボーンの紹介?」
「あら!よく分かったわねツッくん、もう奥様だなんて照れるわぁ」

迎えに来てくれた奈々のはしゃぎように先ほどの白衣の少女が脳裏を過ぎる。

「(いや、まさか・・・いくら美人でも俺とそう年齢変わらないくらいだったし・・・)」

しかし、帰宅して出迎えてくれたのは先程の金髪美少女、新奈だった。

「お帰りなさいませ奥様、綱吉様」
「ただいまニーナちゃん」
「お荷物お持ちします」
「きゃーありがとう!」
「お食事の用意も出来ています」
「ホントに助かったわ」

奈々は早々に居間の方へと向かうが綱吉は固まったまま、リボーンは怪しく笑い新奈に耳打ちをする。

「・・・お帰りなさいませ、綱吉様」
「え!?ぁ、た・・・ただいま」
「お食事になさいますか?お風呂になさいますか?それとも――・・・」
「え、(それって新婚夫婦の帰宅文句)」
「ご飯に決まってるモンね!!」

二人の間に飛び込んで来たランボに綱吉は脱力する。

「イヤラシイ想像したかツナ?」
「・・・・・・・・・」
「リボーン先生、煽るような事を言った私も悪いのですからその様な・・・」
「今日からニーナもココに住むからな」
「っ!?だから新奈がこんな格好で」
「コイツ師匠の元でもずっとコレで家事やってたからヘーキだぞ」

綱吉は改めて新奈を上から下まで確認するロングスカートのメイド服を来た美少女が自分に微笑んでいる。

「(俺だけに奉仕してくれるメイドさん・・・)」
「別にオメーだけに奉仕するワケじゃねーぞ、ママンの為でもあるからな」
「分かってるよ!っていうかメイド服って目立つじゃん!何で止めさせないんだよリボーン!」
「だってコイツの師匠が給仕するならメイド服必須とか教え込んだんだモン」
「かわいくねーよ!」
「!、綱吉様はお嫌いでしたか・・・」

リボーンに吐いた言葉なのは分かったが自分に言われたように感じた新奈は綱吉から視線を外す。

「へ?」
「男性はこういった装いを好まれると教えられたのですが・・・」
「違うんだ新奈!すごく可愛いんだけど・・・(ご近所の目が)」
「成る程ツナはロングより絶対領域のミニスカメイドの方がイイわけか」
「違う!!!」
「なんだお前も何だかんだでロングスカートにガーターベルトのがイイか」
「え・・・?ガーター?」

綱吉の視線が新奈の足に行く。

「ツナも中々マニアックだな、男子中学生はミニが圧倒的に多いつーのに」
「なっ!?」
「よかったなニーナ、ツナはお前の恰好まんざらでもねェみてーだ」

安堵の息を吐き再び笑みを向けられた綱吉は新奈に余計な事を言わないよう気を付けようと心に誓った。

「綱吉様、もう食事は出来ているのですが召し上がりますか?」
「うん、もう腹ペコ」
「お口に合うと良いのですが・・・」
「あ、そっか新奈が作ったんだっけ?」
「はい」

談笑しながら居間へ向かう二人にリボーンは小さく笑い其の小さな背を見送る。

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