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金色の青年と水の少女-7

***



「あの、ライラさん……」

 二人を見つめるライラに、リリスはそっと声を掛けた。彼女は「何かな?」と首を傾げ、瞳をリリスに向けた。

「その、変な質問なんですけど……ライラさんはお父さんとお母さん、どちらが魔女なんですか?」

 リリスの質問にライラはは瞳をきょとんとさせる。それから口元をふっとゆるめ、

「あたしは、母親が魔女なんだ」と、柔らかく微笑んだ。

「お母さんが……」リリスは続けて訊ねた。「お母さんの事って、覚えてます?」

 リリスのこの質問にライラは首を横に振った。どこか遠くを見つめ、彼女は少し寂しげな表情をみせる。

「母どころか、父の事さえ覚えてない、かな」そう言い困ったように微笑んだ。

「リリスちゃんは?」今度はライラがリリスに訊いた。

「私もお母さんが魔女なんです。名前は分からないけど、顔だけなら知ってます」リリスは鞄にそっと手を触れた。

「一枚だけ、写真があるから……」

 中に入っている写真を撫でるように、彼女は優しく鞄を撫でる。

「ねえ、今ってその写真持ってるかな?」

「……えっ?」

 ライラの問いにリリスはピタリと手を止めた。写真は、鞄の中に入っている――けど。

 『気を付けて』

 一瞬、夢で聞いた声が脳裏を過った。リリスは鞄を撫でていた手をそっと膝の上に置く。

「今は……ない、です」

 出てきた言葉は『写真はない』と言う否定の言葉。

「写真、持ち歩いてはいないので……」

「そっか、ちょっと残念」

「…………」

 リリスの頭の中はライラに嘘を吐いてしまった罪悪感でいっぱいだった。

 ――何で、嘘、付いちゃったんだろう……。

 あの時――ライラに写真の事を話そうとした時――母の声とルナリアの顔が刹那に脳裏を過った。

 ……だからだろうか?

 母について情報になるような事を話したり、見せたりしてはいけない気がした。

 話題が途切れ二人の間に沈黙が流れる。この場をどうしようかと思いリリスはライラを見つめた。彼女はアルベルとトール、二人の練習風景を見守るように見つめている。

 写真に関して特に気にしてなさそうな彼女に少し安堵し、リリスも二人に目を向けようとした――その時。

「リリスちゃん!」

 突然ライラに名前を呼ばれた。

 どうしたのだろうと瞳をキョトンとしていると、彼女は少し興奮気味に、

「今から二人、一対一で何かやるみたいよ」

 そう言い瞳をキラキラさせ楽しそうに二人の方を指差した。

「手合せでも始めるのかな……?」

 ライラが指差す方に視線を向けると二人は道場の中央――そこには試合や手合せ用のスペースがある――に向かっていた。
 二人を見つめリリスは「きっとアルベルが勝つんだろうな」とぼんやり考えていた。



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あきゅろす。
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