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アルベル-4

「モニカ殿が深手を負ったのは、自らを盾に地精霊の攻撃を受けたから。彼女は怪我人の手当てをしながらも、常に防御結界をはっていたんです」

「……父さんは?」

 俺がそう問うと、ウィングは目を開け、俺をまっすぐ見つめた。

「彼もまた、自らを犠牲に、戦いの前線で戦っていました。そして、地精霊が最後に放った攻撃の直撃を受けて……亡くなりました」


 亡くなった?
 父さん、が……?


 俺は一瞬回りが真っ暗になり、なにも考えられなくなった。

 地精霊の力も弱まり、あと一撃と言う時、ウィングは残りの力を使い、魔術の詠唱をしていたと言う。

 詠唱が終わり、魔術が地精霊へと向けられた時。地精霊も残りの力を使い、魔術をウィングへと放った。

 術の発動中により、動く事が出来ないウィングを、その場の誰もが相討ちとなると思った。それは彼自身も。

 けれど彼は助かった。術の直撃を庇うように父が受けたから。

 地精霊が力を放った瞬間、父はウィングのもとに駆け寄り、彼を庇って自らが直撃を受けた。

「―――本当は、彼ではなく、私が死ぬはずだった……。最後に魔術を発動した時、私は相討ちする覚悟もありました。しかし、攻撃を受けたのは、私ではなく……」

「……父さん……」

 涙が出てとまらない。俺はその場に泣き崩れた。

「アルベル……」

 ウォーカーさんが俺の肩をそっと掴み、自分の方に優しく引き寄せた。ウォーカーさんの肩に頭をのせ、更に涙があふれ出た。

「……彼は死に際私に、息子に、君に伝えて欲しい事があると言っていました」

 涙で視界が歪み、ウィングがどんな顔をしているかなんて分からない。俺はむせび泣きながら彼の話に耳を向けた。

「帰れなくなって、一人にしてすまない。一足先に、母さんの下に行っているから、と。それから……」

 ウィングは静かに立ち上がると、俺の傍にやって来た。彼は俺と視線を合わせるようにそっと肩に触れた。

「一人でもいい。大切な人を見つけて欲しい。そして、大切な人を護れるようになって欲しい――そう、君に伝えて欲しいと言っていました」

「……大切な人を、護る……」呟くように、その言葉を言った。

「それが、アステルの最後の言葉ですか?」ウォーカーさんが俺の頭にそっと手を伸せた。

「……はい」

 ウィングの返答に、ウォーカーさんは俺に向かってそっと微笑んだ。

「彼らしい言葉ですね」

 そう言って、ウォーカーさんは優しく頭を撫でてくれた。



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