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青年と魔女(2)-6

***



「――それで、私に訊きたい事って?」

 ルナリアは紅茶の入ったカップを静かにテーブルヘ置き、アルベルに言った。

「リリスの母親の事だ」

 アルベルは瞳を真直ぐルナリアに向け、一言答えた。彼はテーブルを挟んで彼女の正面に腰掛けている。

「噂で言う『巨大な魔力を持つ魔女』とは、リリスの母親の事なのか?」

「何故、貴方はそう思ったのかしら?」

「何故って……」

 質問を質問で返され、アルベルは次に続く言葉を詰まらせた。彼は暫し考えた後「何となく、かな」と苦笑して答えた。

「そう」

 ルナリアは目を細め、鼻で軽く笑った。彼女は紅茶を一口飲み、言葉を続ける。

「あの娘の母親の名は、ディアナ・ノクターン。ディアナは貴方が思った通り巨大な魔力を持つ魔女よ。それも、ルナルの魔女の中では、長に次ぐ程の魔力を持つ魔女だった」

「……だった?」

「ええ」ルナリアは静かに頷く。

「噂の中でも言っているけれど、彼女はリリスを産んだ時、半分近くの魔力をあの娘(こ)に吸収されたのよ」

「それじゃあ、その後も魔力はそのまま元に戻らないのか?」

 アルベルの問いに、ルナリアはいいえと答え、首を横に振った。

「もちろん回復するわ。もっとも、完全に元の魔力に戻るわけではないけれど」

「何だか大変だな」

 アルベルが言った。するとルナリアは「そうね」と一言淡泊に答えた。

「……そうね、て。まるで他人事みたいな物言いだな」

「あら、他人事よ? ウィッチ・ハーフを産むようなそんな愚かな事、私はしないもの」

 愚か、か。

 言ったルナリアの瞳はとても冷たかった。アルベルは「ウィッチ・ハーフは嫌いか?」とルナリアに訊いた。

「嫌いよ」

 そんな事訊く迄もないわと、彼女は答え紅茶を一口飲んだ。

 「嫌い」と答えた彼女の瞳は「愚か」と答えたその時よりも、更に冷たさを増している。

 彼女の緋色の瞳をみつめ、アルベルは背筋が冷たくなるのを感じた。

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