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青年と魔女(2)-4

「ルナリア・ガーネット」と、リリスが言った。

「……え?」

 彼女の突然の呟きに、私は「何の事?」と訊いた。それに彼女は静かに微笑む。

「その魔女(ひと)の名前。ルナリア、凄くお母さんに似てた」

 それじゃあ、もしかしてその魔女って……。

 私はリリスを見つめた。彼女は「ううん」と首を横に振る。

「似てたけど違う。ルナリアね、私のお母さんに頼まれたって言ってたんだ」

「頼まれた?」

「うん」

「何を?」

「分からない」

「…………へっ?」

 分からないって……。

 何だか話が読めない。リリスはルナリアって魔女と何を話したのだろう。
 私は思考を廻らせ、ぶつくさ考えていた。その横でリリスが少し困り顔で私の名を呼んだ。

「あのね、ウイニア」彼女は言うのを躊躇うかのように、小さな声で次の言葉を紡いでいった。

「ルナリアに聞いたんだ。……今、王都や都中で、流れている噂を」

 噂――。

 それって、私がゼノンから聞いた噂の事だろうか?
 私はまっすぐリリスを見つめ、彼女の話を聞き逃さないよう耳に神経を集中させた。

「それがね。二、三ヵ月前から、十六歳になるウィッチ・ハーフの魔力を狙った、魔女の魔力狩りがあるらしいんだ」

 ……やっぱり。

 その噂、ゼノンが話してたのと同じ。――なら、黙ってても仕方がないよね。

「リリス」私はリリスの名を呼んだ。

「私、その噂を知ってる」

 反応早く、リリスが私に視線を向けた。その瞳は「何で」とも言うように、ぱっちり見開かれている。

「……一昨日、リリスが早退した日のお昼休みに、ゼノンから聞いたのよ」

「ゼノンさんから?」

「ええ。今、王都や都中のウィッチ・ハーフがその噂話をしてるのを聞いたから、て」

「そう、なんだ……」

 リリスは顔を俯かせ、静かに呟いた。「なら、話が早いかな」

「……えっ?」

 再び私の方に視線を向け、リリスはふっと微笑んだ。

「私ね、ちょっと思った事があるんだ」

「思った事?」首を傾げリリスを見つめた。

「うん」リリスは頷くと、瞳を窓の外に見える空に向けた。

「噂で言ってる、とある魔女の魔力を秘めたウィッチ・ハーフ――それって、もしかして私なんじゃないかな、て」

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あきゅろす。
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