噂-4 *** 「……それって……」 ルナリアの話を聞き、リリスは一瞬耳を疑った。 二、三ヵ月前から王都や都市中のウィッチ・ハーフが噂している、ある一人の魔女の魔力を狙った魔女の魔力狩り。その対象と去れているのは、近々十六歳を迎える女のウィッチ・ハーフで、両親の内母親が魔女。そしてその名を知らない娘(こ)だと言う。 ――私はお母さんが魔女で、その名を知らない。つまりは私も、力を狙われてるって事なの? 「自覚してきたみたいね。今、貴女が置かれている状況に」 「……それは、貴女も魔力狩りをしている魔女の一人だって事?」 リリスは目の前に立つルナリアを見上げた。水色の瞳は彼女の不安を映し出している。 ――けど、何でだろ? 仮にも、もし本当にルナリアが魔力狩りをしている魔女だとして……わざわざ私に、こんな話教えてくれるだろうか? ……でも、今朝の夢もある。夢の中でお母さん(らしき女性)は 『気を付けて』 とか、 『明日、私のところに誰かが来る』 とか言ってたよね。もしかしてそれは、ルナリアの事を言っていたんじゃないか――今の状況なら納得できるから。 けれど、それなら尚更ルナリアが私にこの話をするのは変だ。何だか分からない。 「…………」 リリスは息をのみ、ルナリアの言葉を待った。彼女は眼を閉じると、短く息を一つ吐き、静かに口を開いた。 「違うわ」 彼女は目蓋を開け、視線を真っすぐリリスに向けた。 「……えっ、だって……」 「私は自分の魔力に満足しているもの。だから他人の、それもウィッチ・ハーフの魔力を奪うなんて愚かな事を私はしない」 「そう、なんだ。……なら、何で私の前に現われたの?」 「頼まれたのよ」 「頼まれた?」 ルナリアは憂欝そうに深いため息を吐いた――その時。 「――リリス!」 そう呼ぶ声が聞こえ、二人はその声の方に視線を向けた。 視線の先には明るい茶の髪をした青年が立っている。青年の表情は驚いているようで、何だか怒っているみたいでもあった。 「アルベル?」 [*前へ][次へ#] [戻る] |