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始まりの終わり





白き魔女・始まりの終わり






 この物語は、ここではないどこかの世界の物語。世界には、二つの異なる力が存在した。

 一つは「魔術」と呼ばれている力。魔術は大地や水、炎、風といった四大元素の力と、魔女と呼ばれる種族に秘められる陰の力(魔力)との結合により引き起こす事が出来る力で、それは破壊的な力を持つといわれている。

 もう一つは「法術」と呼ばれる力。これは魔術と逆で、陽の力(法力)を持つ者が、神や大地の生命を祈りにより自らの精神エネルギーに変換し、癒しの力を引き起こす事ができる。

 魔術は「魔女」だけが使える。逆に法術は陰の力を持った魔女には使えず、陽の力をもつ者「法術師」と呼ばれる者にしか使う事はできない。

 ――ただ一つ。混血種である「白き魔女(ウィッチ・ハーフ)」を除いては。



***



 ――時はラピス暦一〇二四年。

 地震や洪水、日照りなど。自然界に起こる災厄や疫病は、全て魔女により引き起こされるモノと言われてきた。

 魔女は人間には無い陰の力を持ち、容姿はとても美しく妖艶。整った顔立ちから覗く深い瞳は、どこか冷酷で残忍な印象をもっている。その所為か魔女を恐れる者は、災厄など全ての元凶は、

「魔女のせいだ」と、そう囁き忌み嫌う者も少なくはなかった。

 そんなこの年の夏。王都ラウザルク付近の街や村では、永きにわたる雨や風に見舞われ不作が続き、終には大洪水が起た。いくつもの街や村が沈みかけ、いつしかその災厄を、

「魔女が起こした災いだ」と、囁く者が出て来た。

 これにより一年後。ラピス暦一〇二五年にラピュセル王国は、ラウザルクの法術師達を中心に「魔女狩り隊」なるものを結成した。そして人々は魔女狩りを始めた。



 魔女狩りが始まって三年が経った。各地の魔女達は人間の夫(妻)と、その人間との間に生まれた子――白き魔女(ウィッチ・ハーフ)を残し、全ての都市や街、村等から姿を消した。

 魔女達が新たな居住の地として選んだ場所はルナル大陸。そこは王都ラウザルクより南西に向かったところに位置し、大陸全体が木々に覆われ森と化した大陸で、人々は「ルナルの森」と、そう呼んでいる。

 魔女達はルナルの森に巨大な魔術結界をはり、森の奥深くでひっそりと暮らした。そして、誰で在ろうと、人間――中でも法術師――やウィッチ・ハーフの出入りだけは固く禁じた。



 こうして魔女が外との交流を切り、六十年の月日が流れた。いつしか魔女狩り隊は無くなり、ラピュセル王国ではウィッチ・ハーフの研究者達を中心に、新たなる魔術学・法術学の研究が行なわれていた。



 いつしか人々は忘れていく。自分達が魔女にした罪深き事を。
 それを彼女達は忘れない。六十年たった今でもずっと――。



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