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継がれし母の力〈前編〉
3

 キッチンに着くと夕食の準備は出来ていた。テーブルには既にシルバとアルベルが着いており、リリスは急いで自分の席に着いた。
「リリス、おかえりなさい」
「お祖父ちゃんただいま!」
 リリスと同じ透き通るような水色の瞳を細め、彼女の祖父――シルバはにっこりと微笑んだ。
「では、皆そろった事ですし、夕食にしましょうか」
「ああ。リリスが遅い所為で腹がぺこぺこだ」
「……悪かったわね」
 リリスはプクッと頬を膨らませ、アルベルを睨んだ。アルベルはと言うと、リリスの睨みなど気にせず、サラリと彼女の視線を無視していた。
「まぁまぁ、二人とも。それでは頂きましょう」
「頂きま〜す」
「頂きます」


***


「なぁ、リリス?」
「何?」
 食事が始まってしばく経った頃、アルベルは箸を止めてリリスに訊ねた。
「最近さ、帰りが遅いみたいだが、居残りでもしてるのか?」
「別に。そんなんじゃ無いよ」
「じゃあ、何で遅いんだ? 今日だって道場行ってた俺より遅かったじゃないか」 
 いつもは冷静淡々と話しているアルベルだが、どうも今日はそうもいかない様子。彼は、リリスが心配なのだ。それは祖父のシルバも同様で、シルバはと言うと、静かに二人の会話に耳を傾けていた。
「だって、それは……」
 言葉が詰まる。リリスは俯き黙り込んだ。そんな彼女の様子に気付き、アルベルははっと我に返る。
「……悪い。言い過ぎた」
 言ってアルベルも黙りこむ。リリスも依然、俯き黙った間々である。
 二人が口を閉し、夕食の食卓には重い空気と静かな沈黙が流れた。

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