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継がれし母の力〈前編〉
8

***


 ――二人とも、さっきから何を話してるんだろう?
 先程から二人は何か話してるみたいで、木刀を振る手が止まっていた。
「気になる?」
 二人をじっと見つめている私に、ライラさんが訊ねた。彼女の首下には、淡い水色の石が輝いている。これは、アクアマリン(水の魔術石)だろうか?
「……少し」と私は答えた。「あの、ライラさん」
「何?」
「ライラさんって、ウィッチ・ハーフなんですか?」
 ライラさんの首下で淡く光る水色の石が気になり、私は思わずそう訊ねた。
「当たり。あたしはウィッチ・ハーフよ」とライラさんは答た。「貴方もでしょ? リリスちゃん」
「はい。……分かります?」
「ペンダントを見ればね」ライラさんは朗らかに笑んだ。「あたしは水の魔術が使えるの。リリスちゃんは、光と氷みたいね」
 ライラさんは私のペンダントを見つめながら言った。
「はい」と私は頷いた。「ライラさんの親は、どちらが魔女なんですか?」
「あたしは、母親が魔女よ」
「じゃあ、ライラさんはお父さんに育てられたんですね」
 私は何も考えず言った。その瞬間、ライラさんの瞳が冷たく凍った。彼女は困ったように微笑んだ。
「……あたしは、捨てられたの。だから、父親なんてモノはいない。あたしね、孤児院で育ったんだ。ラウザルクより東に位置するパルスって言う小さな村の、リーフ孤児院って所でね」
 捨てられて、孤児院。知らないとはいえ、無神経な質問をしてしまった。
 訊いた事を後悔し、私は何も言えず俯いた。するとライラさんは「気にしないで」と、私の肩に手をそっと乗せた。
「今は、本当に親って呼べる人と暮らしてるから」
 ライラさんは穏やかな瞳で私を見つめている。
「リリスちゃんの親は、どちらが魔女なの?」とライラさんが訊ねた。
「お母さんです」と私は答えた。
「じゃあ、リリスちゃんも父親が人間なんだね」
「はい。……けど、お父さんは私がとても小さい頃に亡くなりました。今はお祖父ちゃんと暮らしてます。だから私は、どちらかと言うとお祖父ちゃんに育てられたんです」
 私の話が終わると「お祖父ちゃん、好き?」とライラさんが訊ねた。
「私、お祖父ちゃん大好きです」
 私は頷き笑顔で答えた。するとライラさんは安堵した表情で優しく微笑んだ。


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