継がれし母の力〈前編〉 4 私はこの間――三人の中――に入って行くべきだろうか? それとも、コソッと出て行くべきか……。 「いづらい」 そんな事を考えていると、トールさんが私に気付いたらしく、声を掛けた。 「あれ、そこにいるのはリリスちゃんじゃない?」 「こんにちは」 一先ず笑顔を作り、私は三人の所にそろそろと向かった。 「あの……」 やっぱりと言うべきか、三人の処に着くと、視線が一気に私の方へ向けられた。その中でも、ふとライラさんと目が合った。彼女は私と視線が合うなり、優しくにっこりと微笑んだ。 「リリスはライラと会うの初めてだよな?」 「……え? あ、うん」 アルベルの問いに、緊張していた私は少し焦ったように答えた。そんな私の様子に、ライラさんはふふっと笑い、 「リリスちゃん、初めまして。あたしはライラ・プルーテットって言います。よろしくね」 にっこり柔らかく微笑んだ。その微笑みにつられ、私も笑んでかえした。 「リリス・ウォーカーです。こちらこそよろしくお願いします。ライラさん」 私達はお互いの手を握り握手した。すると「ところでさリリスちゃん。セレナークも今日は早かったの?」と、トールさんが割って入ってきた。 「へっ?」 私は思わず声が裏返ってしまった。 「確かまだ授業終わってなかったっぽい気がしたんだけど……俺の気のせいかな」 トールさんは腕を組んで首を傾げた。アルベル達の通う大学の通学路の途中には、私の学校――セレナークが建っている。私は今日、午前中で早退した。本来ならば本日の授業は六時間目まであり、お昼も遠に過ぎた一時半の今の時間帯は、五時間目を受けていても可笑しくはない。それ故にトールさんは不思議に私を見ている。 「……えと……」 「サボリだ」 「――なっ!」 言おうとした瞬間、アルベルがサラッと答えた。直ぐに睨み付けるが、その横顔は嫌味にフッと笑っていた。 [前へ][次へ] [戻る] |