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継がれし母の力〈前編〉
6

***


 ルナリアと別れ、私達は家に向かって歩いていた。私達に会話はなく、ただ黙々と歩いている。
「時の魔女、か」
 私は呟くと先ほどの事を思い返していた――。


「待って! 貴方に一つ、訊きたい事があるんだ」
 数分前、私は去ろうとするルナリアを呼び止め、母の名前を訊いた。
「貴方なら知ってるでしょ? 私の、お母さんの名前を」
「名前?」
 彼女はキョトンとした顔で私を見つめた。そして、
「あぁ、そう言う事」
 呟き一人納得していた。
「そう言う事って?」
「いえ、こちらの話。いいわ、教えるって程の事ではないけれど、教えてあげる。貴方の母親の名はディアナ。ディアナ・ノクターンよ」
「……ディアナ・ノクターン……」
 それが、お母さんの名前。
 私はたった今聞いた母の名を呟き復唱した。
「ルナルでは『時の魔女』の通り名を持つわ」
「時の、魔女?」
「えぇ。ディアナは『時』と言う、特殊な属性を持つ魔術が使えるの。時の魔術を使える者は、ルナルでも彼女だけ。それ故に、時の魔女」
 特殊な属性――時。
 リンシアと言う魔女が狙っている力は、時? 私の心(なか)にも、この力が眠っているんだろうか。
「一つと言っていたけれど、訊きたい事はそれだけ?」
「え? あ、えっと」
「――また、来るわ」
 そう言いルナリアは踵を返し再び背を向けた。そして、風のようにふっと消えていった。

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あきゅろす。
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