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継がれし母の力〈前編〉
2

***


 ――何で、此処に……?
 私は先程見たルナリアの魔術やアクア・バード、突如としたアルベルの登場で頭の中が混乱していた。
「リリス、大丈夫か?」
 一人混乱している私の処にアルベルが駆け寄ってきた。
「――えっ、あ、うん。大丈夫だよ」私は言葉に詰まりながら言った。「少し、びっくりしただけだから」
「そか……」
 安心したのだろうか、アルベルは私に優しく微笑みそっと頭を撫でた。
「アルベル?」
 私はじっとアルベルを見つめた。アルベルはルナリアに視線を向けていた。その瞳は冷たい。鏡を反すようにルナリアの瞳もまた、冷たくアルベルを見ている。
「リリスに何の用だ? 何があってリリスに近づいた?」
 アルベルの問いに、ルナリアは目を細め静かに口を開いた。
「随分と失礼な男(ひと)ね」
 と、それから彼女は両腕を組み言葉を続けた。
「私に対するその言いよう。どうやら貴方は噂の事を知っているみたいね。貴方が私の事をどう思ったかも、大方予想がつくわ。けれど、私が何者か確信も無ないのに、初めからそう疑いかかって来られては、私も穏やかではないわね」
 アルベルが噂を知っているって、どういう事?
 私はアルベルを見つめた。彼は冷静さを取り戻すようにただじっと静かに瞳を閉じている。
「――悪い。確かにあんたの言う通りだ。疑いがかって悪かったな」
「別に良いわ」ルナリアは軽く溜息をついた。「私はルナリア。理由(わけ)あってこの娘に会いにルナルの森からやって来たの」
「理由あって? ルナルの森からって事は、あんたは魔女か?」
「ええ。私は魔女よ。でも、誤解しないで欲しいわ。私がこの娘に会いに来たからと言って、魔力を奪いに来た訳ではないから」
「そか……分かった。俺はアルベル。リリスとはこいつの祖父と三人で暮らしてる。リリスは妹みたいなもんだから、ついカッとなった」
 アルベルはルナリアにスッと頭を下げた。すると彼女は、
「……妹、ねぇ……」
 と、復唱するように呟いた。
 アルベルとルナリアの表情は今一晴れないものの、先程よりは二人の間に険悪な空気はない。かと言って、穏やかでもないのだけれど。

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