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継がれし母の力〈前編〉
4

 魔女の女は男と違って、人間との間に子供が出来ると、その魔力はすべて子供――つまりはウィッチ・ハーフ――の中に吸い取られてしまう。しかし吸い取った魔力の大半は、子供の中に眠ってしまい『解放の一夜』と呼ばれる晩にしか目醒める事はない。
「……じゃあ、魔力狩りといっても、狙いはその魔力を秘めたウィッチ・ハーフだけって事?」
「そうらしいね。狙いのウィッチ・ハーフを見つける為、片っ端から魔力を奪い取ってるみたいだよ」
「……そんなの、ひどい」
「そうまでして手に入れたい特殊な魔力とは、いったい何なんだろうな」と、オトが訊いてきた。
「さぁ、そこまでは聞いてないよ。ただその魔女の狙いは母親が魔女で、ここ二、三ヵ月の内に十六歳を迎えるウィッチ・ハーフ――らしいんだ」
「……母親が魔女で、十六歳を迎えるウィッチ・ハーフ、か」と、私は呟いた。聞いた言葉を復唱するように。
 近々リリスは十六歳の誕生日を迎える。そして彼女は母親が魔女――。
「……それじゃあ……」
 私はオトとゼノンを交互にみた。
「だから用心の為にも、リリスちゃんに伝えて置こうと思ったんだけど……」
「当の本人は帰った見たいだからな」
 オトは困ったとも言うようにふっと息を吐いた。
 リリスは解放の一夜が近づく事をとても不安がっている。そんなリリスがこの事を知ったらどうなるだろう……?
「ウイニアちゃん?」と、ゼノンが私の名を呼んだ。俯く私を心配して、彼は私の顔を窺うように横から覗き込んだ。
「2人とも、お願いがあるの」
 私は顔を俯かせたまま口を開いた。
「お願い?」
 声を揃えてオトとゼノンが訊いた。二人の視線は私に向けられている。
「折角だけど、この事はリリスには黙っていて欲しいの」
 これ以上、リリスに不安を持たせたくない。
「――ね? お願い。二人とも」
「分かったよ」
 ゼノンはにっこり微笑んで言った。
「あぁ」
 オトも頷き同意する。
「ありがとう」


 特殊な魔力を狙った――魔女の魔力狩り。何で、こんな事が起きているのだろう。力を手に入れて、いったいどうしたい? 私の中で、不安が駆け巡る。
「リリス、今どうしてる?」
 私は何処までも蒼く晴れ渡る碧空を見上げた。


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あきゅろす。
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