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継がれし母の力〈前編〉
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「―――ん……」
 いつの間にか眠っていたのだろうか? 九月の後半とはいえ、陽射しがとても心地好かった。気が付けば太陽は真上に昇っており、近くの時計の針は昼の十二時をさそうとしていた。
「……お腹、空いたかも……」
 私は写真を鞄にしまい、お弁当を取り出した。
「今日はお祖父ちゃん特製のサンドウィッチ」
 鼻歌混じりにお弁当の包みを拡げていく。蓋を開けるとパンの良い香が鼻をスッとくすぐった。
「卵にハムにトマトの野菜サンドか、いただきま〜す。
 ―――!」
 サンドウィッチを手に掴み口に運ぼうとした瞬間、一瞬、耳鳴りのような音がした気がした。
 何、今の感じ……?
 私はそのまま辺りを見渡してみた。しかし、私の周りは先程から変わらず噴水の水音がするだけ。
「……何もない、か」
 気を取り直して私は再びサンドウィッチを口に運んだ。
「のん気なものね」
「えっ?」
 不意に声が聞え私は顔を上げた。するといつの間にか私の目の前には、一人の女性が立っていた。女性は腕を組み、何だか呆れているような瞳で私を見下ろしている。
「……貴方、誰?」
 女性は腰よりも長い黒髪と、赤い緋色の瞳をしている。その容姿は何処となく、写真でみる母に良く似ていた。
「私はルナリア、ルナリア・ガーネット。ルナルの森に住む魔女よ」
 ――魔女? 何で魔女がこんな所に……。
「……私は、リリス」
「知っているわ」
「えっ?」
「貴方の名はリリス・ウォーカー。人間の父と魔女を母に持つウィッチ・ハーフ、でしょ?」

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あきゅろす。
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