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継がれし母の力〈前編〉
2

 時はラピス暦一〇二四年。
 地震、洪水や日照りなど、自然界に起こる災厄や疫病は、全て魔女により引き起こされる物と言われてきた。
 魔女は破壊的力を持つと言われる魔術が使え、寿命は長命である。その容姿はとても美しく妖艶で、妖しげな光を放つ深い瞳は、どこか冷酷で奇怪、残忍な印象を持っている。それ故か魔女を恐れる者は、災厄など全ての元凶を、
「魔女のせいだ」と、囁き忌み嫌う者も少なくはなかった。
 そんなこの年の夏、ラピュセル大陸では、王都ラウザルク近郊の街や村などで長きに渡る雨や風に見舞われ不作が続いた。厄災は続くもので、終には大洪水が起き、いくつもの街や村が沈みかけた。するといつしかその災厄を、
「魔女が起こした災いだ」と、そう囁く者が出て来た。
 これにより一年後、ラピス暦一〇二五年にラピュセル王国は、法術師と魔術師を中心に「魔女狩り隊」を結成した。それは西の大陸にあるモルウ王国の王が反対する中、北東の大陸にあるアスガルド帝国の王と手を組み始まる。


***


 魔女狩りが始り、三年の月日が流れた。各地の魔女達は、人間との間に産まれた子――ウィッチ・ハーフだけを残し、全ての都市、街や村などから姿を消した。
 魔女達が新たな居住の地として選んだ場所はルナル大陸。そこはラウザルクより南西に向かった処に位置し、大陸全体が木々に覆われ森と化した大陸で、人は「ルナルの森」と呼んでいる。
 魔女達はルナルの森に巨大な魔術結界をはり、森の奥深くでひっそりと暮らした。そして誰であろうと、人間――特に法術師――やウィッチ・ハーフの出入りは固く禁じた。
 こうして魔女が外との交流を切り、六十年の時が流れた。いつしか魔女狩りはなくなり、それは人々の記憶の片隅に消えていく。それぞれの場所で、再び平穏な日々が訪れた。
 ただ魔女の心に、深い傷跡を残して――。



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あきゅろす。
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