nvl・L 訪問・1 ピンポーン― 仕事を終え、サソリはデイの部屋の前にいた。 時刻はまだ朝の6時半。 まだ寝ていても可笑しくない時間。 はっきり言って、この時間の訪問は非常識だろう。 しばらくすると、ドアがガチャガチャと音を鳴らして開く。 泥『ったく…。朝っぱらからだれ………。』 当然ながら寝起きなのだろう。 ラフな服に、髷も結っていないデイが顔をだした。 だがサソリの顔を見ると、デイは動きをとめ、目を見開く。 そして、ふっと笑ったかと思うと、『旦那ー…、いきなり過ぎだろ。連絡ぐらいよこせよな。』と言いながら、サソリを部屋に招き入れた。 蠍『悪い。だが連絡するより、行ったほうが早い。』 サソリの言葉に飽きれながらも 『だな。…って、んな問題じゃないだろ、うん!』デイはいつもの笑みを見せた。 ********** デイの部屋は一言で言えば殺風景だった。 ベッドにテレビ、ソファー、ある程度の家具の他、あまり物は置いていなかった。 蠍『なんか意外だな。』 泥『ん?何が?』 蠍『もっと部屋はごちゃごちゃしてると思ってた。』 泥『失礼だなー、うん。 物有りすぎたら、引っ越しの時大変じゃん。』 その言葉が胸に突っかかる。 ある日突然いなくなっても可笑しくないような言い方だった。 もしかしたら、あの女もそうだったのかも知れない。 突然デイが消え、ずっと探していたのかも知れない。いや、昨日の様子からして、そうとしか言えないだろう。 泥『旦那?』 ぼーとしているサソリに声をかける、デイ。 蠍『あぁ。なんでもない。』 泥『眠いんだろ?ベッドに横になっときなよ。』 蠍『いや、そうでもねぇよ。 つか眠いのはデイじゃないのか?』 朝から訪問しておきながら、サソリは答える。 本当のところ、深夜のことが気になり、眠気など全くなかった。 泥『ん?旦那の訪問に眠気なんかぶっ飛んだよ、うん!』 ニコニコしているデイ。 (俺は奴の笑顔が…好きなんだ。) しばらくの間は他の話をしていた。 テレビを付けながら、ニュースの話題を出したり、大学の話をしたり。 それはそれで楽しかった。 だが、ふと沈黙が訪れる…… ←→ |