nvl・L 深夜クルー キンコーン キンコーン――― 『…いらっしゃいませー』 只今午後10時。 やる気のない声に迎えられ、客が次から次へとやってくる。 ここは赤砂サソリのバイト先であるコンビニ。 今から朝の6時まで、深夜クルー(店員のこと)としてここで接客をしている。 接客といっても、コンビニ業は楽ではない。 深夜でも客は結構来るし、商品の補充、掃除全般、洗い物もあれば、発注された商品も深夜に大量に納品される。これを片付けるのは結構きつい。 他にも色々業務があるため、コンビニのバイトをなめて来た奴は、あっという間に消えていく。 そこで2年もバイトをしている俺は深夜クルーの中でも最長であるし、ここまで続けられている自分に賞賛している。 蠍『しかしまぁ……こいつら暇なのか……?』 また自動ドアのセンサーが反応し、客が入ってきた。 鼬『……同感だ、サソリ…。 だが、まだ午後10時…仕方ないだろう。』 相方であり、幼なじみでもあるイタチがレジ点検を行いながら答える。 コンビニは基本2人で業務を行い、クルーが交代する時には必ずレジの金に誤差がないか点検を行っている。 つまり、客の会計にミスがあれば即分かり、その時間入っていたクルーは誤差の金額分、弁償させられる仕組みである。 長年かけベテランの域まで達した今、2人のコンビは会計も点検も間違うことはなかった。 『…うっせーな…さっさと点検終わらせろよ。』 ダルそうだが、手は的確に点検を進めているイタチを見ながら言葉を返す。 そーいや、こいつも2年間バイトしてんだな……。 同期で入った奴はイタチ以外に残ってはいない。 コンビニクルーの回転率はかなり早いからな……。 そんなことを考えながら、俺は点検を早々に終えたイタチを眺めていた。 ********** 蠍鼬『…お疲れさまでしたー』 早朝6時過ぎ。 業務を終え、早朝クルーと交代した俺と2人はコンビニを後にする。 蠍『あー終わったーー。 眠みぃーー。』 鼬『…お疲れ。今日は大学あるのか?』 蠍『…あぁ。昼からな。それまで寝る。』 鼬『そうか。サボるんじゃないぞ。』 蠍『わかってっよ。いちいちうるせーな。休みの奴は黙って引きこもってろよ。』 鼬『フフッ。まぁそうさせて貰うとするか。』 2人は同じ大学で、この春に3回生になった。 幼稚園から大学、それどころかバイトまで同じなら、腐れ縁でもとことん腐りきってるとしか言えない。 イタチに別れを告げ、バイクにまたがる。 ふと、上を見上げるとコンビニ隣のアパートの住人が、ゴミ袋を持って2階から1階へ階段を降りようとしているのが見えた。 『今日はゴミの日だったか。』 サソリは早々にバイクを走らせ、一人暮らしをしているアパートに向かった。 昼間は大学に行き、夜はコンビニのアルバイト(翌日大学が昼からの時限定) 休みの時は数は少ないが友人と馬鹿したり(付き合わされている)、彼女とデートしたり(この前別れたが) 兎に角、極普通の大学生。 ずっとこのまま平凡な生活が流れていくと思っていた。 ←→ |