[携帯モード] [URL送信]

story
マニアックな誕生日をお届け☆(市日/裏アリ)
本日12月20日

尸魂界に早くも雪が降り、景色を銀色に染めていた。
美しい風景を作り上げる純白の結晶。
幻想的な趣を醸し出すそれはとても美しい。
そう、とても美しいのだが…


吐く息は白く。
指先は赤く染まり。
体が縮こまる。


───寒い。
とにかく寒い。

12月20日。この冬一番の冷え込みだ。

普通なら炬燵にでも入って蜜柑などを味わいつつマッタリとしたい日であるが、この日はそうはいかなかった。

何故なら……



「日番谷隊長に一番にお祝いの言葉を言うぞ!」

「あぁ、私のプレゼント気に入ってくれるかしら」


そう、今日は12月20日。
いくら雪が降って寒かろうが、部屋に引きこもるわけにはいかない。

死神界のマスコット的アイドル、日番谷冬獅郎の

"誕生日"

なのだから。







マニアックな誕生日をお届け☆
〜異常な愛はsweetChristmas〜








しんしんと降り続く雪に、体を震わせながら長い廊下を歩くのは、例外に洩れず彼の誕生日を祝おうと足を進ませる一匹の銀狐。
足音もなく愛しい恋人の元へ向かう。

手には、可愛らしくラッピングされた小さな箱。
この狐には珍しく丁重に扱うところを見ると、余程大事なものだと予想できた。

そう、銀狐こと市丸ギンは、いつもと様子が明らかに違った。
妙に真剣な顔で、時々にやけつつも、直ぐに不安気な顔をしたり。
途中ですれ違う死神に結構気味悪がられていた。

ブツブツと祝いの言葉の練習をしつつ、目的の場所、十番隊執務室の前まで来ると勢い良く襖を開け放った。

「日番谷はん!誕生日おめ…」

「市丸っ!助けて!」

練習を重ねた言葉は、日番谷の叫び声によってかき消されてしまった。

市丸は、いきなり飛びついてきた小さな体に目を瞠る。
執務室に入ろうとした瞬間、恋人に抱きつかれ、敷居を跨ぐことなく半端な位置で小さな体を抱えあげた市丸は、思わぬ展開に胸が高鳴った。
いつもは市丸が助けを求めさせる状況に追い込むのに、今日の日番谷は自分に助けを求めてきた。
普段と対照的なシチュエーションに、思わず拳を握りしめ、腕の中の体を抱え直す。
と、市丸はあることに気がついた。

「……日番谷はん?どないしたん、それ」

市丸が"それ"と称したのは日番谷が身に纏っているもの。


「〜〜〜////」

いつも目にする、死覇装と羽織りの白黒のコントラストではなく、目も覚めるような真っ赤な服を着た日番谷は、服に負けないくらい顔を真っ赤にして厚い胸板に顔を押しつけてしまった。

服をよく見ると、白いボンボンが所々ついていて、頭にはウサ耳を連想させるような、てっぺんが二つに別れた三角帽子、そして…

(生足……っ)

上の服と同じく赤い短いスカートから覗く白い太もも。

ゴクリと喉を鳴らす市丸は、日番谷が逃げる原因となったであろう人物に目を向けた。
別に怒るつもりも、咎めるつもりもなく、ただ確認の意味を込めて。

「乱菊…日番谷はんのこれ…」

「可愛いでしょーvVそれ、あたしからのプレゼントなの」

サンタ服よー♪とニコニコ笑っている松本の手元には、日番谷のであろう小さな死覇装がある。
どうせ無理やり着せたのだろうと、呆れと少しの嫉妬心を感じつつ、市丸は漸く室内へと入っていった。


「隊長vVほらほらこっち向いて下さいよー♪」

未だに市丸にしがみつく日番谷に声をかけるも全く反応なし。
それでも楽しそうな松本に、市丸は怪訝な面もちで目を遣った。

「なんでよりにもよってサンタ服なん」

しかも女の子用。と付け足しつつ話を促すと、松本は得意げに言った。

「何でってクリスマス近いし、こんな日じゃないと着てくれないでしょ」

いかにも機嫌良く答える松本の言葉に、日番谷は無言のまま更に市丸に抱きついた。
苦笑しつつ背中を撫でてやる。

どうせ、日番谷の人からの好意を無下に出来ない性格を利用して、巧く言いくるめたのだろう。
だがいくら何でも、普通の死神が頼んでも日番谷は首を縦には振らない。
結局は松本には甘いのだ。

そんな事を考えると羨慕と共に、やはり妬嫉感が市丸を襲うもので、腕の中の子に絶対の信頼を得ている同期が小憎らしく思えてくる。

ふと、自分が先程祝いの言葉を言い損ねたことに気がついた市丸は、日番谷の耳元に口を寄せた。

「日番谷はん」

優しく名前を呼んでやると、居心地悪そうに顔をあげる。
今の格好が相当恥ずかしいらしく、ソワソワして落ち着きがない。

日番谷が助けを求めた時点で、彼がどうして欲しいのか分かったが、可愛らしく着飾ったこの子をみて正直嬉しい結果になってしまった市丸には、どうしても松本に服を返してやれとは言えなかった。


せめて、少しでも気が紛れるように小さな体を包み込んであげて、言葉をかける。

「誕生日、おめで」

「「日番谷隊長いらっしゃいますか!?」」

だがしかし、またもや途中で邪魔が入り、市丸は笑顔のまま固まってしまった。

「あら、恋次に修兵じゃない。隊長ならここよ」

松本の言葉に、日番谷はビクリと大げさに肩を揺らした。
それに気付いた市丸は、固まった顔を解し、副官ズを睨む。
二人は、松本が指差した方、つまり市丸に抱かれた日番谷を見て唖然とした。

後ろ姿しか目に映らなかったが、おそらく二人、市丸と同じことを思っただろう。
服より何より白い足に目が釘付けの野郎共から日番谷を隠すように抱き直す市丸は、牽制の意を込めて睨みを利かした。

それに気付いた副官ズは、慌てて姿勢を取り繕い、日番谷に向かって手に持っていたプレゼントを差し出した。

「誕生日おめでとうございます!」

自分を祝う声に、日番谷はソロリと振り返ると、少し照れたような顔をしながら阿散井からのプレゼントを受け取った。

「それ、抹茶味っすよ」

「あぁ、サンキュ」

日番谷の格好に特に突っ込む訳でもなく、自分の贈り物の説明をする阿散井に安心した子供は、タイヤキの入った袋の中身を覗きつつ短くお礼を言う。

阿散井らしいな。と可笑しそうに笑う日番谷に、市丸の眉間に皺が寄った。

大分気持ちがほぐれたのか、顔だけを二人に向ける形だった姿勢を正面に直し、市丸の膝に行儀良く座り直した。

「おめでとうございます、俺からはこれを」

次に檜佐木から渡されたのは白い箱。
中身が想像出来なくて首を傾げつつお礼を言う日番谷に微笑むと、檜佐木は机に一旦それを置き、箱を丁寧に開けた。

「ケーキですよ。以前に現世で一緒に食べたやつです」

瞬間、日番谷の目が輝いたのを市丸は見逃さなかった。
箱の中を覗くと、ホールサイズの苺ショートケーキが入っていて日番谷は再び、今度は嬉しそうにお礼を言った。
その表情にまたもや市丸の眉間の皺が増えた。

笑うなとは言わないが、自分以外の男に笑顔を見せるのは、恋人の胸中として複雑なのだ。
率直に言うと、ただの嫉妬だが。

膝の上でプレゼントを受け取り喜ぶ子供に、意味もなく危機感を感じつつ、副官ズが部屋を出ていってから漸く市丸は一息ついた。


だが、安心したのも束の間。
その後は朽木が日番谷にマフラーをプレゼントしに来たり、浮竹が大量のお菓子を持ってきたりと、隊長格の面々が日番谷の誕生日を祝うべく、次々と十番隊社に赴いてきた。
その度に日番谷は可愛がられ、市丸の狭い心が嫉妬に溢れていった。


やっと来客が途絶えたのは夜になってからだった。
その頃になると、執務室はプレゼントの山になっており、色とりどりの包装が部屋自体を装飾しているようだった。

最後までいた松本も、市丸に日番谷の服を返してから自室へと帰っていった。
その際、日番谷にウィンクをしたのを、嫉妬に機嫌を悪くしていた市丸は気付くこともなく、日番谷は一人顔を赤くしていた。


「…なぁ市丸」

2人きりになった執務室で、日番谷が小さく声をかける。

「なに?日番谷はん」

一日中日番谷のモテっぷりを目の当たりにして、ご機嫌斜めだった市丸だが、改めて2人きりになって日番谷を見てみると、顔が自然に綻んだ。

「俺…さ、まだ聞いてないんだけど…」

顔を赤くしてポツリポツリと言葉を紡ぐ日番谷は本当に可愛くて、市丸は心が癒されるのと同時に、抑えていた欲望が芽生えるのを感じた。
本当は、最初日番谷の姿を見たときに、その可愛さ故お持ち帰りをしたい衝動にかられたが、せっかくの誕生日なのだから順を追って事に及んだ後、ゆっくりと二人の時間を過ごそうと考えていた。
そして

市丸は裾に入っている小さな箱を思い出す。
1ヶ月も前から用意していたもの。

この大事なプレゼントを渡すつもりだった。

しかし、殆ど一緒に居たにも関わらず、他の人の相手ばかりする日番谷に、やきもちを焼くのに忙しく、少しも計画通りに事を運べずにいたのだ。

我慢に我慢されられた後にこんな可愛らしい日番谷を見てしまっては、一気に襲いかかる欲望を無視することなど出来なかった。

市丸は、ヤキモチを焼かせた日番谷が悪いのだと開き直ると、もう迷いはなく、見上げてくる愛しい子に口付けた。

「……え?」

だが、その口付けは軽く触れるだけで直ぐに離れてしまう。
日番谷の驚いた顔に心の中で謝ると、市丸は小さな体を膝から持ち上げ、ソファーに横たえた。
その上に覆い被る。

「いち…まる?」

不安げな顔を見ないふりをして、細い首筋に唇を落とした。

「あ…待って、服着替えたい」

「ええやん、このままシよ?」

特に強く抵抗を見せない日番谷に甘んじて、市丸は露わになっている太ももに手を這わした。

「んっ…」

鼻にかかる甘い声が脳を痺れさせる。

「冬、誕生日おめでと」

早くも火照ってきた顔に唇を落としつつ漸く祝いの言葉を送ると、日番谷は綺麗に微笑んで、市丸の頬にキスをした。

「ありがと」

素直なお礼が可愛くて、小さな唇に柔らかく口付け、這わしていた手をスカートの裾の中に忍ばせた。

「ぁ…」

手探りで下着だけを脱がせ、床に落とす。
履いていたブーツも一緒に脱がせると、白くてしなやかな足がソファーの上に投げ出された。

「美味しそうな足」

市丸は、一通り日番谷の双脚を眺めると、そっと細い足に唇を落とした。
ちゅっちゅっ、と軽く音を立てて、つま先から上にかけて愛撫を繰り返す。


next


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!