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竜のみる夢 ※15禁
06


召喚魔法には2種類ある。
ひとつはこの世界に存在する「妖魔」「妖獣」「精霊」等と呼ばれる存在を呼び出すもの。もうひとつは英雄セイ=ガーナ=ヴィオラードが研究し完成させた異界から力あるものを呼び寄せるもの。

伝説の英雄はその魔法を誰にも伝承することがなかったため、後世の魔導師たちは残されていた神獣リルヴィーシュを召喚した魔法陣を研究することによりその魔法を会得した。
召喚魔法で異界より呼び出されたものたちは獣の姿をしていたため「召喚獣」と、さらに魔導師と契約したものを「守護獣」と呼ぶようになった。

契約を逃れた召喚獣の多くは、野を彷徨い血の味を覚え人々を襲い「魔獣」と呼ばれ恐れられ、人々の生活を脅かしていた。



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森の中に獣の遠吠えが響く。
哀しげに、切なげに。



カシュの町を出たカルーシュとリルヴィーシュの二人は、イフィル国から大国カルバーンへと抜ける唯一の道である国境の森、魔獣が住みつき「魔の森」とも呼ばれるその森から一番近い場所にあるシギの町を訪れていた。


「また魔の森で殺られたらしいな」

「ああ。ここんとこ被害が増えてるし、ここも危ないかもしれない」

宿屋の一階にある食堂で少し早めの夕食にありついていたカルーシュは耳にした物騒な話に眉をひそめた。

テーブルを挟んだ向かい側の席に座るリルヴィーシュに目をやるが、表情を変えることなくおいしそうに目の前の野菜スープを口に運んでいる。

リルヴィーシュは眠ることで魔力が回復するらしく食事を必要としないのだが「お付き合い」で一緒に食事を取ってくれている。

カシュの町でカルーシュが仕入れた情報、「魔の森の獣の凶暴化」。それを聞いて魔の森に行くことを決めたのはリルヴィーシュだった。

二人の旅に基本的に目的地は存在しない。

カルーシュはリルヴィーシュが笑ってくれてればいいと思っているし、リルヴィーシュにいたっては行こうと思えば世界の何処にでも瞬時に移動できてしまうし「セイを捜すこと」以外に目的がないのである。

そんなわけで、活気に満ちた露店街の散策や各地で行われる祭事、移動の途中で目にする景色など二人は旅を楽しむことを目的に旅をしていた。

だから次の目的地はたいていの場合気分次第なのだが……



「ちょっと出かけてくるね」

そういってリルヴィーシュが出掛けたのは深夜、月が中天にさしかかる頃のことだった。




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あきゅろす。
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