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竜のみる夢 ※15禁
03


逢いたかった―――― 
ずっとずっと待ち続け 恋焦がれた存在
一度失ってしまったから 
今度こそ後悔しないように 見失わないように 
逃がさないように 離さないように
あなたの傍にいるために
私はここにいることを選んだのだから






なんとなく嫌な予感がした―――

カルーシュ=アスリーンは腕の中で眠る、今は少年の姿をしている愛しい伝説の神獣リルヴィーシュのあどけない寝顔を見つめながらそっと溜息を吐いた。

囲まれている

振り出した雨を逃れるために彼らがひと時の休息の場として選んだのは町外れの小さな狩猟小屋だった。
小さいながらもベッドにテーブル、暖炉まであるその小屋は、雨を凌ぐのには十分快適な空間だった。
定期的に掃除されているのだろう。小屋の中はすぐに使える状態であり、ベッドには簡易毛布も用意されていてそのまま身体を休めさせて貰うことにした。

『眠れる神獣が目覚めた』という噂が世界を駆け巡ってから5年経つ。
力のある魔導師の幾人かが伝説の神獣の力を手に入れようと、今も諦める事なくその行方を捜している。

オレも伊達に天才魔導師と呼ばれているわけじゃない。
そこらのへっぽこ魔導師に気配を辿られるような馬鹿なことはしていない。
リルヴィーシュを召喚するのに使った魔法陣は木っ端微塵に壊してきたし、移動の軌跡も魔法で消している。

旅を始めた当初からリルヴィーシュの周りには結界を張り、遠くからでは気配を探ることが出来ないようにしてある。
だが無いよりはまし程度で、実際この5年間常にオレたちの後を追いかけてくる気配があった。

リルヴィーシュの存在は特別だ。
力あるものならば普通ではない気配にそれが何か分からないまでも気付いてしまうだろう。
「なにか」を感じつつも確証はないらしく、ここ最近探りを入れるように怪しい気配が周囲をうろついていたのだが、どうやら強攻策にでたらしい。

戦うか、逃げるか。考えていたオレの腕の中でリルヴィーシュが身じろいだ。

「とぶ?」

唐突なその台詞にさすがのオレも苦笑する。どうやら周りを囲む気配に気付いていたらしい。
魔法で移動するか?と聞いているのだが空間転移は高等魔法なのだ。
そこらのへっぽこ魔導師では使えないどころか、天才といわれるオレでも後のことを考えるとあまり使いたくはない身体への負担の大きい魔法なのだ。
まあ、リルヴィーシュにしてみれば初級魔法なみに簡単な魔法なのだろうけれど。

一応「天才魔導師」といわれるオレとしては少なからず思うこともあるのだが、ここは素直に頷いてリルヴィーシュに任せることにした。
余計な争いは避けるに限る。

「一度、空に跳ぶね」

可愛らしい声でリルヴィーシュが告げた瞬間、二人の姿は小屋の中から消えていた。

小屋の外では、主に命じられ小屋の中の気配を探っていた人ならざるものたちが突然消えた気配に目標を見失って戸惑っていたが、やがて主人に報告するために闇の中へと消えていった。




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あきゅろす。
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